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氷川との邂逅

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「おはよー」

「おっ! 来たなイケメン! なんか顔色悪いけどどうした?」

 司の騒がしい挨拶が耳に響いて少し目が覚めた。
 そして司の隣にいる龍崎さんもその声に少し耳を塞いでいた。

 俺は昨日霊のレイが夜中出てきたせいで眠れなかったんだよな......。
 

「ああ......昨日は夜遅くに生死を超越した戦いがあった所為で寝不足なんだよ。そうだレッド○ル買ってきてくれない? あれ美味いからさ」

「パシらせんな! それに俺はモンスター○ナジー派なんだ! にしてもゲームのやりすぎか? お前見かけによらずゲーマーなんだな━━」

「うんゲームもアニメも好きだよ。昔は悪魔を退治するゲームにハマってたしアニメなら天○向とタメ張れるくらい食い入るように見てるし」

「天○向? 誰だそれ?」

「去年tiktokerに振られた眼鏡掛けて太ってる吟じない方の芸人だよ。知らない?」

「いや知らないなぁ......。やべっ! 俺職員室に呼び出されてるんだった! ちょっと行ってくる!」


 司は焦りながら教室を出て行くと龍崎さんが入れ替わりで俺に話しかけてきた。


「ねぇねぇ司となんの話してたの?」

「ん? ああゲームの話だよ。好きなゲーム聞かれたから答えたんだ」

「そうなんだ、アイラ君がゲーム好きなのちょっと意外かも......」

「それ司も同じこと言ってたよ。そんな事より2人ってどんな時でも一緒に居るし言う事似てるし実はひょっとして......?」

「違う違う! アイツとは昔からの幼馴染なだけだよ? それにデリケートな話になるけど私実は━━」


 龍崎さんは慌てた表情で俺に耳打ちをして誰にも聞こえないように司を好きではない理由を話してくれた。


「━━なるほど、それなら僕の勘違いだったみたいだね」

「そういうこと。それと私は年上の人が好きなの......だから司にはそういう感情は無いんだよ」

「そっかぁ......司も難儀だな━━」


 龍崎さんはそうだとしても司のあの態度は完全にソレだ......アイツの気持ちを思うと少し胸が苦しくなるな━━。


「この話2人だけの秘密だからね? 約束だよ?」

「もちろん、絶対言わないよ。それより司は何で呼び出されたんだろ?」

「何だろうね? アイツああ見えて何気にクラスのまとめ役だから秋山先生の伝言でも頼まれたのかな?」

 
 大体間違ってはいないが恐らくソイツ自身の事だろう━━。
 俺達が司の話をしていると司は血相を変えて教室に入り教壇に立った。


「みんな聞いてくれ! 秋山が......昨日襲われて亡くなったそうだ......!」

「えっ!?」

「マジかよ! あの動画が流れた矢先にか!?」

「嘘だろ......」


 司の一言でクラス内は大騒ぎになった。
 どうやら昨日警察から校長に連絡が入ったらしくまたもや全校集会が開かれることになったそうだ。


「まさか秋山先生が亡くなるなんて......ここ最近学校の人死にすぎじゃない? 私怖くなってきたんだけど......」

「だよね......全く警察は何をやってるんだよ。僕達の安全を守るとか口ばっかりの嘘じゃん」


 龍崎さんは少し怯えた顔で俺の方を見るが俺は碌なフォロー出来なかった。
 なんせソイツらを全員ぶっ殺してる犯人は俺自身だからな━━。


「アイラの言う通りだよな! あの動画の事は抜きにしてもまた1人殺されたんだ! 警察なんて信用できないぞ!」

「確かに、あんだけ事情聴取させておいてまた1人殺されてるんだもん冗談じゃない!」

「まだ犯人は捕まっていないのかよ! 警察は一体何やってんだ!」


 俺が投げた言葉にクラスメイト達は同調し警察への不信感を募らせる。
 そんな最悪の空気の中俺達は体育館に集まり校長からの話を聞くことになった━━。


「お集まり頂いたのは他でもありません......秋山先生が昨日亡くなられました。警察によりますと先生は警察署内で警察官に殺害されたとのことですが━━」

「ふざけんな! 一体何人死んでんだよ! 警察も学校も何やってんだ! 俺達生徒を守ってくれるんじゃなかったのかよ!」

「そうよ! 何にも解決していないじゃない! それに警察官が殺したなんて世も末よ!」

「静粛に! 私も昨日聞いたばかりで気が動転してる上まだ確かな情報とは言い切れません! とにかく貴方達生徒は我々大人が全力で守りますので安心してください! それとこの件をSNSで決して広めないように! 以上!」


 校長は逃げるように早めに切り上げて会を終わらせた。
 そしてSNSで広めるなという言葉は通じるはずも無く秋山が警察官に殺された事、例の動画の所為で話に尾ヒレがついてヤクザと繋がりがあった事や警察と内通して事件を隠蔽してたなどと言う真実も混ざった情報も上乗せされて拡散された。
 
