13 / 20
13
しおりを挟む
まずは田川さんからの指示通り、エーラーニングにてハラスメントに関する内容を受講する。この部署内で、パワハラ中の音声がSNSで拡散されて新入社員を休職に追いやった男というレッテルが僕に貼られているからだ。俺はパワハラなんて断じてしてないのに……! なんでこんなの受講しなきゃいけないんだ? 心の中でそう思いながら、何がハラスメントにあたり何が正当な注意かという内容をパソコンで読み進めた。やっぱり俺のしたことはパワハラじゃないじゃん、なんて考えながら。
エーラーニングを受講した後は、他部署から届いた書類をホッチキスで留めていく。自主退職待ちの社員が集まる部署なので和気藹々とした会話などなく、パチンパチンというホッチキスの音だけが虚しく響いた。毎日これが続くんだろうなと考えただけでも頭がおかしくなりそうだ。
11時30分になり、僕は1日の目標数分の書類を留め終えた。
「田川さん! 全部終わりました! 次は何をすれば……?」
田川さんに次の指示を仰ぐと、「じゃあ小野関さんは定時まで座って待っていてください」と言われる。周りが黙々と作業している中、僕だけボーっと待っているのも心許ない。かといってスマホをいじるわけにもいかない。
「じゃあ、前の部署で手伝えることないか聞いてきます!」
僕は引き継いだことについて遊佐さん、郁大、星野さんが困っていないか様子を見に行くことにした。僕が異動してから、遊佐さんは堀内チーフの横に座っている。どうやら少しだけ席替えしたらしい。遊佐さんに何か困っていることはないかと訊くと、今のところは大丈夫ですとのことだった。
星野さんはタバコ休憩に行っており、一時的に席を外している。郁大はお客さんに「もしもし、エスポワールひがし205号室の中井様の連絡先でお間違いないでしょうか。私、マンション管理会社ハーモニーハウジングの菅田口と申します。ご相談いただいていたエアコンの修理の件で、まだ業者から連絡がないとのことで申し訳ありません」と電話している最中だ。今は誰も困っていることはなさそうだと判断し、自席に戻ろうと歩き始めた時、郁大から呼び止められた。
「なあ翠、エスポワールひがし205の人からエアコン修理の進捗について聞かれてるけど、あれってどうなってる?」
「ちょっと待ってな。その件、親和ビル管理の木下さんとやりとりしてたと思う。……今部品取り寄せてて、届き次第またお客さんに連絡して日程調整するって。届くのが明日か明後日くらいになるって」
郁大に工事業者・親和ビル管理の木下さんとのやりとりの内容を伝える。
「ありがとう、お客さんにも言っとくわ。……ーー大変お待たせいたしました。エアコン修理の進捗状況について確認したところ、現在部品を取り寄せており明日か明後日くらいには届きそうとのことです。部品が届き次第また業者から日程調整の連絡があるかと思いますので、それまでお待ちいただけますでしょうか。ご迷惑をおかけしていますけれども、よろしくお願いいたします。では、失礼いたします」
郁大は僕にお礼を言い、電話の保留を解除してお客さんに状況を説明した。最初は少し温度感が高かったけれど、説明すると了承されたという。郁大の問題が解決したので、僕は自席に戻る。
エーラーニングを受講した後は、他部署から届いた書類をホッチキスで留めていく。自主退職待ちの社員が集まる部署なので和気藹々とした会話などなく、パチンパチンというホッチキスの音だけが虚しく響いた。毎日これが続くんだろうなと考えただけでも頭がおかしくなりそうだ。
11時30分になり、僕は1日の目標数分の書類を留め終えた。
「田川さん! 全部終わりました! 次は何をすれば……?」
田川さんに次の指示を仰ぐと、「じゃあ小野関さんは定時まで座って待っていてください」と言われる。周りが黙々と作業している中、僕だけボーっと待っているのも心許ない。かといってスマホをいじるわけにもいかない。
「じゃあ、前の部署で手伝えることないか聞いてきます!」
僕は引き継いだことについて遊佐さん、郁大、星野さんが困っていないか様子を見に行くことにした。僕が異動してから、遊佐さんは堀内チーフの横に座っている。どうやら少しだけ席替えしたらしい。遊佐さんに何か困っていることはないかと訊くと、今のところは大丈夫ですとのことだった。
星野さんはタバコ休憩に行っており、一時的に席を外している。郁大はお客さんに「もしもし、エスポワールひがし205号室の中井様の連絡先でお間違いないでしょうか。私、マンション管理会社ハーモニーハウジングの菅田口と申します。ご相談いただいていたエアコンの修理の件で、まだ業者から連絡がないとのことで申し訳ありません」と電話している最中だ。今は誰も困っていることはなさそうだと判断し、自席に戻ろうと歩き始めた時、郁大から呼び止められた。
「なあ翠、エスポワールひがし205の人からエアコン修理の進捗について聞かれてるけど、あれってどうなってる?」
「ちょっと待ってな。その件、親和ビル管理の木下さんとやりとりしてたと思う。……今部品取り寄せてて、届き次第またお客さんに連絡して日程調整するって。届くのが明日か明後日くらいになるって」
郁大に工事業者・親和ビル管理の木下さんとのやりとりの内容を伝える。
「ありがとう、お客さんにも言っとくわ。……ーー大変お待たせいたしました。エアコン修理の進捗状況について確認したところ、現在部品を取り寄せており明日か明後日くらいには届きそうとのことです。部品が届き次第また業者から日程調整の連絡があるかと思いますので、それまでお待ちいただけますでしょうか。ご迷惑をおかけしていますけれども、よろしくお願いいたします。では、失礼いたします」
郁大は僕にお礼を言い、電話の保留を解除してお客さんに状況を説明した。最初は少し温度感が高かったけれど、説明すると了承されたという。郁大の問題が解決したので、僕は自席に戻る。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる