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2年生の始まりと趣味全開のゆーちん
しおりを挟むレイが成仏しないまま4月を迎え俺は2年生になった。
短い春休みの間は特に警察も動きが無く瑠奈さんの所にあのオジサン刑事がやってくることもなかった。
そして始業式の朝━━。
「おはようございますご主人サマ♡」
「おはよ......ってレイ! その格好どうしたん!?」
「可愛いでショ♡ アイラが2年生になったからそのお祝いで買ったノ」
八重歯を見せたニッコニコの笑顔のレイは黒と白を基調としたミニスカのメイド服に下は白いニーハイを履き、腰にはウェストを細く見せるブラックのコルセット、そして長い黒髪をツインテールに結んでカチューシャを付けた格好だった。
「うん、可愛いけど笑ったら『(◝ ⌄ ◜)』みたいな顔になりそうだな。それより......幽霊のレイが何処でそれ入手したの?」
「......楽○」
「楽○かなるほどね......。いやちょっと待て、それどうやって金払ったんだ!?」
「......後払い決済。メール入ってると思うヨ」
俺がスマホのメールアプリを開くと後払い決済の案内メールが一通入っていた。
そしてメールに書かれていたのはメイド服代3300円の支払い案内だった。
「......お前......やってくれたなぁ!」
「ごめんなさイ......でもアイラの喜ぶ顔が見たくテ......」
レイはちょっと泣きそうな顔をして俯く━━。
そもそも俺の喜ぶ顔って俺がメイドフェチとでも思ったのだろうか?
「僕メイドフェチじゃないよ? それに勝手に使った側がそんな顔するなよズルいぞ......」
「ごめんなさイ......でもお金はバイトしてキッチリ返すつもりだヨ?」
「待て待て待て! 幽霊にバイトなんて出来る訳無いだろ? D〇MOでも条件引っかからないぞ......」
「できル、昔してたメイド喫茶でバイトすル......」
「無理に決まってんだろ! 履歴書の経歴に20xx年〇〇霊園入墓とでも書くんか!?」
「大丈夫、ワタシお墓には入ってないかラ」
「気にする所はそこじゃないんだよ。そもそも可視化されない奴は証明写真というフィールドにすら立てないからな!」
「あそっカ......どどどどうしよウ......」
「はぁ......まあ良いよ気にしなくて。ゆーちんから振り込まれたギャラもあるしそれで払うからさ」
「ゆーちン......アイラの周りを彷徨くゴキブリ女......やっぱり呪い殺すしかないのかナ......」
「ダメダメダメ! 彼女ああ見えて色々苦労してるんだ。これからの人生は平穏に過ごさせてやって欲しい」
「......じゃあちょっとだけ抱き締めさせテ。アイラを感じたイ━━」
レイは俺に抱きつに胸に顔を埋めた後に俺を見上げるが、その目は白目の部分が無くなって真っ黒になっていた。
「おいおい、随分おっかない目してるけどそれカラコンか!? 黒目大きい子は可愛いって言うけど程度があるのを知ってるか?」
「可愛いだなんて嬉しイ......ワタシ......アイラが好キ.......。その長い指も綺麗な顔も爪も角質も排泄物も全部ワタシのモノ━━」
ギュッ......!
抱きしめる強さが車のボンネット程度なら曲げられそうな程にタイトになっていく━━。
「レイさん......? ちょーっと抱きしめる力が尋常じゃないかな......普通の人ならコレ背骨折れてるよ......?」
「......好き......好き......好き好き好き」
「分かったから一旦落ち着こう......なっ? あっ━━!」
ミシミシッ......!
「レイさん人の話聞いてる!? このままだと身体が折りたたみスマホみたいにるんだけど!?」
力を入れてレイを身体から離そうにも金縛りに掛けられている所為か拘束を解くことが出来なかった。
「好き......好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ━━!」
ミシミシッ......!
