5 / 8
5
しおりを挟む
その上、誘ってきた相手とも連絡がとれなくなったらしい。いよいよ借金を返せなくなり、「金返せないならサラ金で借りて来い!」とヤクザが家に押しかけてくるようになったという。友人は単発のアルバイトで借金返済していたけれど、どんどん額が膨れ上がり消費者金融にも手を出してしまった。お金だけかすめ取られて借金のみが残った状態で、困り果てて航に頼ったのだ。そこで航が「俺も一緒に返済するから」と申し出たのが、航が葵唯から離れたきっかけだという。
優志は最初は航について「なんて自分勝手なクソ男だ」という印象を抱いていたけれど、葵唯に借金を負わせたくないがゆえに離れて行ったのだという真実を知り、悪いひとではないのかもしれないと思った。その夜、葵唯と優志は手を繋いで眠る。
*
ある日、優志は退勤後に葵唯を迎えに行く。すると葵唯と若い男が言い争っているような声がした。
「最悪……。なんで来るの? もう話すことはないって言ったよね?」
と言う葵唯に、男はこう返す。
「まあまあ、冷たいこと言うなよ。俺ら同期で一緒にBBQとかした仲じゃないか」
優志は会話の内容から、男が葵唯に一方的に想いを寄せている状態だと察した。
「とにかくもう話すことはないので、お帰りください」
葵唯が強く拒絶すると、男は葵唯に殴りかかろうとする。優志はすかさず間に入って止めに入った。
「はい、そこまで。威力業務妨害罪で通報します」
男が「なっ……」と怒りを滲ませると、優志は
「人の彼女に手え出そうとしてんじゃねえよ、不愉快です。これ以上葵唯に関わらないでください」
と怒りをこらえながら返す。
「他人のくせに邪魔しやがって、どいつもこいつも……!」
男は捨て台詞を吐き、その場から立ち去った。
「……大丈夫だった?」
2人きりになったタイミングで優志が訊くと、葵唯は頷く。
一緒に歩いて帰っている時、優志は葵唯からあの男は会社員時代の元同期で一方的に好意を寄せられていた相手(何度断ってもしつこかったらしい)だと教えてもらった。寺井隆というその男は同僚の財布から1万円札をちょろまかして会社を解雇され、葵唯は寺井と離れられて安心していたそう。しかしどこからか葵唯が起業したことを聞きつけ、キッチンカーに押しかけてきたらしい。寺井が押しかけてきたのは今回が初めてだったけれど、優志は
「葵唯の身の危険もあるし、次あいつが来たら警察に通報した方がいいよ」
と葵唯にアドバイスした。
優志は最初は航について「なんて自分勝手なクソ男だ」という印象を抱いていたけれど、葵唯に借金を負わせたくないがゆえに離れて行ったのだという真実を知り、悪いひとではないのかもしれないと思った。その夜、葵唯と優志は手を繋いで眠る。
*
ある日、優志は退勤後に葵唯を迎えに行く。すると葵唯と若い男が言い争っているような声がした。
「最悪……。なんで来るの? もう話すことはないって言ったよね?」
と言う葵唯に、男はこう返す。
「まあまあ、冷たいこと言うなよ。俺ら同期で一緒にBBQとかした仲じゃないか」
優志は会話の内容から、男が葵唯に一方的に想いを寄せている状態だと察した。
「とにかくもう話すことはないので、お帰りください」
葵唯が強く拒絶すると、男は葵唯に殴りかかろうとする。優志はすかさず間に入って止めに入った。
「はい、そこまで。威力業務妨害罪で通報します」
男が「なっ……」と怒りを滲ませると、優志は
「人の彼女に手え出そうとしてんじゃねえよ、不愉快です。これ以上葵唯に関わらないでください」
と怒りをこらえながら返す。
「他人のくせに邪魔しやがって、どいつもこいつも……!」
男は捨て台詞を吐き、その場から立ち去った。
「……大丈夫だった?」
2人きりになったタイミングで優志が訊くと、葵唯は頷く。
一緒に歩いて帰っている時、優志は葵唯からあの男は会社員時代の元同期で一方的に好意を寄せられていた相手(何度断ってもしつこかったらしい)だと教えてもらった。寺井隆というその男は同僚の財布から1万円札をちょろまかして会社を解雇され、葵唯は寺井と離れられて安心していたそう。しかしどこからか葵唯が起業したことを聞きつけ、キッチンカーに押しかけてきたらしい。寺井が押しかけてきたのは今回が初めてだったけれど、優志は
「葵唯の身の危険もあるし、次あいつが来たら警察に通報した方がいいよ」
と葵唯にアドバイスした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる