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22話・公爵様
しおりを挟む「ねぇ、ちょっと話聞いてくれないかな?」
アーニバルト公爵は少しこちらを向いて口を開く。
「今日、キセラに話があって来たんだよ」
公爵は私の返事を待たず勝手に話し始める。
相変わらずマイペースな人だな。
まぁ、この空間で無言が続くのは流石の私も気分が悪い。
私はため息を吐き、仕方なく公爵の話に耳を傾けた。
「俺、最近好きな令嬢が出来たんだよね」
公爵は壁にもたれ掛かり、天井を眺めながら話す。
ここから見る公爵の姿はお世辞にもカッコいいとは言えないが、彼には彼なりのスタイルがあるのかも知れない。
それにしても、公爵に好きな令嬢がいたとは初耳だ。
まぁ、妹と会話することもないし、パーティーにも行かないから私の知らないところでそうなっていてもおかしくは無いけど。
「どちらの令嬢ですか?」
私が会話した事に驚いたのか、公爵はこちらを向く。
「ソフィー会話できたんだね」
こうやって意味の分からない事を言うのが彼の苦手な所だ。
チャラい所も好きじゃないけど。
「揶揄うのでしたら、今すぐこの会話辞めますよ?」
私は公爵を睨みながら釘を刺す。
「ごめんごめん、そんな怒らないでよ。どこの令嬢を好きになったかだったよな、それがな公爵令嬢で有名なアネリア・ローランなんだよ」
アネリア・ローラン
聞いたことがある。
確か、少し走っただけで揺れる綺麗な金髪に、海に眠る宝石のような危うい黄色の瞳、可憐な顔立ちに、容姿だけでなく性格も女神のように優しいと噂されている、今最も注目を浴びている令嬢だった気がする。
そんな人と公爵が恋愛関係にあったなんて。
想像できないし、釣り合うとも思わないが。
「なぜそのような令嬢と?」
「それは、まぁ、色々あってそういう関係になったんだけど、この前求婚したら受けてくれたんだよ」
どのような成り立ちでそういう関係になったのかを話したくないのか、恥ずかしいのか分からないが、上手い具合にスルーして来た。
別に知りたいわけじゃないし、どうでもいいけど。
「おめでとうございます」
気持ちがこもってない台詞を淡々と口走る。
我ながら、酷いなと思ったが、公爵は嬉しそうに笑った。
こんな公爵の表情を見たのは初めてである。
いつもあのチャラそうな笑顔しか出来ないと思っていたのに、こんな花が咲いたような笑顔も出来るのか。
「ありがとう、で、後は分かるかな」
公爵は察してと言わんばかりに肩を竦めた。
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