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アイラの『ア』は煽りの『あ』

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 レイが俺の家に住み始めてから数日が経過し彼女の存在にも徐々に慣れてきた頃、一年生の修了を迎える日を迎え俺は教室に入った。
 

「おはようアイラ、またお席に座らせて貰ってるよ」

「おはようゆーちん、その光景ももう見慣れたよ。あのさいつも思うけど僕が来るまでの間机で何してんの?」

「ん? ピンを抜いて刺して敵から身を守るパズルゲームやってる━━」

「えっ? 広告だけの詐欺かと思ったけど存在したんだアレ......」

「うん。それより今日で1年生も終わりだね、2年は一緒のクラスになれると良いなぁ」
 
 たしかに今日でこのクラスとも終わりか......思い返せばこの一年碌なこと無かったな━━。
 
 二年生で全ての復讐を終わらせて残りの学生生活をスッキリした状態でハーレムしてやろう! と思ったけどこの物語に 《ハーレム》なんてタグは無かったしそもそも俺って童貞だったわ......。

「アイラ......私の話聞いてる?」

「う......うん聞いてるよ、サザ○さんの花○さんの声優さんが遂に交代するって話だよね? 時代は変わるよなぁ」

「いや全然違うから! でもまあびっくりはしたよね、声優さん変わるのは楽しみでもあるけど少し寂しいような感じもするし」

「だよな、龍崎さんもこのクラスじゃ花○さんみたいな存在だからか寂しいって言ってたよ」

「アイラくーん......まだそのネタ引っ張るのかな?」


 俺のセリフを聞き取った龍崎花○さんが殺気を撒き散らして背後に立った。
 そのオーラに振り向くとニコニコの笑顔で俺に詰め寄る━━。

「磯○君、私の家が管理してる不動産の空き地に貴方をコンクリートで埋めるから中○くんと主人公交代しよっか......アハハ!」

「殺すにしてもやり方がアウト零時すぎるだろ......」

「いいじゃんか磯○! あの世行こうぜ!」

「野球しようぜ! の感覚で怖い事言わないで下さいごめんなさい......」

「アイラ......墓参りは行ってあげるから安らかに━━」

「しれっとゆーちんも便乗すんな! クラスに帰れ!」


 俺達がしょうもないやり取りをしていると教室に入ってきた万季の後ろからイケメンの氷川とメガネの海原も教室に入り俺の前にやってきた━━。


「おはようイケメン君、朝から学校のアイドル2人を相手にしてるなんてやっぱりすげぇな。なあ海原?」

「だな、俺も仲間に入れてくれよ明星クン。もしかしてお前って色んな女に手を出してるのか? さすがモテ男のヤリ○ンは違うなぁ。ゆーちん、俺がこのヤリ○ン男からお前を守ってやるからな」

「いえ結構です。そもそも私貴方の事よく知らないので━━」

「ゆーちんもなの? 奇遇だね僕もだよ。突然教室に入ってきて初対面の人間をヤ○チンとか煽ってくるイカれメガネが学校に分布してるなんて知らなかったや」

「俺を知らないだと......今からその身体に叩き込んでやろうか!?」

「まあ落ち着けよ海原。なあイケメン君、お前そんなんだから万季に手を出したって俺に疑われても仕方ないんだよ。日頃の行いが悪い奴は俺にボコボコにされても文句言えない......ちょっと外に来なよ━━」


 氷川は万季を独占したい想いからなのか周りを顧みず俺を煽りに煽るが、それを見たクラスの女子達は普段の爽やかイケメンとは掛け離れた言動に少し引いていた。


「ふっ......イキって呼び出しとかクラスのみんなにお山の大将とでも思われたいのか? 君には無理だよ。ヘアサロンで5000円のカットしてアシスト付自転車に乗ってる、そこそこ良い家のヘタレボンボンだ。多分親父は警官でお袋はコラーゲン打って若いのとヤッてる、親父もソイツのコラーゲンがケツに刺さってるさ。あと強がっちゃいるがド○キにいるチンピラすらいざ目の前にするとデカい方を漏らしそうになるんだろ? 悪い事は言わないから今のうちにトイレ行ってケツにタ○ポンかコラーゲンでも詰めてきなよ大将」

「なんだと......!」


 俺の言葉に乗っかって女子生徒達は氷川に向けてダメージを与える話をヒソヒソと始めた。


『えっ......氷川君てそういう人なの......?』

『あんだけ煽っておいて100倍返しされてるじゃん......』

『なんかイメージと違ってショックなんだけど』

『いくら顔が良くてもアレじゃあね......』


 周りのシラけた目線に氷川と海原は顔を真っ赤にしながら俺に食ってかかる。


「お前......氷川と俺を舐めてんのか.......!? ちょっと顔が良いからって調子に乗るなよ!」


海原は俺の胸ぐらを掴み、氷川は海原の言葉に便乗して脅しを仕掛ける。


「そうだな海原、こっちはお前の人生なんか簡単に捻り潰すことが出来るんだぞ......?」

「おいおい1人じゃ何もできないからって今度は2人掛かりで僕を脅すのか? 全く女の子かよ......。可愛いお嬢ちゃん達・・・・・・はママに泣きついて今夜ベッドで添い寝してもらいなよ。それとも今から2人同じ病室のベッドで寝たいのか......?」


 ミシミシッ......!

