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上手なエッチの誘い方②-1

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 土曜の昼間、キッチンで牛乳を一気飲みし、盛大に息を吐いた。私は今、窮地に立たされている。

 家で仕事をしていると、平日だろうと休日だろうと午前中は大抵寝ている。十二時を過ぎたばかりの頃に出版社の担当さんから電話で起こされ、寝ぼけた頭で「女性上位でいくつか考えといてください」と雑な指示を聞き、とってつけたように前回の漫画を褒められて一方的に切られてしまった。

 真っ先に颯太の顔が浮かび、あの言葉が蘇ってくる。

『そういうのは、恋人とするんだよ』

 つい先日、どうして最後までしなかったのかと聞いた私に対する答えだ。今まではしてくれたのに、明らかに躊躇っていた。颯太に彼女が出来たのだと、そう考えるのが自然だ。

 目の前が真っ暗になり、重く息を吐く。いつも数ヶ月しか続かないから、またすぐに別れるかもしれないけれど、それでもこの期間は心が苦しくて仕方が無い。もし上手くいって結婚なんてしちゃったらどうしよう。と、彼の幸せを考えて鬱に陥ってしまう。

 とにかく、漫画を口実にあれやこれやお願いするのはもう止めよう。新しい彼女からしたら、恋人の幼馴染みが誘惑して定期的にエロいことをしている、というトンデモ事件になってしまう。

 しばらく連絡するのも控えた方がいい。買い物くらい自分で行ける。早速もう愛飲している牛乳が底を突いてしまったけれど、コンビニで買えばいいだけだ。うん。だるいな……。

 そう思っていた矢先に家のチャイムが鳴り、なんと颯太が牛乳とその他食料を色々買ってきてくれた。早々に決意が揺らぎ、今に至る。

 いつものように仕事にかこつけてお願いするなら今しかない。そう思う自分と、いや、彼女いるんだからアウトだろう。と冷静に止める自分が心の中で葛藤している。

「颯太ー、なんか飲む?」

 一旦忘れよう。牛乳を片手にリビングに戻り、ソファに座っている颯太に声を掛けた。返事が無く、俯いた頭が微動だにしない。不思議に思って近づいてみれば、背もたれに体重を預けて硬く目を瞑っていた。

「寝てるの?」

 聞くまでもなく、寝息が聞こえてくる。携帯をいじりながら寝てしまったようで、持つ手がだらりとソファに落ちている。疲れているのかもしれない。毎日会社と家を往復して、時には残業をして、そんな中で私のことまで気に掛けてくれているのだから颯太は本当に優しい。

 ふと、頭の中に閃くものがあった。セックスの誘い方なんて分からないけれど、これならいける気がする。寝ている今がチャンスだ。

 ローテーブルにぶつからないようにそっと身体を移動させ、颯太の足の間に収まった。ズボンのベルトへ手を伸ばし、恐る恐る外していく。彼女さんごめんなさい。今回だけにするから、許してほしい。

 さすがにズボンを脱がすことは出来ないので、チャックを開けた状態のまま下着をずり降ろした。思わず息を呑み、目の前の光景に釘付けになる。そっと触れれば以前のような硬い感触はなく、大きさも当然ながら全然違う。

 怒られるかな、これ、怒られるだろうな。まぁ、いいか。起こさないようにと颯太の寝顔を窺いながら、ゆっくりと手に取った。初めてする行為なのに見られていないからか躊躇いはなく、唇を寄せてそこに触れる。

 舌を這わせば唾液が絡みつき、どんどん濡れていく。軽く吸い付くと僅かに震えて顔を歪ませるので、それ以上触れずに落ち着くのを待った。再び舌先で舐め、手でやわやわと握り、刺激していく。

 これでいいのかな。合ってるのか分からないけれど、徐々に大きくはなってきた。私の唾液まみれで立ち上がっている様は妙にエロくて圧倒される。

 着ているロンTを脱ぎ、ソファに放り投げた。寝起きのまま着替えていなかったから、これを脱ぐとショーツ一枚の姿になる。無駄に成長した自分の胸が、あってよかったと今日初めて思った。

 颯太の股間に更に身を寄せ、谷間に挟んで両胸を横から押し当てた。硬い感触がそこから伝わり、途端に恥ずかしくなってくる。これ、視界がだいぶやばい。

「は……?」

 頭上から間の抜けた声がし、固まった。恐る恐る顔を上げれば、颯太が私を見下ろして瞬きを繰り返していた。起きてしまった。ここまですれば、当然か。

「お前、何やって……っ!」

 怒られるよりも前にと挟んだ胸を動かした。途端に颯太が呻き、言葉尻が消える。何度か往復して擦り上げると、あっという間に膨れ上がり先端から液体が漏れ始める。

「未羽……っ」
「ご、ごめん、怒んないで」

 顔を歪ませて息を荒くする颯太の姿に、釘付けになる。気持ちいいのかな。私が、気持ちよくしてあげられてるのかな。

「痛くない? 変じゃない?」
「ん……」

 声を殺したような息が漏れ、颯太の手が私に伸びた。押し離されると思ったその手は、私の頬に触れ、耳の後ろを撫で、髪を優しく梳いていく。

「気持ち良すぎて、やばい」

 そんな顔で、そんなふうに触れられながら言われたら、我慢ができなくなってしまう。諦めなければと何度も捨てようとした感情が、溢れてきて止められない。好きだよ、颯太。ずっと一番近くにいたのに、どうして私じゃなかったの。

