氷の令嬢は愛されたい

むんず

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80話・罰

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私は騒がしい周りを他所に、再び瞼を閉じる。

「天空より、大雨をこの地に」

私は分かりやすいように呪文を唱える。
本当は唱える必要などないのだが、唱えたほうが周りの人には分かりやすいだろう。

私が魔力を最大限に放った後、周辺全てが雲に覆われ数分で、先程の晴天では想像できないほどの大雨が降り出した。

皇帝様も、皇妃様も目を見開いていた。

そう、学園で習う天候魔法は、晴れにする魔法だけなのだった。
その理由は、天候魔法を取得した生徒らが、魔法を悪用する例が沢山あったからだ。

それから、学園では晴れにする魔法しか教えられない。

私は、これを利用してやろうとふと、思ったのだ。

流石に、これを見て学園に通っていた、などと言うことは出来ないだろう。

「皇帝様、皇妃様、私が学園に通っていないことを解っていただけたでしょうか?」

皇帝様はフっと笑う。

「そうだな、ソフィー・ラスラーニャは無実だ。ラスラーニャ一家の三人をを虐待の罪として刑を処する」

私はその言葉を聞いてあんぐりと口を開いた。
何が何でも、展開が早すぎる。

私が状況が呑み込めなくて王太子の顔を見ると、王太子は優しく笑った。

「あとで、父のところに行くといいよ」

私は、戸惑いながら頷く。

「ちょっと?勝手に話を進めないでくださりますか?どうして、私たちが罰を受けないといけないのですか?私はこの子の母親ですよ?」

勿論、義母もこの判決に納得するはずがなかった。
義母は、嘘をついたことを何ともなかったように、自分は親だから許される、と主張した。

余りの判決の速さに、義母もびっくりして乗り遅れたようだ。

「其方は確かに罪を犯した。虐待の証言が有るとともに、いま皇帝の前で嘘をついた。それに、母親だからと言って許されるわけではない。其方は今朝の朗報を見ていないのか?」

皇帝様に代わって王太子が告げる。

「朗報って、何があったの?」

もはや、敬語も抜けてしまったようだ。
私は呆れてものが言えなくなる。

さて、義母にどうやって法が変わったことを伝えるのか、と思っていると、ここで意外な人が口を開いた。

「セイラ、もう辞めないか?私達は罰を受けるべきだ」

父だった。
今までずっと黙っていた父が、口を開き義母を制したのだ。

父の言葉に、義母はとうとう発狂しながら膝をついた。

ルークの指示で、私以外のラスラーニャ家は連れていかれた。

余りの急展開に、色々ビックリしてしまう。

「ソフィー・ラスラーニャ、罰は其方が決めるがいい」

皇帝様は、私に静かにそういった。

私が、義母たちの罰を決める。
なんだか、信じられない。

私は静かにお辞儀をした。

「ご配慮下さりありがとうございます。出来るのならば、すぐ殺してしまわず、一生檻の中に閉じ込めておきたいものです」

殺す、という方法は一見残酷そうに見えるが、本人は苦しむ間もなく解放されてしまう。
こんなことを考えてしまう私は、やっぱりラスラーニャ家の血を引いているのかもしれない。

私の答えに、皇帝様は何度も頷いた。

「では、そう手配しておこう」
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