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大好きな気持ちの伝え方④-2

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「颯太、どうしたの急に」

 玄関のドアを開け、目を丸くして未羽が言った。仕事中だったのか髪を纏め上げ、相変わらず緩い服を着ている。

「あれ、今何時……? ずっと残業してたの?」

 半ば強引に中へ入れば、戸惑った声を上げながらも迎え入れてくれた。鍵をかけ、振り返った身体に圧し掛かるように抱きしめる。柔らかい感触にほっと息を吐いた。安心する。そんな俺の思いとは裏腹に、その身体が強張っていく。

「え、え……って、酒くさっ!」

 体重をかけると、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら押し返してきた。

「まって、ここで寝ないで! せめてソファに……くっ、重……!」

 酔い潰れていると思ったのか、必死で移動しようともがいている。髪からシャンプーの匂いがし、ぐらりと理性を揺らがせた。

「お、重い……くさい……っ、どれだけ呑んだの」

 そんなの覚えていない。最寄り駅に着いてからも気持ちが落ち着かず、居酒屋で呑み直してからここに来たのだから。

 ふと、床に置かれている買い物袋が目に入った。白い袋に印字されているのは少し遠い場所にあるスーパーで、一人ではなかなか外出しない未羽の為に、俺がよく行く店だ。以前に買ってきたのは二週間以上も前だし、中に覗いている飲料や菓子は当然、俺が買ったものではない。

「買い物……、行ったのか」

 ぐいぐいと押し返していた力が少し弱まり、またすぐに込められた。うん、と届く返事を聞きながら、心の中でショックを受けている自分に気づいた。

 馬鹿みたいだ。食料が無くなれば買いに行く。俺が買って来なければ自分で行くしかない。そんなことは当たり前なはずなのに、まるで存在を否定されたかのような感覚が生まれている。あぁ、俺がいなくても、未羽は平気なんだな。そう思ったら、急に遠くに行ってしまったように感じて、どうしようもない不安感が襲いかかってきた。

 後ろ向きのまま廊下を数歩進み、崩れ落ちそうになっている未羽の首筋に吸い付いた。悲鳴のような声を上げ、足を止めるその身体に手を這わせていく。

「へ……、やだっ、何して……っ」

 逃れようと腕を突っぱね、見上げてきた瞬間に唇に噛みついた。同時に舌をねじ込ませれば、ビクリと肩が震える。口内を舐め上げ、歯列をなぞり、無遠慮に舌で犯していく。

「んんーっ! んっ、んっ」

 離れようとする頭を後ろから押さえ、深く重ねて縮こまった舌を絡め取った。隙間無く密着して蠢かせれば、未羽のそれもだんだんと柔らかくなっていく。

「んぅっ、ふあっ、はぁ……っ、んっ!」

 唇を離し、角度を変えてすぐにまた重ねる。尚も抵抗してくる腕を掴み、壁に追いやって上に纏め上げた。片手で両手首を押さえられてしまうその細さに、何故か悲しくなってくる。

 服の中に手を入れ、直接触れる胸を揉みしだく。股に膝を押し入れて上げれば、簡単に小さな身体が持ち上がった。小刻みに揺れるとくぐもった声が鼻から抜け、力が抜けていく。

「は、ぁ……っ、まっ、……っぁ、あぁっ!」

 床に足を付けようとつま先を振り、股を刺激するたびに宙を蹴って身を捩らせる。服が邪魔で一気に上まで脱がせ、腕ごと掴んで頭上で固定した。胸を乱暴に掴み、先端を押しつぶす。

「あっ、やぁっ!」

 首筋に噛みつき、歯形を付け、上から強く吸い付いた。

「いっ、た……ぁっ、んっ、そうた……っねぇ、まって、って、ばぁっ」

 止められない。どれだけ抵抗されても、制止の声を上げられても、感情任せに動く自分を制御することが出来ない。やっぱりあの日、あんな抱き方をするんじゃなかった。もう二度と、あんな日はこない。そう思うだけで、息苦しいほどの空虚がどんどんと大きくなっていく。

 未羽の抵抗する動きが止まり、だらりと力が抜け落ちた。膝を降ろせばそのまま壁沿いにずるずると崩れ落ちていく。短パンの前を開け、パンツの中へ手を入れるとぬるりと液体が指に絡みついた。敏感な場所へ乱暴に塗りたくれば、より高い声を上げながら身を捩る。

「やぁっ、ぁン! やっ、やだぁっ!」

 身体が前傾し、快楽を耐えるように拘束された腕でしがみついてくる。中心から愛液が垂れ始め、下着の中でぐちゅぐちゅと水音が響いている。

「あっ、あっ! だめっ、はなし……ぁっ」

 倒れていくその背中に回り込み、うつ伏せに床へ組み敷いた。腹に腕を回して無理矢理下半身を起こし、クリを剥いてひらすらに擦り続ける。

「やあぁっ! も……っ、あぁんっ!」

 ビクリと腰を大きく揺らし、尻を突き出した格好のままイッた。間髪入れずに下着ごと短パンをずり下ろし、ベルトに手を掛けて自身のものを取り出す。

「えっ、うそ、待って……!」

 中途半端に脱がせた状態のまま、ひだを開いて先端を埋めた。いつもより締まる体勢のせいで思わずうめき声が漏れ、それでも一気に奥へと押し込む。

「ぅ、あ……っ、はぁっ、は……っ」

 苦しそうに必死で呼吸を繰り返す声が聞こえ、震える背中をなでた。くびれを両側から掴み、腰を前後に動かす。

「はぅっ、う、……ぁあっ」

 膝に服が引っかかっているせいで、完全に足が閉じていて圧迫感がえげつない。酔っていなければすぐに射精していたほどの締め付けが襲い、呼吸が乱れていく。

 気持ちいいはずなのに、心が苦しい。どうしてこんなことをしているのだろう。無理矢理抱いて、悲しませて、もう後戻り出来ないことを俺はきっとしてしまっている。

「あぁっ、はっ、あっ、ぁあ、ん……っ」

 派手に動くことができず、奥に挿れたまま律動していると未羽の声が甘さを帯びてきた。白い背中に覆い被さり、抱きしめてより一層深い場所を刺激していく。

「ふあぁっ、あっ、んぁっ」
「は……っ、未羽……っ」
「んっ、あっ、やぁっ!」

 曝け出された首筋に噛みつき、大きく舐め上げ、違う場所にまた噛みつく。そのたびにビクビクと肩を震わせ、服が絡んだままの手をぎゅっと丸めた。そこに自分の手を重ね合わせれば、途端に感情が溢れ出してくる。

「未羽……、未羽……っ」
「あっ、あぁっ、ぁん!」

 うなされているかのように名前を呼び、どうしようもない苦痛を吐き出していく。本当はこんなことしたくなかった。ただ好きで、他の誰よりも大切で、一番近くで見守っていたはずなのに、気づけば遠い存在になってしまっていた。

「……未羽」
「あぁっ、あぁん! あっ、やぁっ!」
「好きだ」

 思わず零れた本音は、高く響く嬌声で掻き消された。脳がぐちゃぐちゃに掻き回されたかのように感情がおかしくなり、本能のままに腰を動かし続ける。やがて絶頂が訪れ、小さな背中を抱きしめたまま果てた。
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