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61話・反撃(1)
しおりを挟む手を繋いだまま階段を登ると、すぐそこに、両手を縛られたまま黙ってこちらを睨んでいる、義母と妹が視界に入る。
私はその勢いにびっくりして、数歩後ずさる。
「ちょっと、殿下。私達の話も聞かすに、この有り様はあまりにも酷い対応なのでは?いくら殿下でも、法に触れますよ」
義母は精一杯自分の正当性についてを主張する。
私はやや引目に義母を見た。
ここで怖気付いていたら、確実に事態は逆戻りだ。
私は意を決意し義母を睨む。
「何が、法に触れる、ですか?私のことを散々虐めてきたのに。私が自ら天下に頼んだのです。家族から酷い仕打ちを受けているから助けてほしいと」
義母は、私の声を聞いて驚いたような顔をした。
それは、そのはず。
私は今まで、義母に逆らったことなど無かったのだから。
妹は、令嬢で、大切にされていた自分がそ縄に縛られたことに対しショックを受けたのか、涙を浮かべて啜り泣いていた。
「あらあら、ソフィー。私はそんな事をした覚えはないわ。少し教育が足りなくて厳しくしただけなのに、虐められてると思い込んじゃったらしいわね」
義母は負けずに反論する。
王太子は見たこともない冷たい目で一歩前に出た。
「そんな言い訳が通じるとでも?ソフィーの痩せた体、ドレスを捲ると赤く腫れている肌。少し厳しくした、どころではない。自分のイライラをそのままソフィーに当たったという感じに見えるが?」
私は王太子にドレスの袖を捲られる。
もう痛みは感じないが、確かに動かぬ証拠だ。
「つまらぬ言い訳なんて聞きたくもない。ミレーヌの瞬間収納魔法で、其方がしでかしたことも残っている」
ミレーヌは王太子の言葉を聞いたあと、右手を一振りする。
すると、その場で義母が私を叩いたり、食事を減らせと指示をしている所など、この数日間で私に対してした事が浮かび上がる。
義母はそれでも動じなかった。
「だから、なんなの?子供は私のもの。私が産んだのだから。貴方たちに私の所有物に対しての文句をいう権利はないわ。さぁ、ソフィーもういいでしょ?貴方に私をどうにかするなんて無理よ。もう終わりにしましょう。ね?」
義母は早く縄を解かないと後で更に酷い目に合わせる、と視線を向けてきた。
子供は所有物……?
私達は、好きで貴方たちのもとに居るわけじゃないのに。
私は貴方の子供でもないし、私だって選択してこんな目に合わされているわけじゃない。
でも、義母の言うことは一理あった。
子供を産むことは非常に大変とされているから、この国では昔から親が子の権利を持つと言う風習があった。
だから、たとえ私が酷い仕打ちを受けていたとしても、義母が認めない限りはどうしようもないのだ。
この風習を何度恨んだことか。
しかし、私は知っていた。この風習のせいで義母には勝てないと言う事を。
この状況から逃げられないことを。
結局、ここに戻ってきてしまうのだ。
私は震えた体で、義母から目を逸らす。
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