 俺は胸ぐらを掴む腕を両手で掴み板チョコを折る感覚で軽く力を入れる。


「っ......いってぇ......! テメェ......何しやがる......!」

「まさか......この程度で痛いだなんて冗談でしょ? 僕みたいに毎朝カロリーメ○トを食わないからそんな貧相な身体になるんだ」

「この野郎......!」

「そうカリカリすんなって、カルシウム足りてないんじゃない?」

「コイツ......! ぶん殴ってやるっ!」

  
 海原が俺に殴りかかり2対1の喧嘩が始まりそうになった━━。




「「「3人ともやめて!」」」





 ゆーちんと龍崎さんと万季の3人が同時に止めに入った。


「勇樹、この前から思ってたけどアイラ君にいちいち絡むの本当やめて......」

「コイツが万季とヘラヘラ話してたからだろ? 最初に喧嘩売ってきたのは俺じゃなくてアッチだからな」

「お? 男の嫉妬か? 推しの熱愛発覚でグッズ燃やすアイドルオタクみたいな女々しさだな。今度その時の心情を綴ったポエムでもポストしてくれよ」

「アイラも煽らないの、こんなしょーもないヤツの挑発に乗るなんてらしくないじゃん。と思ったけどゴメン私も同じ立場だったらノってたわ......訂正する━━」

「さすが僕の雇い主だ。話が通じて良かったよ」


 そして龍崎さんが今まで見た事ないような冷めた目で氷川と海原を睨みつけて口を開いた。


「氷川君、海原君、貴方達は自分のクラスに帰りなさい。この意味わかるよね━━?」

「っ......! 行こう氷川......」

「ああ......だが来月から楽しみだな、2年になったらもっと仲良くしようよイケメン君」

「え? 君たち2人とも進級できるんだ! スゲーじゃんおめでとう! 褒美にクッキーやるよ」

「っ......!」


 氷川と海原は悔しそうに教室を出て行く。
 その背中を見送った龍崎さんはため息をついていた。


「ふぅ......一時はどうなる事かと思った......」

「ホントだよねー」

「いや貴方の事だよアイラ君! それよりさっきどさくさに紛れて海原の腕折ろうとしたでしょ?」

「えっ!? そんなことないよ。そんな事よりこのクラスとも今日でお別れか......」

「あ、話切り替えた......まあ良いか。2年生の時も一緒のクラスになれると良いね、今度は由美も━━」

「うん、そうなればいちいち遊びに来なくても良いしね」

「僕の席も占領されずに済むしね!」

「それは良いじゃん......私はアイラの席に座りたいの。それよりアイラの作ったオムライスも4月までお預けかぁ......寂しいなぁー」

「自分用に作ってもらってる弁当みたいに言うな。僕の所から僕の好物を勝手に奪ってるだけでしょ?」

「えっ......アイラ君オムライス好きなの......?」


 オムライスと弁当の単語に万季がびっくりしたような顔をして反応した。


「うん、好きだよ。そんなに驚いてどうかした?」

「いや......」

「万季......真央くんもオムライス好きだったもんね......」

「ゆり......その話は......私ちょっと外に出るね━━」


 万季は教室の外に行ってしまった。
 俺はこの機会にわざとらしく龍崎さんに真央と万季の関係を聞いてみることにした。

「万季さんて、もしかして亡くなった黒羽真央と何かあっ━━」

「2人は付き合ってた━━」

「そう、由美の言う通り......でもいろいろあって別れちゃってね」

「色々って......単純に当時学年一イケメンだった氷川に乗り換えたんでしょ?」

「......乗り換えたかは分からないけど万季にもきっと事情が━━」

「事情って何? 彼に悪い噂が立ち始めたのは何故かその頃からだったじゃん。詳しくは知らないけど私的には氷川の逆恨みで彼はイジメられたと思ってる」

「......でも真央くんは最期まで誰にいじめられていたのか話さなかったから結局真相は分からなくて私と司は何の力にもなれなかった━━」

「......私もその当時仕事で学校に来れない日ばかりだったし、彼のあの嘘動画が流れてた事も亡くなった事も全部後から知った......何も力になれなかった私も同罪だよ。もっと早く気が付いて彼の側に居れば━━」


 万季と俺の関係を聞く話から俺自体の話にシフトされて空気が重たくなった━━。

 しかし......龍崎さんが落ち込むのは百歩譲って分かるがゆーちんは別のクラスだし殆ど関わりが無かった上、顔を知ったのも亜依羅になってからなのに何故罪悪感を感じているのだろう━━?


「......なんか僕のせいで暗い話になっちゃったねごめん」

「ううん気にしないで。私達にとってこの事は絶対に忘れちゃいけない事だから━━」

「そっか......分かった」

「じゃあ私そろそろ教室に戻るよ。アイラまた連絡するからね」

「オッケー、また出演のスケジュールとか分かったら送っといて」


 ゆーちんも自分の教室に戻り俺達はその後修了式を終えて下校となった━━。


*      *      *


 ゆーちんが所属する事務所にて━━。


「また 《シーフィールド》からメール入ってる。今度は由美だけじゃなくて会社ごと買い取るつもり? 全く冗談じゃない......!」

「ママ......どうしたの?」

「んー? ちょっと色々あって......ごめんね咲耶」

「だいじょーぶだよ。ママこそおしごとがんばりすぎてるからむりしないでね」

「ありがとう、咲耶はここのお部屋好き?」

「うん! ママもおねーちゃんもいるしVituberの月村きんせいちゃんもいるし......それにあのおにーちゃんもいるし♪」

「アイラくんの事ね。あんなに生意気な口聞いてるのに咲耶は彼の事好きなんだねっ」

「うん! だっておにーちゃんからかうとおもしろいんだもん♡。でもねママ......ママが今こまってることはあのおにーちゃんが助けてくれる気がするの」

「ん? どうしてそう思うの?」

「わかんない......でもわたしにはそう思うの」

「そっか......だと良いんだけどね......」


 子供って時々よく分からない事を言うものね。
 でもこの件は近々話をしっかりつけないと本当にまずい......下手に断ればこの事務所は簡単に潰される━━。







「月野ゆり......か......」

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