花束のような日々

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　「俺もダブルスクールとゼミで忙しくしてるから、一昨日の夜みたいに急に泊めてって言ってくるのはやめてほしい。泊めてもらいたいときは事前に言って。お前は優しいから急に泊めてって言われたとき泊めてあげるんだろうけど、俺は1人の時間も大事にしたいから」
悠斗がそう言うと、彼女が電話口で号泣している声が聞こえてくる。電車の到着音、出発音、駅員のアナウンスの声も聞こえてくるので、駅にいるのだろう。
　バイト先の男の先輩の家に泊まったことで彼女を咎めたときもそうだが、彼女の癖ーー注意されると泣くーーは変わっていなかった。こんな状況でテーマパークに行っても楽しめないことは明らかなので、テーマパークデートは延期することになる。それどころか、悠斗は彼女と別れることすら視野に入れていた。

　赤池結乃は昨年、3歳上の姉を亡くした。死因は交通事故。飲酒運転のひき逃げにより、28歳の若さで姉は亡くなったのだ。姉が2歳のときに父親の仕事の都合でオーストラリアのメルボルンに駐在することになり、姉と結乃はメルボルンで幼少期を過ごした。