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8話・舞踏会(2)
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舞踏会についた途端、私は会場の隅に立つ。
ここからだと周りの様子も見渡せるし、みんな無理に私と話そうともしないだろう。
私は壁に体を預けながら、舞踏会の様子を眺めていた。
エスコートする人がいて、着飾っている令嬢が多い為、少々浮いてしまってる感じはあるが、まぁ、なんとかなるだろう。
王太子はみんなから見える位置に立つ。
確か、王太子の名前は、だった気がする。
王太子の容姿は、白銀の短髪でキリッとした水色の瞳、綺麗な顔。
なんだかキラキラしていて私とは対照的だった。
「今日は集まってくれてありがとう。是非今日一日を楽しんでくれ」
王太子の掛け声で人々が一斉に踊り出す。
そんな様子を隅でそっと眺めながら息を吐く。
妹はあるフィス様と楽しそうにダンスを踊っていた。
そういえば、妹はアルフィス様が好きなんだって昔言っていた気がする。
だから義母が必死なのかも知れない。
何とか二人をくっ付けたいんだろうな。
私は今後、アルフィス公爵に会っても声を掛けられても無視する様にしようと心に誓っていると背後から急に声がした。
「お嬢様、踊りませんか?」
きっと私にかけた言葉ではないだろう。と思ったのです私は振り返らなかった。
こんな真っ黒な服を着た令嬢に声を掛けるのは勇気がいるだろうし。
「お嬢様、貴方ですよ」
私が視線を会場に戻そうとした瞬間肩を叩かれ再び声をかけられた為、仕方なく振り返る。
一体どう言うつもりなのだろうと思って振り替えった途端私は少し息を飲んだ。
声を掛けてきたのはこの舞踏会を主催した方、私をこの舞踏会に誘った方だった。
言い訳でも言おうかと思ったけど、そんな気力もなく王太子のキラキラした容姿を眺めていた。
「はい、ご用件はなんでしょう?」
私は王太子に向かって、少しお辞儀をしながら用件を尋ねた。
私が発した言葉や、格好に対して数人が足を止めて、私の陰口を呟いているのが聞こえた。
王太子は少し顔をしかめる。
「用件?そんなの一つしかないじゃないか。私と踊ってください」
王太子は一つ一つ綺麗な動作で手を差し出してきた。
私は反射的に嫌だ、と言い掛けて口を噤む。
ここで王太子を跳ね除けるのは容易い事だが、今日の出来事が義母らにまわってしまったら面倒くさくなる。
「申し訳無いのですが、私は具合が悪くて、踊れそうにありません」
私は顔色変えずそう答えた。
これが精一杯の遠回しの断りだったが、これでもまだ王太子が踊りを誘ってくる様であったらスッパリ断ろうと思っていた。
「それは、こちらも申し訳無い事をしたね。それではまた次の機会で」
王太子は言葉の意図を察した様に私を見てからあっさり引き下がった。
周囲のざわつきが一層大きくなる。
『あの子、黒いドレスを着ているわよ、不吉だわね』
『まぁ、王太子のお誘いを断るなんて、なんて常識知らずなのかしら』
『あの表情、馬鹿にしてるのかしらね』
みんなが適当に喋っているのが無性にムカついた。
他人の心配なんてしないで自分のことだけを考えてれば?と言う思いで周囲を睨む。
悪口を言うのは勝手にすればいいが、他の場所でやってほしい。
面倒くさいから。
案の定私に睨まれた刹那、周囲は本来の目的へと戻っていった。
あぁ、もう、最悪。
王太子に声はかけられるわ、目立ってしまうわ。
最悪の舞踏会だわ。
ここからだと周りの様子も見渡せるし、みんな無理に私と話そうともしないだろう。
私は壁に体を預けながら、舞踏会の様子を眺めていた。
エスコートする人がいて、着飾っている令嬢が多い為、少々浮いてしまってる感じはあるが、まぁ、なんとかなるだろう。
王太子はみんなから見える位置に立つ。
確か、王太子の名前は、だった気がする。
王太子の容姿は、白銀の短髪でキリッとした水色の瞳、綺麗な顔。
なんだかキラキラしていて私とは対照的だった。
「今日は集まってくれてありがとう。是非今日一日を楽しんでくれ」
王太子の掛け声で人々が一斉に踊り出す。
そんな様子を隅でそっと眺めながら息を吐く。
妹はあるフィス様と楽しそうにダンスを踊っていた。
そういえば、妹はアルフィス様が好きなんだって昔言っていた気がする。
だから義母が必死なのかも知れない。
何とか二人をくっ付けたいんだろうな。
私は今後、アルフィス公爵に会っても声を掛けられても無視する様にしようと心に誓っていると背後から急に声がした。
「お嬢様、踊りませんか?」
きっと私にかけた言葉ではないだろう。と思ったのです私は振り返らなかった。
こんな真っ黒な服を着た令嬢に声を掛けるのは勇気がいるだろうし。
「お嬢様、貴方ですよ」
私が視線を会場に戻そうとした瞬間肩を叩かれ再び声をかけられた為、仕方なく振り返る。
一体どう言うつもりなのだろうと思って振り替えった途端私は少し息を飲んだ。
声を掛けてきたのはこの舞踏会を主催した方、私をこの舞踏会に誘った方だった。
言い訳でも言おうかと思ったけど、そんな気力もなく王太子のキラキラした容姿を眺めていた。
「はい、ご用件はなんでしょう?」
私は王太子に向かって、少しお辞儀をしながら用件を尋ねた。
私が発した言葉や、格好に対して数人が足を止めて、私の陰口を呟いているのが聞こえた。
王太子は少し顔をしかめる。
「用件?そんなの一つしかないじゃないか。私と踊ってください」
王太子は一つ一つ綺麗な動作で手を差し出してきた。
私は反射的に嫌だ、と言い掛けて口を噤む。
ここで王太子を跳ね除けるのは容易い事だが、今日の出来事が義母らにまわってしまったら面倒くさくなる。
「申し訳無いのですが、私は具合が悪くて、踊れそうにありません」
私は顔色変えずそう答えた。
これが精一杯の遠回しの断りだったが、これでもまだ王太子が踊りを誘ってくる様であったらスッパリ断ろうと思っていた。
「それは、こちらも申し訳無い事をしたね。それではまた次の機会で」
王太子は言葉の意図を察した様に私を見てからあっさり引き下がった。
周囲のざわつきが一層大きくなる。
『あの子、黒いドレスを着ているわよ、不吉だわね』
『まぁ、王太子のお誘いを断るなんて、なんて常識知らずなのかしら』
『あの表情、馬鹿にしてるのかしらね』
みんなが適当に喋っているのが無性にムカついた。
他人の心配なんてしないで自分のことだけを考えてれば?と言う思いで周囲を睨む。
悪口を言うのは勝手にすればいいが、他の場所でやってほしい。
面倒くさいから。
案の定私に睨まれた刹那、周囲は本来の目的へと戻っていった。
あぁ、もう、最悪。
王太子に声はかけられるわ、目立ってしまうわ。
最悪の舞踏会だわ。
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