 谷間を出入りする先端に口を寄せ、舌先で触れた。ぬるりと絡みつく液体が唾液と混じり、両胸がべとべとに濡れていく。

「は……っ、未羽、もう」

 ぐっと肩を押され、力に負けて身体が離れた。そうされることは何となく予想していたから、すぐに立ち上がってソファに膝を付いた。

 驚いて見上げてくる視線をよそに、跨がってそのまま腰を落とす。ショーツのクラッチを無理矢理ずらし、そそり立った先端を膣口に当てた。ずぶりと埋まる感覚に、心の奥底が震える。

「い……っ! たあぁ……っ」
「バカ、何やってんだ……!」
「うぅ、なんで……」

 激痛が襲い、思わず途中で動きを止めてしまった。なんでこんな痛いの、全然入る気がしない。今まで何度か挿入したことはあったし、苦労したのは最初の一回だけでその後は全然平気だったのに。

「痛いよぉ」
「当たり前だろ、一回抜けって!」
「やだ、やだよ、お願い。これで最後にするから、お願い、颯太」

 お願い、と繰り返す私は、まるで縋っているように見えたかもしれない。困惑した顔で颯太が私を見つめ、黙ってしまった。

 ふっと、身体が持ち上がったかと思えば、視界がぐるりと変わった。浮き上がる感覚に驚いている間に目線が高くなり、完全に担ぎ上げられていることに気づいた。

「へ……、う、うそっ」
「あー、くそ重い……」

 背中を思い切り叩くも、微動だにせずに歩き出す。落ちそうで怖くて動けずにいると、そのまま寝室に入ってベッドの上に降ろされた。その拍子にショーツを脱がされ、あっという間に全裸になる。端に座り、呆ける私の前に颯太がしゃがみ込んだ。

「足、広げて」

 少し躊躇い、おずおずと開くと颯太の身体が足の間に入ってくる。先ほどの私と同じように股の間へ顔を寄せてきたかと思えば、そこをベロリと舐められた。

「ひ……っ!」

 驚いたのと妙な感触とで、悲鳴のような声が出てしまった。颯太が私の両腿を押さえ、中心に遠慮無く舌を這わせてくる。

「う……、そんな、とこ……舐めないでよぉ」
「お前がそれ言うのか」

 たしかに。言い返すこともできず、ただ黙って受け入れるしかない。こうして自分がやられてみると、想像以上に恥ずかしく、それを掻き消す勢いで感触が生々しく伝わってくる。柔く焦らすような動きと別に、指先が前方の敏感な場所をぐいぐいと押してきてつい声が漏れてしまう。

「ん、ふ……ぅ」

 もどかしい心地よさが、低い位置から上り詰めてきて息が上がる。その頭を見つめていると、不意に見上げてくるものだから瞬時に目を逸らしてしまった。次の瞬間、痺れるような快楽が背筋を駆け上がる。

「ひあぁっ!」

 颯太の手が前方を引っ張るように押さえている。頭で隠れて見えないけれど、クリの皮を捲られ直接触られていることは強烈な感覚ですぐに分かった。

「はぅっ、それ、やめ……っ」

 頭を押し返しても離れてくれず、容赦なく続けられる愛撫に身体が一気に熱くなっていく。開いた秘部へ舌を埋め、入口を擦っては舌先を出し入れしてくる。じゅるじゅると吸い付く水音が聞こえ、濡れてきているのが嫌でも伝わる。

「んぁっ、あぁっ、あう、ぅ、んんっ」

 快楽に耐えられずに足が動いてしまい、颯太が押さえるように太腿に手を回して身を乗り出してきた。引き剥がそうとすればするほど吸い付かれ、身体が後ろへ倒れていく。

 クリから手が離れ、解放されたかと思えば、今度は口に含んで思い切り吸い付かれた。隙間無く粘膜が密着し、舌の表面が蠢くように這う。

「ああぁっ! あっあっ、やっ、ぁんっ!」

 指先は膣内へ入れられ、そこを広げるようにめちゃくちゃに動かされている。時折中を擦り上げ、掻き乱すように出入りを繰り返す。ぐちゅり、じゅぷりと響くいやらしい音を聞いていられず、顔を背けて目を閉じた。

「そ、たぁっ、も……っ、あぁっ! やめ、てっ」

 私の言葉など聞く耳を持たず、責める動きがいっこうに止まらない。二カ所から同時に絶えず快楽を与え続けられ、頭がおかしくなりそうだ。これ以上されたらイク。そう思った途端に限界が押し寄せ、ぞわりと快感が走ってきた。

「あぁっ! だめっ、イッちゃ……っ、あぁんっ!」

 絶頂が一気に這い上がり、我慢する余裕もなくビクリと身体が震えた。背筋が痺れる心地よさに天井を仰ぎ、徐々に身体から力が抜けていく。

「……すげ、とろとろ」

 颯太がようやく離れ、濡れた口元を拭いながら言った。

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