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45話・〜王太子side 1〜
しおりを挟む私が好きな令嬢はいつも何を考えているのか分からない。
澄ました顔をしているかと思えば、思い切り顔を顰めてみたり、堂々と私の誘いを断ったりする。
こんな型にハマっていない令嬢は初めて見る。
だから、最初は興味本位で近づいたのだ。
だけど、ある日たまたま視界に入った、憂鬱そうに外を眺める彼女の横顔は、息が詰まるほど綺麗で、まるで氷像のようだった。
その表情、顔の美しさ、儚さに一目惚れしたのだ。
どうにか興味を引こうと思って、お茶会に誘ったものの、彼女は来なかった。
招待を断らなかったため、来ると思い込んでいたのだ。
彼女には驚かされてばかりだ。
街へ行った時も、普段の態度とは似つかないような元気さで街を駆け回っていた。
会話をしていて、彼女の魔術に対しての知識の多さにびっくりした。
頭の回転も早いようで、他人からの言葉を汲み取って解釈していた。
それと、彼女は優しいばかりに、嘘をつく時は表情が些か暗くなるので、すぐに分かってしまった。
彼女が良く、自分に対して嘘をついている事を。
きっと、どれも本当の彼女なのだろう。と思っていた。
だから、彼女が炎を消せると言った時も、嘘だとは思わなかった。
ただ、少し危ないんじゃないか、と不安になったから衝動的に止めたくなった。
火が飛んできて、あの白い肌に消えぬ跡が付いてしまう可能性だって低くないんじゃないかと。
そんな事あって良いはずがないし、そんなところは見たくない。
でも、ここで彼女を止める勇気は、私には無かった。
あんなに、真剣な眼差しで目を合わせられると、息が止まってしまう。
だから彼女を信じて、許可をした。
いざとなったら飛んでいけるように。
でもそんな心配は要らなかった。
彼女は、華麗な姿をした妖精と数秒で炎を消してしまった。
全く、想像の出来な令嬢だ。
事故を処理した後のゴタゴタを無理矢理終わらせた後、彼女を人気のいない場所に連れて行った。
ずっと自分を押し込めて、我慢しているのを、私は知っていたから。
あの時は勢いで我慢しなくて良いと伝えてしまったが、ちゃんと伝わっただろうか。
頭を撫でたり、急に抱きしめたりして、引かれたかもしれない。
あの時の出来事が頭にフラッシュバックし、私の行動がテープのように繰り返される。
段々、恥ずかしくなりデスクに突っ伏す。
あれから何度も、ソフィーの家に行って彼女と会おうと思ったのだが、家に行くなり、彼女は具合が悪い、と言われて追い払われる。
無理矢理、会いに行くことは出来なくもないが、そんな事をしたらソフィーが嫌がるのは目に見えている。
あの日から一週間に一度ぐらいの頻度で尋ねているが、一ヶ月経った今でもまだ具合が悪いらしい。
一体どうしたものか……。
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