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バッドエンドに踊る ~if end~
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青葉が監禁という手段を選ばなかったパターンのifストーリーです。
ずっと昔に書いて忘れていたのをふと思い出したので載せておきます。
好きになった理由なんてなかった。気がついたら好きだと、どうしようもなく好きだと思った。どうしても手に入れたい。そばにいて欲しいとただただ思った。
──たとえ、どんな手を使ったとしても。
***
今日は神楽坂舞子にとって散々な一日だった。そうと知らずやってきた一限の授業は休校、二限ではせっかくやった課題を忘れ、食べたかったランチは売り切れ、放課後になると雷雨に見舞われた。
教科書や紙類の入ったカバンを濡らさぬように抱え、自分のアパートへ走る。駅から近いことだけが利点のボロアパートは舞子のような貧乏学生が他にも住み着いていてあとはよくわからない人達が住んでいる。
びちゃびちゃの体を三和土にあげ、助からなかったカバンをほぼ地続きの畳に投げる。急いでシャワーを浴びたらバイトへ向かわなくてはならない。玄関すぐ横の洗面所に膝で乗り上げると何枚かタオルを取り紙類の救出に走る。クタッとした紙は力を入れると簡単に破けてしまいそうで、おっかなびっくり舞子は拭いていった。
めぼしいものを拭き終えるとくしゃみが出た。いけない、このままでは風邪を引くと舞子はシャワーを捻る。狭いユニットバスに湯気が立ち込める。そうしている間に着替えを持って来ると舞子はさっと湯を浴びて、いそいそとバイトへ向かう準備をする。
三年前、彼女の両親は飲酒運転の車に激突されそのまま亡くなった。幸い犯人はすぐに捕まりすでに求刑を終えている。周りに親戚はおらず当時高校生だった舞子は十六という若さで天涯孤独の身となった。
進学するつもりがなくなってしまった舞子を説得したのは当時の高校の担任で、厳しい道のりではあるが、勉学を修めておくのはきっと将来役に立つと勧められ奨学金で受験をすることにした。
元々できの良かった舞子は無事に公立の大学に入ることができたが、生活費に学費……その教科書代など馬鹿にならない金額を背負うことになる。それらは奨学金で賄われたが全てそういうわけにもいかないし、奨学金はいわば借金だ。いつかは返さなければならない。
そんな事情も合わせて舞子は日夜学業と勤労に従事する苦学生となったのだった。
担任が言っていた厳しさは正直まだ子供だった舞子の想像以上ではあったが、嫌ではなかった。体を酷使している自覚もあったが変に浮ついているよりよほど充実しているとさえ思った。
周りは生ぬるく親の脛を齧れるだけ齧ってやろうという気概のものが多く、バイトをしてまで大学に通う舞子はどうやら「苦労人」らしく同情や憐憫の視線をちょくちょく感じた。
確かに好きな食べ物も洋服も、必要最低限のものしか買えない。勉強をするためにバイトから帰って寝る間を惜しんで教科書を広げている。それの何がいけないというのか。実は心中で馬鹿にしているやつらを舞子は逆に馬鹿にしていた。
不幸は平等に訪れる。
そして自分の努力はいつかきっと報われる。
彼女はそう信じて毎日生きていた。
──ただまあ、心が折れそうな日というものもある。
舞子にとってその日はやはり最後まで厄日と言えた。
時給の上がる深夜の居酒屋は厄介な客も多い。基本は厨房で働いている舞子すらフロアに駆り出されあっちへこっちへのてんてこ舞いだった。そもそも接客を苦手としていた彼女はあまりの忙しさに目を回しいつもなら行さないようなミスをし、大したことではないそのミスに運悪く悪酔いして尊大になった客がひどいクレームをつけてきたのだ。
舞子はひたすら頭を下げたが溜飲の収まらないその客は挙げ句店長を呼び出しことごとく怒鳴り散らしたのだった。
それだけでもほとほと疲れた舞子だったが、それから上がりの時間になっても店長からの説教が続き、気がつけば真夜中。落ち込む暇もなく明日がやってきていた。
