氷の令嬢は愛されたい

むんず

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39話・周囲の反応

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私がヴァッサーヌにお礼を言うと、ヴァッサーヌはふふふと笑う。 

『じゃあ今度美味しいもの買ってね』

私は相変わらずなヴァッサーヌに少し安心しながら頷いて約束する。

周りの冷めた視線を感じ私が何をやらかしたのか思い出す。

人の命は確かに、助かった。

だけど、周りの人たちが受け入れてくれる保証なんてどこにもない。

それを分かってて使ったのだ。

どの反応も想像の範囲内だ。

白い目で見られることなんて、義母に虐められるのと比べれば大したことない。

「ソフィー」

私は騒ぎが大きくならないように、さっさと居なくなってしまおうと、歩き出した瞬間、後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り向く。

「で、殿下」

私は慌ててお辞儀をする。

周りにいた騎士団たちも、首を垂れる。

「ありがとう。君のおかげですべて小さい事故で片付いた。身体に支障はない?お屋敷まで送っていくよ」

王太子は、私の事を普通の一人の令嬢として見てくれている。

王太子が、許可を出してくれたから、私を信じてくれたから、沢山の人の命、街を救えたのだ。

お礼なんてこっちが言いたい。

「ありがとうございました」

私は誠意を込めて再びお辞儀をした。

「ソフィー、殿下じゃなくてリエラーヌと呼べと言っただろろう?」

王太子がここでこういう風に言う理由は、周囲に私が王太子と仲がいいと見せかけ、そういう目で見るな?と遠回しに言ってくれているのだろう。 

本当に頭もいいし、お人好しな王子様である。

私はゆっくり首を振った。

「私と殿下は名を呼び合うような仲ではありません、それに、覚悟してましたから」

確かに私も逆の立場だったら同じ行動をしてしまうかもしれない。

得体の知れないものを召喚し、何処ぞの令嬢がそれを操っているのだから。

称賛して欲しいわけじゃない。

人の命を、この街を守りたかっただけだ。

私がそんな事を思っていると、体を王太子に引っ張られ、気が付いた時には王太子の胸の中にいた。

私は、急な出来事にびっくりし、王太子を押し返そうとしたが、そのまま抱きしめられてしまう。

こんな事をしたら、余計に勘違いされてしまう。

「殿下、一体、何を…………?」

「ソフィー、良く頑張ったね」

耳元で優しい王太子の声が聞こえた。
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