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地獄の始まり

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 俺は結局その日一睡も出来ずに朝を迎えた。
 眠い頭を抱えながら教室に入ると皆んなの視線が一斉に俺に集まった


「おはよう...皆どうしたの?」


 俺の答えにクラスの皆は目線を逸らし、まるで誰もいなかったようにそれぞれ会話を再開していた。
 その中にはまだ万季や司、龍崎さんの姿は無かった。

 俺が不思議に思っていると教室外のから5人の男女がゾロゾロと俺の教室に入ってきた

「お前だな? 青海万季を盗撮して挙句勇樹に脅して金取ったって言う男は。ちょっと面貸せよクソ野郎」


 俺はその男に胸ぐらを掴まれて教室の外に引っ張り出された


「コイツ最低だよね。万季をストーカーして挙げ句の果てに盗撮して恐喝なんてマジきもいんですけど」

「じゃあ逆にウチらがコイツの裸撮影してネットにばら撒けば良いんじゃない?」


 ニヤニヤとした顔で5人は俺に恐ろしい言葉を放つ
 ストーカー? なんの話だ...?


「ちょっと待って...! 俺はそんなことしてないし昨日たまたま...」

「たまたまだって!? やっぱストーカーしてたんじゃん! もう良いよコイツの人生台無しにしてやろうよ」

「だな...俺たちの親友勇樹に対する報復だ」


 俺はその男女5人に人が滅多に入らない倉庫まで引きずられて行った━━━


 俺を連れ出した5人の顔にはかなり覚えがあった。
 名前はそれぞれ大葉栄一おおばええいち海原清史楼かいはらせいしろう、田所あすみ、笛吹瑠衣子ふえふきるいこ富田守みやたまもるで何故覚えがあるかといえばこの5人はこの学校内でもかなり有名なお金持ち、もしくは親が各業界の大物で生徒はもちろん教師すらあまり口出し出来ない連中だった。

