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2 悪役令嬢に転生して三巡目。隣国の皇太子ルートが出現しました。
2-14悪役令嬢に転生して三巡目。皇太子からの優しさが弱った心に沁み渡ります。
しおりを挟む周りがざわつく気配と、バタバタと走り回る足音が聞こえる。
灯りが消えたことで、周囲でも混乱が起こっているようだった。
私はというと、雷の轟音におびえていた。
苦手なものは苦手なのだから仕方がない。
轟音が鳴り響く度にビクリと身体が跳ね上がってしまう。
窓からは一応薄明かりが入ってはいるから、真っ暗というわけではないけれど周りが見えづらいことに変わりはない。
「……雷が、どこかに落ちたんだろうな」
そう落ち着いたルーク殿下の声が聞こえたかと思ったら、ふわりと、何かが頭にかぶせられた。
「これで、少しはマシだろ」
頭をすっぽりと覆い隠すように、かぶせられたそれからは、ルーク殿下の付けていた香水の香りがかすかに感じられた。
「い、いえ、大丈夫……」
「無理しなくていい。
どうせこの暗い中では誰も何も気にしないだろうし、何より下手に動くのも危ないからな」
「でも」
たぶん被せてくれているのは、ルーク殿下が身につけていた上着だろう。
寒い季節ではないものの、風邪でも引かせてしまおうものなら国際問題になりかねないのではないかと、思ってしまう。
過剰な心配ではあると思うけれど、悪役令嬢として過ごしていた期間が長かったせいで悪い方向につい考えてしまう悪いクセがついてしまっている気がする。
そう色々と考えている間にも、雷は鳴り止まずに外を不気味に照らし、ナディアの苦手な轟音を落としていく。
「さっきよりも震えてるな……寒いか?」
「いえ、寒くは」
「ないです」という言葉は、最後まで発することができなかった。
きゅっと、ナディアの手をルーク殿下がその手に収めてしまったから。
「手が冷たいな。俺の手で悪いが、ないよりはマシだろ」
「……ありがとうございます」
「別に、今日一日通訳に付き合ってくれた礼だ。気にするな」
ほんわかと伝わるルーク殿下の熱が、ナディアのこわばっていた身体をほんの少し溶かしてくれた。
(こんなに、優しい人だったんだ)
ほとんど接してこなかったから、嫌な面しか知らなかったけれど、優しい面もあることを初めて知った。
今自分が弱っているからかもしれないけれど、こうして寄り添ってくれるところは素直に嬉しいと思ってしまったのだった。
灯りが消えたことで、周囲でも混乱が起こっているようだった。
私はというと、雷の轟音におびえていた。
苦手なものは苦手なのだから仕方がない。
轟音が鳴り響く度にビクリと身体が跳ね上がってしまう。
窓からは一応薄明かりが入ってはいるから、真っ暗というわけではないけれど周りが見えづらいことに変わりはない。
「……雷が、どこかに落ちたんだろうな」
そう落ち着いたルーク殿下の声が聞こえたかと思ったら、ふわりと、何かが頭にかぶせられた。
「これで、少しはマシだろ」
頭をすっぽりと覆い隠すように、かぶせられたそれからは、ルーク殿下の付けていた香水の香りがかすかに感じられた。
「い、いえ、大丈夫……」
「無理しなくていい。
どうせこの暗い中では誰も何も気にしないだろうし、何より下手に動くのも危ないからな」
「でも」
たぶん被せてくれているのは、ルーク殿下が身につけていた上着だろう。
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過剰な心配ではあると思うけれど、悪役令嬢として過ごしていた期間が長かったせいで悪い方向につい考えてしまう悪いクセがついてしまっている気がする。
そう色々と考えている間にも、雷は鳴り止まずに外を不気味に照らし、ナディアの苦手な轟音を落としていく。
「さっきよりも震えてるな……寒いか?」
「いえ、寒くは」
「ないです」という言葉は、最後まで発することができなかった。
きゅっと、ナディアの手をルーク殿下がその手に収めてしまったから。
「手が冷たいな。俺の手で悪いが、ないよりはマシだろ」
「……ありがとうございます」
「別に、今日一日通訳に付き合ってくれた礼だ。気にするな」
ほんわかと伝わるルーク殿下の熱が、ナディアのこわばっていた身体をほんの少し溶かしてくれた。
(こんなに、優しい人だったんだ)
ほとんど接してこなかったから、嫌な面しか知らなかったけれど、優しい面もあることを初めて知った。
今自分が弱っているからかもしれないけれど、こうして寄り添ってくれるところは素直に嬉しいと思ってしまったのだった。
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