 まあその真実を混ぜた情報が出回るキッカケを作ったのはIPを匿名化ソフトで偽装して海外からサーバーを経由した俺の偽アカウントによるものなんだが━━。

 しかしここ数週間で生徒も教師も殺されたとなれば流石にあのバカな校長も焦るよな。
 このデカいヒビは段々とこの学校の仮面を剥がすことになる━━。


*      *      *


 集会から戻り午前の授業を終え、お昼を迎えると隣の席に座っていた万季が話しかけてきた。


「アイラ君ちょっといい?」

「......どした?」
 
「ちょっとアイラ君と話したくて......私達隣同士だけどあんまり話す機会無かったじゃん? そろそろ二年生になるし次のクラスは違うかもしれないから少しでも仲良くなりたいと思って......」

「そうだね......そう言えば万季さんて亡くなった黒羽真央って人と仲良かったの?」

「え!? う......うん......」

「そっか......その真央って人はどんな人だった?」


 万季は少し俯きゆっくりと真央の人物像や思い出を話し始めた。


「真央とはこの高校で出会ってね、私が自分の下駄箱に靴を入れようとしたら真央が私の所に間違って入れて声を掛けたのが出会い。この前のアイラ君みたいな感じだったかな?」

「そうなんだ、真央くんはおっちょこちょいだったんだね」

「うん、でも頭が良くて優しくて顔も可愛くて......時々悲しそうな顔をしてた時もあったけど凄く良い人で私は心から好きになったの。でも......私の周りがそれを許さなかった━━」

「周り? それって一体━━」






「万季! 今日の昼は俺と食べる約束だろ? 何で来ないの?」


 教室の外から万季を呼んだのは俺がイジめられるきっかけになった万季の今カレ 《氷川勇樹》だった━━。
 アイツってあんなに口調丁寧だったか......? まさかあの時が本性でコレが外面か━━。

「アレ氷川君じゃん......超カッコいい.....」

「ホントだ! さすが校内元1位のイケメンは伊達じゃないね!」


 周りがヒソヒソ話をする中、氷川は教室に堂々と入り俺を睨みながら顔を近づけてきた。


「やあ転校生、俺の彼女になんか用? まさか手を出すつもりじゃないよね?」


 相変わらずムカつく野郎だな......彼女に手を出されそうな体で俺に近づき、自分の外見や地位を全力で振り翳して来やがる━━。


「あり得ないよ。ところで君は......見たことないな......初見さんかな? 気軽にコメしてね」

「は? 君俺の事知らないの? 俺は氷川勇樹......こっちは知ってたんだけどな君のこと。転校当初から学校一のイケメンとか言われて他校の女子生徒からも大人気なんだよ......ムカつくほどにね━━」

「へぇ......わざわざ他校に行って一人一人にアンケートでもとったの? だとしたら超暇なんだね君」

「ふっ......交友関係が広いと言ってくれよ。それと俺の女に手を出すなら覚悟してね......君の人生台無しにするよ? あとその口の利き方も気をつけるんだ、俺を怒らせるとアイツのように━━」

「勇樹......その話はやめて......!」

「ん? 怒るとミニスカ履いてチアダンスでも踊るのか? 頼むから履いてるTバックだけはスカートから見せないでくれよ」

「なんだと......!」

「勇樹もう良いでしょ!? これ以上はもうやめてよ!」

「ふっ......わかったよ。俺はコイツの挑発に乗るほど心狭くないし、それにもうアイツはもう死んだしな。それじゃ行こうか大葉達もお前を待ってる、もし逆らうなら━━」

「わかってる......ホントごめんね......アイラ君......」


 万季は悲しそうな顔で教室を出た。
 やっぱり氷川に万季は何か弱みを握られているのか......?

 それとアイツってのは俺の事だな、まあ良いさ今のうちに人生を謳歌しとけ......お前はお友達が全員死んで恐怖に陥れた後に殺してやるよ━━。

 そして氷川達が出ていくのと入れ替わりでゆーちんが教室に入ってきた。

「やっと話が終わったねアイラ。早くお昼食べようよ」

「ごめんごめん、なんかキヨシに絡まれてさ」

「それ違う氷川だから。あいつアイラにイケメンの座を奪われたから僻んでんのよ、元々大した顔じゃないくせにプライドだけは高いんだよね」

「中途半端なイケメンほど周りを気にして僻むもんさ。それに男は顔じゃなくて包容力と余裕でしょ、それとジョークの面白さかな━━」

「それは間違いないね、ジョークは微妙だけど他は余裕でアイラの圧勝だし氷川が勝ってるのなんて精々態度のデカさくらいよ。大体あの取り繕った喋り方がムカつくしそれに━━」

「それに?」

「なんでもない......とりあえず今日社長に会うから帰り一緒に向かいましょう」

「オッケー」


 俺たちは昼休みを終えて放課後を迎えた━━。


*      *      *


「ここが事務所よ、さあ入って」


 俺はゆーちんに案内されて事務所の会議室的な場所に入る。


「初めまして、明星亜依羅君ね? 私は社長の 《月野ゆり》よろしくね」


 月野!? まさか━━!


「よろしくお願いします。それよりこっちの......」

「そうそう、この間から私の事務所に所属することになった━━」











「おにーちゃんまた会ったね♡  まだお化けに怖がってるのかな? よわよわ~♡」

「黙れクソガキ、ぶち○すぞ」

「ひど~い♡  たすけておねーちゃん♡」

「チッ......最悪だよクソッたれ!」

「コラッ! アイラ!」


 月野社長と共に現れたのはあの時の殺し屋クソガキだった━━。
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