 そしてその中でも田所あすみに関しては俺が入学して一ヶ月後に告白してきた人で俺はそれを断っていた━━━


「なんで...こんな事を...」

 俺は5人にボコボコにされ顔から血を流しながら疑問をぶつけた

「はぁ? お前が優樹の彼女の万季に纏わりつくからだろ? そのせいで万季は今日休んでるしな...。て言うかそんなくだらねえ事言ってハッタリかましてたら殺すぞ」

 大葉は倒れている俺に更に蹴りを喰らわせる

「ううっ...! ゲホッ...ゲホッ...」

 肋骨あたりから鈍い音と激痛を感じヒビが入ったと俺は確信した

「はぁ...情けない。私こんなゴミクズに告白したんだ。アンタには私以上に惨めになってもらわないとね、真央ちゃん」

 田所は俺の髪の毛を引っ張って俺を睨みつけた後、無理やり髪の毛を引っこ抜いた


「痛い! なんでだよ...俺は何も...うぅっ...」


「めんどくさ...そんな事で泣いてんじゃねぇよお前男だろ? それとももしかして実は女? メスみたいな顔してるもんねキモ......ペッ!」


「おい笛吹、お前が吐いた唾で顔が汚れただろ? あーあー可哀想な黒羽くん...お水で掃除してあげないとなっ!」


 海原は唾をかけられた俺の顔を外で雨水が溜まったバケツを倉庫に持ってきて無理やり俺の顔を水に浸けた

「ぐぶぶぉぉぁぁっ....!」

「はっはっは! こんなコケと虫の死骸だらけ水で顔洗ってるよ...クサッ! 富田ちゃんとこれ撮ってる?」

「ああバッチリだよ。TikTakに #斬新な洗顔 とかタグ付けて載せればバズるんじゃね?」

 溺れかけている俺にお構い無しに海原以外の奴らは笑っている。
 そして海原が俺の髪の毛を掴んでいる手は何故か怒りで震えていた


「やめ...ふぐぇ...」


「おい...お前何俺の制服汚してんの? クリーニング代出せよコラァッ! なぁ! クソがっ!」


 怒った海原は俺の顔を何度も何度もバケツの水に浸けては離しを繰り返した。
 その度に鼻と口から水が入り俺は息が出来なくなった


「はぁ...はぁ...ゲホッ...うおぇっ...」

「海原のお陰でいい顔になったじゃねぇか。女を痛ぶってるみたいで興奮するぜ俺は...」


 ニタニタと笑う大葉に対して俺はゾッとするほどの恐怖を覚えた
 

「...もう...やめてください...お願いします!」

 このままでは殺される...
 俺は死にたくないという想いから5人に土下座をして許しを乞う━━━


「情けねぇ...今生きてるだけありがたいと思えよクソ野郎、明日からたっぷり楽しませて貰うからな。それと俺達にビビって休んだりお前の友達にこの事を話したらその友達ごと地獄に叩き落とすからな。指摘されても笑って過ごせ...まあお前には気にしてくれる友達はもういないと思うけどな」

 大葉の一言に俺は察した。
 昨日氷川が言った台無しにするという事はもう始まってるんだ...

 俺は絶望しながら濡れてボロボロになった制服と体を引きずって倉庫を後にした━━━ 


*      *      *


 結局1時間目の授業を受けれずに教室に戻ると皆は俺の顔を一瞬見ただけで逸らした。
 そして司と龍崎さんが俺の方に寄ってくる

「おいどうした...お前濡れてボロボロじゃねえか!」

「真央くん大丈夫!? あなたの事噂になってるけど何があったの...?」

 心配する2人に本当のことを話したいが、大葉に言われた言葉で怖くなり気丈に振る舞う事しかできなかった

「だ...大丈夫大丈夫。ちょっとじゃれあってただけだからさ...」

「じゃれ合うって...もし誰かに無理やりされたなら絶対俺達に言えよ? 友達なんだから!」

「ありがとう...」

 
 その言葉に涙が出そうになるがグッと堪えて笑顔を繕うが━━━



「て言うか黒羽ドブ臭いんだけど!?」


 クラスメイトの1人が俺に向けて言葉を放った


「なんだと!? コイツが今どんな...」

「良いって司...俺今日体調悪いから帰るよ」


 俺はその場に居れなくなって学校を早退して家に帰り、現実から逃げるようにゲームを起動させた


「俺の拠り所はもうこのデビルハンターゲームしかない...」


 今日もボスの2人は殺さずにゲームを始めからやり直して眠りについた━━━


*      *      *


 次の日からの学校での内容は酷いものだった...
 朝の1時間目の授業は必ず出る事ができず毎回5人に違うシチュエーションでボコボコにされた後授業を受け、放課後もありとあらゆるイジメをされるハメになった。

 時にはその日買う夕飯のお金も恐喝されて食べることが出来ない日もあった。

 俺の制服や顔がボロボロになっているにも関わらず教師は見て見ぬふりを続け、クラスメイト達は俺のことを無視するだけでなく誰かがロッカーのモノを隠したり弁当を無くされたり散々な目にあった。

 俺が日に日にやつれていくのを心配する司達にはうまく誤魔化し、なるべく迷惑かけない様にするため会話を交わす事も減った。

 そんな中あの日以来避けていた万季が俺に声を掛けてきた

 
「真央...ちょっと話が...」

「ごめん...俺万季と居るといろいろまずい...それに...もう話したくない...」


 万季と関わると誰がアイツらにチクるか分からないし万季を巻き込みたくない。
 アイツらが何をするか分からない恐ろしさは俺が一番知ってる。
 だけど何より優樹とキスをする関係になっている万季とはもう距離を置きたかった


「待って...!」

「ごめん万季...もう無理に関わらなくて良いよ、俺の事は良いからイケメンの彼氏と上手くやって欲しいな。今まで本当にありがとう...大好きだったよ...」


「そんな...」


 これが真央として万季と会話した最後だった━━━

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