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4 遠吠えに蘇る記憶

遠吠えに蘇る記憶が、犬耳の誘惑を遠ざける2

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「あの、出発前に耳を触らせてもらえませんか?」


「……」


(あ、この子もう我慢できなくなったのか)


タロットからの注意が全く響いていないのだろうかと、さすがに悲しくなってしまった。

タロットが黙り込むと、慌てたようにモネが付け加え始めた。

 
「ちょっとだけ、ふわっと触るだけでいいんです。出発前に堪能させていただければ、歩いている時は見つめませんから」


モネの訴えによると、今犬耳を触れるのならば、歩いている時は限定的に我慢するということらしい。


「……我慢って、そういう我慢の仕方か」


つまり、今モネ申し出を受け入れなければ、道中犬耳に目をやる可能性が高いということで。


「……駄目、ですか?」


躊躇いがちに見えて、全く妥協していない気がするのはきっと気のせいなんかではない。

要求を押し通したいという気持ちがダダ漏れている。


(あ、なんかモネが姉貴に見えてきた)


そう思ってしまった時点で、タロットの取れる選択肢は1つしかない。


「本当にちょっとで終わるんだな?」


「もちろんです!」


「俺が終わりって言ったら終わりだからな」


「はい!」


しっかりと念を押し、モネにちゃんと認識させる。
ぶっちゃけどこまで注意を聞いてくれるか怪しいが、しないよりはマシだろう。


「では、タロットさん!ここに座ってください」


ぽふぽふと叩かれたのはモネの真ん前の空間。


「ちょっとだからな」

 
「お任せください!」


最後の最後まで念押ししたタロットは、しぶしぶモネの指した場所へと腰を下ろしたのだった。


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