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その上、誘ってきた相手とも連絡がとれなくなったらしい。いよいよ借金を返せなくなり、「金返せないならサラ金で借りて来い!」とヤクザが家に押しかけてくるようになったという。友人は単発のアルバイトで借金返済していたけれど、どんどん額が膨れ上がり消費者金融にも手を出してしまった。お金だけかすめ取られて借金のみが残った状態で、困り果てて航に頼ったのだ。そこで航が「俺も一緒に返済するから」と申し出たのが、航が葵唯から離れたきっかけだという。
優志は最初は航について「なんて自分勝手なクソ男だ」という印象を抱いていたけれど、葵唯に借金を負わせたくないがゆえに離れて行ったのだという真実を知り、悪いひとではないのかもしれないと思った。その夜、葵唯と優志は手を繋いで眠る。
*
ある日、優志は退勤後に葵唯を迎えに行く。すると葵唯と若い男が言い争っているような声がした。
「最悪……。なんで来るの? もう話すことはないって言ったよね?」
と言う葵唯に、男はこう返す。
「まあまあ、冷たいこと言うなよ。俺ら同期で一緒にBBQとかした仲じゃないか」
優志は会話の内容から、男が葵唯に一方的に想いを寄せている状態だと察した。
「とにかくもう話すことはないので、お帰りください」
葵唯が強く拒絶すると、男は葵唯に殴りかかろうとする。優志はすかさず間に入って止めに入った。
「はい、そこまで。威力業務妨害罪で通報します」
男が「なっ……」と怒りを滲ませると、優志は
「人の彼女に手え出そうとしてんじゃねえよ、不愉快です。これ以上葵唯に関わらないでください」
と怒りをこらえながら返す。
「他人のくせに邪魔しやがって、どいつもこいつも……!」
男は捨て台詞を吐き、その場から立ち去った。
「……大丈夫だった?」
2人きりになったタイミングで優志が訊くと、葵唯は頷く。
一緒に歩いて帰っている時、優志は葵唯からあの男は会社員時代の元同期で一方的に好意を寄せられていた相手(何度断ってもしつこかったらしい)だと教えてもらった。寺井隆というその男は同僚の財布から1万円札をちょろまかして会社を解雇され、葵唯は寺井と離れられて安心していたそう。しかしどこからか葵唯が起業したことを聞きつけ、キッチンカーに押しかけてきたらしい。寺井が押しかけてきたのは今回が初めてだったけれど、優志は
「葵唯の身の危険もあるし、次あいつが来たら警察に通報した方がいいよ」
と葵唯にアドバイスした。
優志は最初は航について「なんて自分勝手なクソ男だ」という印象を抱いていたけれど、葵唯に借金を負わせたくないがゆえに離れて行ったのだという真実を知り、悪いひとではないのかもしれないと思った。その夜、葵唯と優志は手を繋いで眠る。
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ある日、優志は退勤後に葵唯を迎えに行く。すると葵唯と若い男が言い争っているような声がした。
「最悪……。なんで来るの? もう話すことはないって言ったよね?」
と言う葵唯に、男はこう返す。
「まあまあ、冷たいこと言うなよ。俺ら同期で一緒にBBQとかした仲じゃないか」
優志は会話の内容から、男が葵唯に一方的に想いを寄せている状態だと察した。
「とにかくもう話すことはないので、お帰りください」
葵唯が強く拒絶すると、男は葵唯に殴りかかろうとする。優志はすかさず間に入って止めに入った。
「はい、そこまで。威力業務妨害罪で通報します」
男が「なっ……」と怒りを滲ませると、優志は
「人の彼女に手え出そうとしてんじゃねえよ、不愉快です。これ以上葵唯に関わらないでください」
と怒りをこらえながら返す。
「他人のくせに邪魔しやがって、どいつもこいつも……!」
男は捨て台詞を吐き、その場から立ち去った。
「……大丈夫だった?」
2人きりになったタイミングで優志が訊くと、葵唯は頷く。
一緒に歩いて帰っている時、優志は葵唯からあの男は会社員時代の元同期で一方的に好意を寄せられていた相手(何度断ってもしつこかったらしい)だと教えてもらった。寺井隆というその男は同僚の財布から1万円札をちょろまかして会社を解雇され、葵唯は寺井と離れられて安心していたそう。しかしどこからか葵唯が起業したことを聞きつけ、キッチンカーに押しかけてきたらしい。寺井が押しかけてきたのは今回が初めてだったけれど、優志は
「葵唯の身の危険もあるし、次あいつが来たら警察に通報した方がいいよ」
と葵唯にアドバイスした。
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