「イダダタダダダダッ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 僕もう一回死んじゃうから! 誰か助けてぇぇぇっ!」
「あっ! ごめんなさイ......好きすぎて力入っちゃっタ......。お詫びにアイラのベッドで色んなマッサージしてあげるから服全部脱がすネ♡」
「ふざけんなヤンデレ幽霊! 金縛りを解いてくれ!」
「イヤ......離さなイ......」
「学校遅刻しちゃうから離してくれ頼む! 進級早々遅刻はヤンキーだと思われるからイヤなんだ!」
「その青み掛った綺麗な白髪は既にヤンキーだヨ......?」
「作者も忘れかけてた初期設定の髪色を今出さなくて良いよ! 後でちゃんと相手するから学校に行かせてくれ......なっ?」
「分かっタ......でも他の女の匂いをつけて帰ってきたら明日から監禁して今後はワタシがアイラのあらゆるお世話をするからネ? 分かっタ......?」
レイの顔は更に怖くなり完全に目からハイライトが消えていた━━。
「そうなったらこの物語そこで終わるからやめてくれ......そしてそのヤンデレ目もやめてくれ。じゃあ行ってきます」
「フフッ......いってらっしゃイ......」
* * *
学校に着くと玄関ホールの掲示板に新しいクラス発表の紙が貼り出されていた。
新しいクラスには前のクラスで仲の良かったメンバーに加えてゆーちんの名前もあったが、復讐相手の連中に関しては同じクラスにならなかった。
そしてクラスのメンバーを一通り見た俺は新しい教室へと向かった━━。
「おはよう」
「おっ! 来たなアイラ! また一緒のクラスになれるとは嬉しいぜ!」
最初に声をかけてきたのはやっぱり司だった、その後ろにはいつも通り龍崎さんも居た。
「そうだね、もっとバラけるかと思って覚悟してたけどまた一緒で良かったよ。僕は人見知りだし━━」
「アイラ君が人見知りとか冗談でしょ? それよりアレ見て、由美が嬉しそうな顔をしてアイラ君の机に座ってるよ」
龍崎さんが親指を後ろにクイクイっと向けると教室に自分の席があるにも関わらずゆーちんが俺の席に座っていて、その顔は何故か少しニンマリとしていた。
「おはようアイラ、一緒のクラスになれたねっ」
「ああ、にしてもそのニヤニヤした顔はどうした? マリ〇ァナでもキメてるのか?」
「そんな訳無いでしょ!? アイラとやっと一緒のクラスになれたから嬉しさに浸ってるの」
「そんな恥ずかしい事大きい声で言うなよ......でもそう思ってくれるのは嬉しいよありがとう」
「うん......こちらこそ......」
いつもの明るくて少しツンとした感じのゆーちんが顔を赤くして照れている表情を俺は初めて見た気がする━━。
「それで......僕の机に座って待ってたってことは何か用があったんでしょ?」
「うん、社長がアイラに衣装を兼ねたスーツ買いたいって言ってたから今日一緒に事務所来てもらって良い?」
「了解。兼ねたって事は他にも何か使う予定があるって事だね」
「そうみたい......最近社長悩み事があるみたいでもしかするとその件かも?」
「オッケ、分かった」
俺達は始業式を終えた後事務所に向かった━━。
* * *
「どうですか.....?」
月野社長達にスーツ専門店へ連れてこられた俺はスーツを試着していた━━。
「素晴らしい......アイラ君とっても似合ってるよ......!」
「いつものよわよわおにーちゃんじゃない......」
俺が今着ているスーツは少し光沢のある黒い生地でシングルボタンにノッチドラペル、そして俺の体型に合った少し細身のモノだった。
中のワイシャツはセミワイドカラーのホワイト、ネクタイは赤に紺のストライプが入ったナロータイを着用した。
「ゆーちんはどう? 変じゃない?」
「アイラ......ちょっとこのネクタイに変えてもらって良い?」
