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#4. 夫不在の時間

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 私は中学2年生の娘と小学5年生の息子を育てながら、百貨店内のレストランでパートしている。今日は9時から14時までのシフトだったけれど、男性店長に
「石本さん、お時間です。あがってください」
と声をかけられて退勤した。夫はカナダで単身赴任中で、娘は部活に行っていて、息子は友達の家に遊びに行っているので、家には誰もいない。つまり私1人の時間となる。着替えながら「帰宅後は何をしようか?」と考えていると、隣で着替えていた大学生くらいの女性がペンを落としたことに気づいた。
「すみません、これ落としましたよ」
私は彼女に声をかけ、ペンを渡す。振り返った彼女は泣いているように見えたので、仕事先もしくはプライベートで何かあったのだろう。
「大丈夫ですか?」
私がそう問いかけると、彼女は「あ、すみません、ありがとうございます」と私からペンを受け取った。それから慌てた様子で立ち去っていった。誰かに泣いているところを見られたくなくて、恥ずかしかったのもあったのだろうと思う。
 帰宅後は、お菓子を食べながらiPadで映画を観る。そうこうしているうちに息子が帰ってきて、「母ちゃんおやつは?」と言ってきた。私は息子にプリンを出す。プリンを食べて満足した息子は、宿題をしに部屋に入っていく。
 夕方になり、娘が部活を終えて帰ってきた。これで全員揃ったので夕食の時間とする。息子は「今日律くん家でゲームしたけど律くんに負けた~」、娘は「部活で横山の機嫌が悪くて、マジ疲れた~」と今日の出来事をそれぞれ共有してくれた。横山とは娘の部活の顧問の先生のことだ。夫は不在だけれど、3人で話しながらご飯を食べる時間は幸せだった。
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