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第2章 ゴールデンウィーク

#004 いるはずのない女子

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「やっぱり人多いね。ここ」

 ショッピングモールの中に入ってすぐ、亮平はそう思わずつぶやいていた。

「そりゃそうに決まってらだべ! こごら辺はあんまりこったな大型な店はねぁーがらねー」

 こんな大きいショッピングモールは亮平のところにもほとんどない。ゴールデンウィークで帰省している人が増えていることを考えれば、人が多くなるのは当然だろう。

「私は買いでものがあるがら買いに行ぐげど?亮平はどうするの?」

 ついていっても別にいいのだろうが、それでは暇そうだ。

「じゃ、別のところを見てくる!」
「そんじゃ、集合は入口付近どいうごどで!」

 姉貴が売場の中に入っていった。

 別に亮平には買いたいものもお金もないので、適当にゲームソフト売場でソフトを見ておくことにした。

(このゲーム、もしかして新作出たのか!?今度、買ってもらおう)

 意外と興味を持つソフトが多くあり、それを見ているうちにだいぶん時間が過ぎていた。

(ヤバ!姉貴を待たせてるかもしれない!)

 もともと何の用事もない亮平が待たせるのはマズい。亮平は急いで一階に向かおうとする。

 だが、エレベーターは人でいっぱいなので、時間がかかりそうだ。かといって階段だとかなり遅くなる。仕方がないので、階段を駆け降りることにした。

(頼むから、姉貴が長い時間待ってたなんてことにはなってませんように)

 二階から一階に下るぐらいならあまり疲れない亮平だが、六階から一階まで駆け降りるのは辛い。息が上がる。

 一階につくと、早速入口の方を見る。人がごった返しているため見えにくいが、とりあえず姉貴はまだ来ていない。

(ひとまずセーフ!)

 その時、亮平の視線に一人の女子が入った。その女子の髪型といい、後ろ姿といい、亮平が知っている一人の女子に酷似していた。

(澪? いやいや)

 ここは近所の店とは違う。ここに澪がいることはありえない。

 話しかけて確かめたいとも思ったが、ほぼ確実に他人に違いない。確かめる勇気は、亮平にはなかった。

「亮平! 待だせだ?」

 姉貴の買い物は終わったらしい。

「いや、さっき来たとこ」
「そんじゃ良がった。私、亮平が暇だがらずっと待ってらんでねぁーがど思って……」
「ところで、何を買ったの?」
「んーどねえ。漫画の最新刊」

 姉貴が見せたのは、最近テレビで話題になっている漫画だった。

「近所の本屋だど全部売り切れでだがら、大ぎいどごなら売ってらだべど思って」
「で、その予想が大当たりしたと」
「その通り!」

 姉貴は上機嫌だ。

(にしても、あの女子、澪だったのかなあ? 多分違うと思うけど、帰ったら聞いてみるか)

 亮平はしばらく、入口付近で見かけた女子のことが頭から離れなかった。
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