お前以外はダメなんだ

相沢 朋美

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 それから晶匡とネイトは平日はバスに乗って高校へ行き、ネイトと一緒に授業を受けた。英語での授業だったので4割程度しか理解できなかったものの、それでも楽しかったのだ。調理実習ではチョコレートマフィンを作ってみんなで食べる。ある男子生徒が晶匡に近寄り、「日本から来たんだって? 僕はアレックス。君は?」と声をかけた。晶匡が「日本から来た晶匡です。呼び方はアキでいいよ」と言うと、アレックスは「アキ、よろしくな」と握手を持ちかける。日本の高校と違って受ける授業ごとにメンバーも少し変わるので、晶匡は大学の授業を受けているような気分だった。
 時差ボケと気疲れもあり、晶匡は数学の授業中に気分が悪くなる。先生に「すみません、気分が悪いので保健室に行ってもいいですか?」と声をかけると、先生は「ああ、いいよ。大丈夫か? ネイト、アキを保健室に連れて行ってやってくれ」とネイトに指示を出した。
「ごめん、来て早々こんなことになっちゃって……」
晶匡がネイトに謝ると、ネイトは「大丈夫さ! 俺こそ気付けなくてごめん」と言う。保健室で晶匡はしばらく横になったけれど、体調が改善しない。
「今日はもう無理かも……。家に着いたら部屋で横になっていい?」
帰り道に晶匡がそう言うと、ネイトは「わかった。薬用意しようか? 母さんには俺から話しとくから」と言ってくれる。お言葉に甘え、晶匡は自身の部屋のベッドでしばらく横になって寝ていた。

 晶匡の体調はゆっくり休んだこともあって回復した。ホストマザーがミュージカルを見に行こうと誘い、全員でミュージカルを見に行くことになる。内容がよくわからなかった晶匡は、後半部分でうとうとしていた。それでもホストマザーは咎めないでいてくれたのだ。
 週末はショッピングセンターに行ったり、みんなでキャンプしたり、地下室で映画を観たりして過ごす。そうこうしているうちにお別れ会の日がやってきた。学校では晶匡たちのお別れ会が開かれ、それぞれのホストファミリーとの別れを惜しむ。普段は滅多に涙を見せないというネイトが涙目になっていた。晶匡もネイトの姿を見てもらい泣きしそうになる。
 お別れ会が終わり、晶匡たちは空港行きのバスに乗り込んだ。晶匡はバスの1番後ろの窓側の席に座っており、隣には誰もいない。それを良いことに晶匡はひっそりと涙を流す。が、ネイトやホストマザーたちとはフェイスブックやインスタグラムで繋がっているので寂しくはなかった。春休みの課題はある程度終わらせていたが、一部だけ手付かずになっていたので、晶匡は帰りの飛行機で宿題を済ませる。
 あっという間に日本に着き、空港では晶匡の両親が出迎えていた。隣には優香の両親もいる。あ、そうかこいつもカナダに行っていたんだった。晶匡は優香の存在を思い出す。それから、雪乃と友哉に春休みの語学研修の思い出を共有した。続きは明後日、学校で。そう締めくくってやりとりは終わる。

 新学期が始まり、晶匡は2年A組に進級する。担任は1年次と同じく尾崎先生だったので、晶匡は「また尾崎かよ」と心の中で悪態をついた。が、席は出席番号順だったので前に友哉がいて、斜め後ろに雪乃がいる。周辺のメンバーには恵まれていたので、晶匡としては嬉しかった。
 休み時間になり、晶匡・友哉・雪乃と優香の4人は晶匡の席に集まって語学研修の感想を共有する。雪乃と優香は小学校時代はあまり接点がなかったけれど、語学研修の説明会時によく話すようになり、そこから仲良くなったそう。
「小学校時代は一緒にいるイメージなかったのに、いつから杉本と仲良くなったんだ?」
晶匡がそう聞くと、雪乃は
「語学研修の説明会きっかけ。ね、優香?」
と優香に話を振った。優香は笑っている。
「だいたい小中学校の9年間一緒のクラスで、高校も3年間同じクラスで語学研修先も一緒とかマジで勘弁」
晶匡がそう言うと優香は、
「私だって好きで同じクラスとか同じ研修先にいるわけじゃないから。たまたまトロントに行きたいってなって、説明会に行ったら晶匡がいたってだけの話」
と怒り気味で言った。雪乃は「まあまあ2人とも、仲が良いのか知らないけど喧嘩しないの」となだめ、友哉も「お前らどんだけ腐れ縁なんだよ」と冗談を言う。
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