俺の質問にも答えずゆーちんが持ってきたネクタイは真っ黒なナロータイだった。
「......おいこれだと喪服になっちゃうだろ......」
「大丈夫大丈夫最近は黒ネクタイの人も多いよ! いいから変えてみて! 早く! 急いで!」
俺は再び更衣室に入り黒いネクタイにチェンジする━━。
「......どう?」
「.......超絶タイプ......♡」
「え......あ、ありがとう」
「私の大好きなGA○TZのホストざむ○い様そっくり......♡」
「は!?」
「好き♡ もうそのままの格好で学校来て欲しいし動画撮影もして欲しい! ていうかそうして!」
「お前ふざけんな! 俺は手の平から刀とか出せ━━」
出せたわ......俺この身体になったから余裕で手の平から刀出せたわ━━。
よし今度1人公園でホストざむ○いごっこしよう......タバコは吸えないけど━━。
「......なんか言った?」
「いや、なんでもない」
「そう......さっきの話約束だからね? 撮影の時は黒スーツに黒ネクタイでワイシャツとスーツのボタンは開けてネクタイ緩めた状態で撮影する事! 分かった!?」
「チッ......分かったよ。雇い主には逆らえないや」
「うんうん由美の言う事は一理ある、黒スーツに黒ネクタイの人なんて居ないし逆に目立つかも━━」
「いやいや月野社長、コレ誰かの葬式出てるチンピラか売れてないホストみたいになりますよ? ホントに大丈夫ですか!?」
「大丈夫よただの衣装なんだもの。それに今着ているのは喪服みたいに漆黒じゃない光沢のあるダークブラックだし問題無いわ。それと咲耶もご覧の通り見惚れてるし━━」
「っ......! プイッ......」
クソガキの方を見ると顔を逸らし、月野社長の後ろに隠れて俺を直接見ないようにしていた。
「おいクソガキテメェなに目逸らしてんだよ。いつもの威勢の良さはどうした?」
「うるさい......おにーちゃんかっこいいから見れないだけだもん......」
このクソガキもちっとは可愛い所あるんだな......元オッサンの殺し屋だけど━━。
「咲耶は見る目があるのね、さすが私の娘だわ」
「ねぇアイラ、今締めてるネクタイ緩めてもらって良い?」
「え? ああちょうど苦しかったし良いよ━━」
俺がネクタイを緩める仕草をしようとしたら瞬間にゆーちんはスマホを取り出して動画撮影を始めた。
「超かっこいい♡! 早速ショートにアップしよっと♡」
「おいコラ勝手にアップすんなよ! お前これ逆の立場だったら私人○捕系iTuberに盗撮で現行犯されてるぞ!」
「良いじゃんカッコいいんだから! コレ絶対人気出るよね社長!」
「出る出る! コレでまたアイラ君は人気になってお金もガッポリよ!」
「そんな簡単に儲かりませんよ! それと月野社長......目が諭吉になってます......!」
「コホンッ! さてそのスーツ一式を購入したらその服を着たまま貴方と由美には一緒に来てもらいたい所があるの」
「......それってどこですか?」
「大手芸能事務所 《シーフィールド》よ━━」
「そうですか、もしかしてそこの事務所と何かあったんですか?」
「ちょっとね......向こうの人間が由美と貴方にぜひ会わせてくれって何度もせがまれて━━。悪いんだけど一緒に来てくれる?」
「分かりました行きましょう。もし相手が月野社長に手を出す 《ぬら○ひょん》なら僕が一瞬で斬り刻みますよ━━」
「アイラがそれやったら本物のホストざむ○い様じゃん......♡」
冗談はさておき、いよいよ秋山及びゆーちんの誘拐未遂に関連しているあの事務所とご対面か......。
俺はネクタイを再び締め、社長達と一緒に芸能事務所 《シーフィールド》へ向かった━━。
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