主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!

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第1章 亮平回想編

016 打開するために

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「か、勝てないってそういうことですか?」

 亮平達のうちの一人が発言したであろうその疑問は、全員が疑問に思ったことだった。

「そのまんまの意味だよ。君たちは実戦での雰囲気を知らない、でも俺らは知っている。ただそれだけの違いさ」

 亮平達は、相手はただ適当に殴っているものだと思っていたが、相手の方が純粋に実力があるという可能性は考えていなかった。どこかで、「相手は学年と物量に任せているだけだ」と油断していたのかもしれない。

「ところで、他の六年の人は全員『交流タイム』に賛成なんですか?」

 三岸さんがまたもっともな疑問をぶつける。亮平も、横瀬さんの兄貴以外に「交流タイム」に反対だと思っている六年はいないのか、すこし気になっていた。

「ああ、いる。ほんの一部だけどな。でも、大部分の六年は賛成だし、もし『反対』なんて言おうものならそれこそ物量で無理やりもみ消される」

 場の空気が再び重くなった。六年にも少しは「交流タイム」に反対の人がいるのは横瀬さんとその兄貴を除く全員がほっとした。

 だが、それでも状況はあまり変わらない。現状だと、その意見はもみ消されてしまっている。

「ちなみに俺も、夏鈴がいなかったら意見は賛成だったかもしれない。要するに、被害を受ける人がいるかいないかで人の態度は大きく変わるんだよ。俺も、そんな自分が恥ずかしい」

 大事な人が被害に遭うかどうか、それで人の態度が決まる。自分勝手だとは思うが、亮平も自分が何かをすることで友佳がなにかに巻き込まれるか巻き込まれないかどっちになってほしいかを考えると、当然『友佳を巻き込まない方』を選ぶ。横瀬さんの兄貴も、きっと今亮平が考えている事と同じ気持ちだったのだろう。

「とにかく、練習とやらを見せてくれないかな? アドバイスできる事があったらするよ」

「「ありがとうございます!」」

 話題がずれていたが、亮平達は元々攻撃練習をしていたのだ。亮平達は、練習に戻る。

「バカ正直に腹を狙っても防がれる。だから、頭にフェイントを入れるとか、足で飛び蹴りするとか、とにかく力で突破するか、相手の防御を腹やみぞおちから誘導するんだ」

「相手は動くんだぞ! そこを考えろ!」

 部屋の中に、横瀬さんの兄貴の声が飛ぶ。

 この練習は、夕方になって横瀬さんの両親が部屋に上がってくるまで続いた。






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 横瀬さんの兄貴がアドバイスしてくれる事もあって、亮平達の動きは最初よりかはよくなった。

「君らはだいぶん動きがよくなった。でも、六年にはまだまだだ。だから、絶対に六年とは戦わないように」
「分かりました」

 横瀬さんの兄貴が注意事項を言った後、解散になった。

 亮平も動きが良くなったことは実感している。だが、横瀬の兄貴は細川と同じ学年で、まじかで強さが分かっている。その兄貴が『やめておけ』というぐらいだから、六年の実力はもっと上なのだろう。

(はあ。いつまで六年に殴られ続けないといけないんだ?)

 亮平は、また明日から始まる学校に、おびえていた。でも、その気持ちに隠されて今は見えない裏側には、

(絶対にこの状況を変えて見せる)

 といった覚悟の気持ちがあった。
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