氷の令嬢は愛されたい

むんず

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66話・朝食(1)

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「お嬢様、おはようございます」

私は、ミレーナの声で起きる。

窓から差し込む光が眩しい。あの後、私は疲れてあっという間に寝てしまったようだ。

こんなに心地いい朝は何年振りだろうか。

毎日、毎日あの醜い声を聞いていたため、いつかこのように聞こえない朝が来るなんて思ってもいなかった。
久しぶりに安心して眠れた気がする。

私は目を擦りながらミレーナに挨拶する。

「おはよう、ミレーナ。よく眠れた?」

「はい、お陰様で心休まる夜を過ごせました。今日から数日間ほどよろしくお願いいたします」

ミレーナは品のあるお辞儀をする。

私は笑顔で頷いた。

「本日は、殿下と朝食を取る予定です」

ミレーナは淡々と告げ、私の髪を櫛で梳き始める。
こうやって、お嬢様のように扱われたのも初めての経験だった。

朝起きてから、髪を梳かし服を着るまですべて自分でやっていたため他人に任せるのは少し、申し訳ないような気もしたが、ミレーナは全き気にしていなかった。

「お嬢様、申し訳ないなんて思ってはいけませんよ。これが私の仕事ですから」

ミレーナは私が言いたかったことを察したのか、服を着せてもらっている際に不意にそういった。

「ありがとう」

朝食を食べるだけなのに、こんなに準備していくのもなんだか張り切っていると思われそうで、少々気が引けるけど王太子の前では常に綺麗な自分でありたいと思うので、意を決意する。

「お嬢様、殿下がお迎えに上がっています」

私はミレーナの言葉に一つ頷き、部屋の扉を開ける。

そこには、寝起きには見えないキラキラした王太子が笑顔で立っていた。

朝からこの笑顔を見れるなんて、私は相当の幸せ者かもしれない。

「リエラーヌ、おはようございます」

「おはよう、ソフィー。しっかり休めた?」

王太子は私の姿を確認した後、歩き出した。私はそのあとを追いかける。

「お陰様で。何から何までありがとうございます」

「そっか。良かった」

王太子はある部屋で立ち止まり、ドアを開け私を中に入るように促した。

部屋に足を踏み入れた瞬間、思わず息を飲んだ。

この部屋だけで、図書館が出来そうな広さで、中心に机が寂しげに置かれていた。

壁の周りには、偉人なのか、空想の人物なのか判断できなかったが、沢山の絵が飾ってあった。

「リエラーヌ、まさかここで食事をするのですか?」

王太子は何事もなかったかのようにうなずく。

「何か問題でも?さぁさぁ、座って。食事にしよう」

私はこんなに広いところで食事なんて出来ないと思ったが、取り敢えずお仲がすいたので、あまり気にしないようにしながら着席した。

「ええ」
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