氷の令嬢は愛されたい

むんず

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71話・魔法使い

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「私は、必死に妹が生きられる方法を探しました。妹を助けられるなら、自分は死んでもいい、そういう思いでいろいろな方法を試していました」

メーリスは視線を落とす。
私は静かにメーリスの話に耳を傾けていた。

「ある日、妹の病を治すことが出来る唯一の方法を見つけました。それは、この国で精霊王が落としたといわれる有名な魔法石を砕き溶かしたものを薬と混ぜ合わせて飲むという方法でした。私は直ちに街を越えて有名な魔法石を探し回りました。しかし、そんな希少度の高い魔法石など簡単に見つかるはずもありません」

メーリスは区切りのいいところで、息を吸う。

メーリスが言っている有名な魔法石とは、この国には片手に数えるほどしかないといわれ、見つけた者は一生の幸せを精霊から与えられるだろう、と伝説にもなっているほど珍しく高価な魔法石だった。

私が読んだ魔法歴史書では、ここ数百年その魔法石を目にしたものはいない、と記されていた。

私は興味もなかったので探そうなんて思ったことがないが、一生をかけて探している人も少なくはないという。

「私は途方に暮れました。妹を助けることもできないのか、と。街中で泣いていると、黒髪の魔法使いが声をかけてくれました。魔法使いに事情を話したところ、その魔法石がどこにあるか知っている、それを教えてあげてもいい。と言ってもらえたのです。もちろん代償は払わなくてはいけませんが」

魔法使い、世界を何千年も飛び回っている一言でいうと怪物だ。
私も魔法使いには会ってみたいと思っていたが、普段は人間の中に紛れて生活しているため、会えないと思っていたが、自分から姿を現すなんて聞いたことがない。

「代償は、何だったの?」

魔法使いは、この国を壊せてしまうほどの優れた魔力を持っている。
ただ、初代の王と魔法使い達がこの国を壊さない代わりに、魔法使いに自由を与える、と契約を交わしたためこの国は守られている。

魔法使いは人間と関わるのが大の嫌いらしいのだが、稀に自分から姿を現す魔法使いがいると聞いていた。
その魔法使いは、人々の願いをかなえる代わりにとんでもない代償を要求する、まるで悪魔のようだとうわさされていた。

いったい、メーリスはどんな契約を交わしたのだろうか。
私は思わず身を乗り出す。

メーリスは壊れたような笑顔で口を開いた。

「私の寿命です」
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