1 / 7
1
しおりを挟む
僕は高校に入学してから2年間で16回告白された。その都度「ごめん、好きな人がいる」と断ってきたのだけれど、好きな人というのは同じ文芸部の1年生の後輩の巣山しま子だ。小柄で可愛らしい見た目のしま子ちゃんは男子からの人気が高く、僕なんかが付き合える相手ではないと思っていた。それで振られても良いから気持ちを伝えたいと考え、部活終わりにしま子ちゃんを呼ぶ。
「しま子ちゃん、話があるんだ」
僕がそう言うと、しま子ちゃんは「話ってなんですか?」と不思議そうな顔をしている。部活が終わったので、部室には今僕と彼女しかいない。これは絶好のタイミングだと思い、話を切り出した。
「ずっとしま子ちゃんのことが好きだったんだ……。僕で良ければ付き合ってほしい」
僕がそう告白すると、しま子ちゃんは
「私も坂巻先輩のことが好きだったんです。私で良ければよろしくお願いします」
と言ってくれたのだ。こうして僕としま子ちゃんは恋人同士になる。
付き合い始めてからは、部活帰りに一緒に帰ったりショッピングモールでデートしたりしていた。高校生なのでお金のかかるようなデートはできないけれど、僕たちは誰もが認める仲良しカップルだ。「お前ら仲良いのな」と冷やかされたこともあるくらいだった。しかし、付き合って10日後に僕たちの関係にひびが入ったのだ。
「私、中学生時代に同級生の男子にストーカーされたことがトラウマになってるんです。レイプしてやるって言われて、机に無理やり押し倒されたこともありました。坂巻先輩と付き合ってトラウマがフラッシュバックして、もうこれ以上付き合い続けるのは難しいです……。ごめんなさい」
しま子ちゃんからLINEが来たことで、僕たちの関係はあっけなく終わる。僕への好意はあるけれど、しま子ちゃんは中学生時代のトラウマで誰かと付き合うのが怖いと言っていた。
「一緒にトラウマを乗り越えよう。俺が守るから」
「ずっと待ってるから」
と送ったけれど、しま子ちゃんの心に僕の言葉は響かなかったのだ。
しま子ちゃんと別れて以来、僕は学校に来るのが辛いと思うようになった。文芸部では僕たちが別れたことはすでに知れ渡っており、興味本位で
「しま子ちゃんと別れたんだって? 何があったの?」
「あんなに仲良かったのになんで別れたの?」
と詮索されることが増えた。その都度僕は適当にのらりくらりと交わしたけれど。
お互いに好きでいるのに付き合うことはもうできない。別れてもなお、同じ部活なのでしま子ちゃんを避けることはできない。文芸部にはカップルが何組かいるのに、どうして僕たちはうまくいかなかったのだろう。そう思うと、唯一の息抜きだった部活に行くことも苦痛だ。小学校教員になりたくて国立のS教育大学を目指しているけれど、なかなか勉強に集中できなかった。
「しま子ちゃん、話があるんだ」
僕がそう言うと、しま子ちゃんは「話ってなんですか?」と不思議そうな顔をしている。部活が終わったので、部室には今僕と彼女しかいない。これは絶好のタイミングだと思い、話を切り出した。
「ずっとしま子ちゃんのことが好きだったんだ……。僕で良ければ付き合ってほしい」
僕がそう告白すると、しま子ちゃんは
「私も坂巻先輩のことが好きだったんです。私で良ければよろしくお願いします」
と言ってくれたのだ。こうして僕としま子ちゃんは恋人同士になる。
付き合い始めてからは、部活帰りに一緒に帰ったりショッピングモールでデートしたりしていた。高校生なのでお金のかかるようなデートはできないけれど、僕たちは誰もが認める仲良しカップルだ。「お前ら仲良いのな」と冷やかされたこともあるくらいだった。しかし、付き合って10日後に僕たちの関係にひびが入ったのだ。
「私、中学生時代に同級生の男子にストーカーされたことがトラウマになってるんです。レイプしてやるって言われて、机に無理やり押し倒されたこともありました。坂巻先輩と付き合ってトラウマがフラッシュバックして、もうこれ以上付き合い続けるのは難しいです……。ごめんなさい」
しま子ちゃんからLINEが来たことで、僕たちの関係はあっけなく終わる。僕への好意はあるけれど、しま子ちゃんは中学生時代のトラウマで誰かと付き合うのが怖いと言っていた。
「一緒にトラウマを乗り越えよう。俺が守るから」
「ずっと待ってるから」
と送ったけれど、しま子ちゃんの心に僕の言葉は響かなかったのだ。
しま子ちゃんと別れて以来、僕は学校に来るのが辛いと思うようになった。文芸部では僕たちが別れたことはすでに知れ渡っており、興味本位で
「しま子ちゃんと別れたんだって? 何があったの?」
「あんなに仲良かったのになんで別れたの?」
と詮索されることが増えた。その都度僕は適当にのらりくらりと交わしたけれど。
お互いに好きでいるのに付き合うことはもうできない。別れてもなお、同じ部活なのでしま子ちゃんを避けることはできない。文芸部にはカップルが何組かいるのに、どうして僕たちはうまくいかなかったのだろう。そう思うと、唯一の息抜きだった部活に行くことも苦痛だ。小学校教員になりたくて国立のS教育大学を目指しているけれど、なかなか勉強に集中できなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
【フリー台本】二人向け(ヤンデレ多め)
しゃどやま
恋愛
二人向けのフリー台本を集めたコーナーです。男女性転換や性別改変、アドリブはご自由に。
別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる