Dear Dandelion,

響也

文字の大きさ
上 下
33 / 39

第33話 もう一人

しおりを挟む
 カイは、レオたちと別れた後、自分の耳と鼻を頼りにあの少女を探していた。ルーインの館はかなり燃えていたので、かなりの人だかりができていて探すのかは困難かに見えたが、大勢の人たちとは反対の方向に歩みを進めている人影が数人見えたのでそれを追うことにした。鼻を頼りに一番煙臭い人影を追うことにした。

「あれか?」

 その人影はマントを羽織りフードを深くかぶっている。すぐにでもとびかかって押さえつけようとしたが、ほかに気配を感じ思いとどまった。何やら話している。カイは耳をそばだてた。

「アイツ、コロセタカ?」

あの時邪魔された大男だとカイは思った。

「いいえ、おそらく殺せていないわ。くそっ。あんな火の中に飛び込んでくるやつがいるとは思いもしなかったわ。あたしも力を使いすぎていたからすぐには追えなかった。つぎよ。それまでに体力を回復させないと」

「ソウカ。ジャア、アジトニカエロウ」

そういうと二人は歩き出す。カイもばれないようにそのあとをつけていく。入り組んだ路地をどんどんと進んでいく。カイは屋根の上から二人を追っていく。

一方、レオのほうはというと....

病院にいた。クリスに付き添っているのだ。クリスの容態は安定しているが、ねむっているようだ。

「クリスの体調はどうだい?」

ルーインだ。

「ルーインさん!館のほうは大丈夫なんですか?」

「あらかた燃えてしまったよ。いまは騎士団にお世話になっているんだよ」

「そうだったんですね。」

「まあ、心配するな。私はもともと騎士だしな。しばらくはなんとかなる。ただ、使用人たちの働き口は探してやらんとな。なまけさせておくわけにもいくまい。彼らは優秀なものが多いからな」

「優しい領主様なんですね」

「当然のことだよ。お、そうだ。今日は君に聞きたいことがあってきたのだ」

「何ですか?」

「火事の時のことだ。クリスがこのような状態になったことからも察しはつくが、おそらく火をつけたものがいるのだろう?」

「ええ、いたみたいです。カイがそう言ってました」

「うむ、クリスなら万が一のことがない限りこんな状態になることはまずないはずだ」

「すごい信頼しているんですね」

「そうだな。それほどに強かった。クリスには秘密だが、わたしは憧れていたんだ。だから、相棒になれた時はすごくうれしかったんだ」

 ルーインは、クリスとの昔話を嬉しそうに話していた。町で悪さをしていたゴブリンたちの盗伐から王様に命令されてドラゴンを撃退した話まで、それはもうワクワクするような冒険の話を聞きレオの心も踊っていた。

「おっともうこんな時間か。長居してしまったね。私はそろそろかえるよ」

「そうなんですね。楽しいお話ありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ聞いてもらえてうれしかったよ。またいろいろ話してあげよう」

「はい! またぜひ」

 こうして、ルーインは病室を去った。レオはとても楽しい時間を過ごせたのでクリスには悪いと思いつつも心地よい浮遊感に包まれていた。が、あることに気が付く。

「これ、ルーインさんの忘れ物かな?」

 手帳が床に落ちていた。拾い上げると一枚の写真が手帳の隙間から落ちてきた。拾い上げるとそこに写っていたのは、広い庭でルーインとクリス、そしてもう一人女性が楽しそうに三人並んで写っていたのだ。おそらく女性だ。夕日のように赤い髪は長くのびていて、きれいなドレスを着ている。しかし、顔は黒く塗りつぶされていたのだった....。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...