氷の令嬢は愛されたい

むんず

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12話・嘘

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「ここは私の散歩ルートだよ、町の住民がどの様な生活をしているのか、把握する義務があるからね」

王太子は少し遠くの方を眺めながらそう呟いた。

王太子が平民の事も考えているとは意外だ。
いや、意外じゃないのかもしれない。

「そう、ですか」

下手に言葉を発してはいけない気がしたので遠慮ガチに返事をする。

不意に王太子の横顔が視界に入る。
吸い込まれそうな、綺麗な横顔。

流石、代々美形と言われている王家の子供だと思う。
確か、妹が言うにはお姉様も超が付くほどの美形だとか。

まぁ、どうでも良いけど。

「来週に行われるお茶会に、君も来ないかい?」

王太子は再び私の方を向き、そう言った。

本当にこの人は何を考えているのか、全く想像もつかない。

「いえ、とても光栄ですが、私は外出するのが苦手でして……」

会う人、喋る人に思ってもいない事を口走る癖がついてしまった。
この癖も一生無くならないのだろう。

「ソフィー、妹さんも招待するから、どうかな?」

妹?なんで。
もしかして家庭の事情を王太子は知っているの?

不意一で名前を呼ばれ、承知してしまいたい衝動に駆られる。

駄目、お茶会なんて。
この前の舞踏会でも散々な目にあったのに、行って良い結末になるとは思えない。

でも、どうしてそこまでして……。
私に名前を呼ばせようとする上にお茶会に誘うなんて。

私はこの前の舞踏会で初めて王太子と会ったというのに。

もしかして、この前ダンスを断ったから?
そうだ、そうに違いない。きっと王太子は自分に歯向かう私の事をマークしておきたいのだろう。

自分の頼みを断るん人なんて、居ないだろうから。

これなら、王太子が私に執着する理由も納得できる。

「分かりました、そこまで誘って下さるのなら、お言葉に甘えます」

私は得意の作り笑いで返事をする。

どっちにしろ、私が行っても何のメリットもない。
面倒ごとに巻き込まれる可能性だってあるし、義母のあたりも強くなる事だろう。

しかし、私の仮説が正しいとするとここで断っても王太子は引き下がらないだろう。

だから私は嘘をつくのだ。
王太子には後でバレるだろうが、もう二度と会わなければ良い話だ。

私を牢屋の入れたいなら入れれば良いし。
まぁ、そんな法律は無いから牢屋に入れられる事はないだろうが。

こうなったら妹をうまく利用したもん勝ちである。

私の言葉を聞いた王太子は少し驚いた顔をした後、優しい笑顔を浮かべた。

「そうか、よかった。それでは後日連絡する」

王太子には申し訳ないけど、事を丸く収めるにはこの方法が1番であろう。

私は一礼して、王太子と別れた。
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