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第3章 スケジュール、埋まってます編

027 暇なんですよ

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「いまから、放課後の班長会議を始める。礼」

 担任の号令で、放課後の班長会議が始まった。

 今この3-Aにいるのは、亮平を含む各般の班長24人と、担任だ。亮平は、班長会議は各学級でやるものだと思っていたので、全員ですると聞いた時は少し驚いた。まず学級で役割だけを決めてから分かれると思っていたのだ。

「では、役割を説明する。それぞれ点呼かお礼の言葉などを言ってもらう。一人一つは絶対に当たるようになっているからな」

 当然と言えば当然なのだが、役割が何もない人は居なかった。ほんの僅かでも期待していただけに、亮平は少し残念に思った。

 点呼かお礼の言葉かの二択なら、当然点呼の方がいい。ほぼ全員がそう思ったのか、点呼に希望が集中した。

 あまりに点呼に希望が集中したため、あみだくじで決めることになった。もちろん、言葉を言う方を選んだ人は確定だ。

 亮平を含め、全員が名前を書くと、あみだくじの結果が発表される。その中に、亮平の名前があった。

(これで、普通は終わると思うんだけどなぁ)

 言葉を言う人は言う言葉を考えなければいけないのでともかく、点呼の役割の人はもうこれ以上ここにいる必要がないだろう。そんな甘い考えはすぐに粉砕されることになる。

「当日に休みの人が出る可能性はあるから、セリフは全員で考えてもらうぞ」

(全員でかよ!)

 そんなもの欠席が出たときに考えればいいと思ってしまう。

 お礼の言葉や代生徒代表の言葉など、言わなければいけない場面は何場面もある。そして全員で考えるので、まとめるのにも時間がかかる。一個言う言葉を決めるだけでも十分ほどかかった。

(一個決めるのに10分かかったってことは……)

 セリフは全部で20個考えないといえないので、かかる時間は200分=三時間二十分。実際はもっと短くなるのだろうが、それでも二時間半はかかりそうだ。

「効率悪くないですか?」

 誰かが担任に質問する。その言葉は、まさにこの場にいる全員が思っているであろう疑問だ。

 一人一人で決めるのなら、長くても十分ほどで終わるはず。

「そうだな。なら、セリフは一人で考えてもらうことにしよう」

 担任はあっさりと認めた。担任はこんな性格では無かったはずなのだが。どこで変わったのだろう。

 しかし、これで点呼は帰れる……。そう亮平を含む点呼の役割の人が考えるのは想定内だったらしく、すぐに釘を刺された。

「点呼の人は、セリフを考えている人に『一緒に考えて』と言われたときに手伝ってくれ。あと、全員が終わるまでは帰らないように」

 担任が『帰らないように』を強調したのは、間違っても下校させないためだろう。

(暇だなー)

 その思考は、すぐに中断されることになるのだが。
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