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21話・帰宅
しおりを挟む「あぁ、帰ろう」
王太子は立ち上がった私を見上げた後、ゆっくり腰を浮かせた。
帰りは王太子と会話しながら歩いていたため、あっという間に私の部屋に着いた。
私は部屋の窓を開けた後少し、王太子の方に向き直る。
「殿下、本日はとても楽しかったです。ありがとうございました」
少しお辞儀をして、お礼を言う。
「あぁ、明日も来るよ」
王太子は少し微笑んだ後、背を向けて去っていった。
私は、王太子の背中が見えなくなるまで、見届けた後、窓を潜って部屋に戻る。
そこにはメーリスが待っていた。
「メーリス」
「お嬢様、何処へいかれていたのですか?」
メーリスは少し不思議そうに尋ねた。
「ちょっと、ね」
パッと見て私だと分かったということは、変身魔法が解けたのであろう。
堂々と街を歩いていたので、途中で魔法が切れなくてよかったと安堵する。
メーリスは一つお辞儀をして、部屋を去っていった。
今日一日を思い返していると、勢いよく部屋のドアが開く。
メーリスかと一瞬思ったが、勢いよく部屋に飛び込んできたのは妹の幼馴染みアーニバルト公爵だった。
アーニバルト公爵は、私の事をチラッと見た後、部屋の扉を閉めた。
「ごめんね、ちょっとだけここに居させて」
アーニバルト公爵は申し訳なさそうに、両手を合わせ私を見る。
どういう状況?
アーニバルト公爵はこんなに急いで、何かから逃げているのか。
無断で、他人の部屋に飛び込んでくるのは、些か公爵としての振る舞いだとは思えない。
「何事ですか?」
勝手に部屋に上がってきた人を無視する訳にもいかず、仕方なしに尋ねる。
「久しぶり、今ちょっとキセラに追われててね」
妹に追われているからといって、勝手に部屋に入ってくるのもおかしいと思うけど。
「そうですか、では用が済んだら速やかにお帰り下さい」
どうせ妹の我儘に付き合い切れなくなり、反論したところ、逆切れして追いかけられている、といったところだろう。
私も妹の我儘には散々な目に遭わされているので、気持ちは分かる。
ここで無理に追い返して、義母らに私に部屋に居たことがバレれば説教じゃ済まされないかもしれないし。
私はやれやれと言わんばかりに肩を落とした。
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