フサフサの犬耳が、王族少女のお気に召したらしい。

1 家の扉を開けると、そこには少女が倒れていた。

扉を開けると、そこには少女が倒れていた。5

「でんわ？」

姉貴の頭にクエスチョンマークが浮かぶのが見える。し、俺も同じ状態。「でんわ」というモノの名前を聞いたことがない。

「あの、もしかしてご存じないですか？」

「ごめんなさい、初めて聞いたわ」

「俺も」

「……そうですか」

姉貴とタロットが知らないと答えると、さっきまで比較的落ち着いていたように見えていたモネが、急に困ったような顔になった。

とりあえず聞いてみようと、「でんわ」なるものの特徴をタロットは聞いてみることにした。

「で、『でんわ』ってなんだ？」

「連絡手段です。特定の番号にかけると、遠い場所からも連絡がとれるものです」

「へー」

やっぱり初耳だ。世の中にはそんなモノもあるのか。
こっちが感心している間も、モネは困った表情を浮かべていた。

そしてー

「あの、再度お願いがあるのですが」

　どこか切羽詰った様子でモネが切り出す。

「わたくしを王族の領域まで送っていただけませんか？」

切り出されたのは、大変厄介、じゃないある意味予想のできたお願いだった。

モネには悪いが正直かなり面倒だなというのがタロットの感想だった。
冷たいと言われるかもしれないが、まず王族の領域に行くまでかなりの距離がある。モネがその距離を歩ききれるのかという疑問が、どうしても浮かんでしまう。
加えて、モネは「誘拐され、逃げてきた」厄介な身の上だ。王族の少女を誘拐するような輩が、モネを捜している可能性は大いにあり得る。

ゆえにタロットは断りたいなと思ってしまうのだが、目の前の姉貴はそうではないらしい。

「そのお願い、この私が叶えてあげるわ！」

　鼻息を荒くして、姉貴がそう宣ったのだから。
いったいどういうつもりかとタロットか疑念のまなざしを姉貴に送ると、ふふんと鼻で笑って返された。

もう、嫌な予感しかしない。