肩を落としトボトボと歩いていると舞子は懐にしまい込んでいるはずのものがないことに気がついた。
「あれっ、どうしようっ!」
焦燥とした声が真っ暗な夜道に響く。その慌てようは、見ていたものがいればただ事でないと思うほど逼迫したものだった。
「母さんの指輪……!」
彼女は懐に入っていたはずの母親の形見を探した。それはさして高価なものではない。シンプルなプラチナの台座に透明な石が小さく入った母の結婚指輪。事故で悲惨な死に体となった母親の遺体から見つかったものだ。父親のものはどこに飛んでいったのか、ついぞ見つからなかったそれ。
舞子にとっては両親を思う大事な品物だった。離れていることも辛く、毎日持ち歩いてはもういない両親を思うよすがにしていた。
そんな大事なものを失くすなんて。
舞子は自分がこの世で一番不幸で、一番惨めなんだと、ついに認めてしまいそうになった。
思ったら負けだとずっと強がっていた現実に負けそうになっていた。
いっそ両親のもとへ。ふっとそんな考えがよぎる。もう何も考えず楽になりたい。もういいんじゃないだろうか。ここまで頑張ってきたけれど、不幸は平等に訪れるが幸福は平等ではないのだと、認めてしまってもいいんじゃないだろうか。
再び降り出した雨が舞子を容赦なく濡らしていく。
頬を伝う水滴は空からのものなのかそれ以外か、舞子にはもはや判断できなかった。
「あの。」
心も体もぐちゃぐちゃになっている舞子に一つの声がかかる。真夜中にそれも雨の中突っ立っている女に声をかけてくるなんてと思ったが、口にはしない。ただ黙ったままぬぼっとその声の主の方に向いた。
「大丈夫ですか?」
ビニールの傘を差した二十代くらいの青年は心配そうに舞子を見つめている。ぱっと見はまともそうだった。少なくともよからぬ考えを持った不審者には見えなかった。
「ごめんなさい、大丈夫ではないですよね」
あからさまに尋常ではない様子の舞子に傘を差し出すと男は頭を掻いた。
「僕は青葉颯って言います」
急に自己紹介を始めた男は依然沈黙を続ける舞子の様子を見て困ったように笑う。
「いきなり話しかけてきて、なんだこいつって思われるのも無理ないですけど、ちょっとお尋ねしたいことがあって」
舞子は首を傾げた。一体なんだというのか。今の状態なら舞子の方がよっぽど不審者で近寄らない方がいい輩だ。悲観的な気持ちで舞子はそう自分をなじる。
「これ、貴女のではないですか?」
白く綺麗な手のひらに乗っている小さな銀の輪っか。まさか。舞子は目を見張る。慌ててすがりつくようにその手を両手で掴んだ。
「これ……!」
間違いようがなかった。母の指輪だ。舞子は確信を持って見つめる。裏側に刻印された日付もイニシャルも相違ない。冷たい手で男の手を掴んだままその顔を上げる。
男はへらりと笑う。
「さっき曲がり角であなたのコートからこれが落ちるのが見えて」
慌てて走ってきたんです。そしたら貴女が立ち尽くしていらしたので、少し声をかけても良いか戸惑ってしまいました。そんな言葉が舞子の耳を上滑りしていく。彼女の心にはただただ安堵だけが際限なく広がっていた。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ。そんなに大事なものだとは思いませんでしたが、見つけられて良かったです」
「あの、何かお礼を……」
「いえお気になさらず」
「見ての通り大したお礼はできないですが、本当に助かったんです。何かお礼させてくれないと眠れません」
柔和に笑う男の顔を見ながら舞子は縋るように申し出た。できることは少ないが心の底から感謝している気持ちをどうにか表現したいと募る舞子に男は笑い顔をほんの少し困惑しているように歪める。
「んんと、困ったな……。本当にそんなつもりじゃなかったんですけど、貴女がそこまで言うなら、ひとつだけ。良いですか?」
「はい、なんでもします」
──男の願いは舞子にとって意外なものだった。
「年頃の女の子が男に、それも初対面の相手に『なんでもする』なんて言うものじゃないよ」と、前置きとして忠告した男は黒のスマートフォンを懐から取り出す。
そうして舞子のスマホには青葉颯という名前のアドレスが増えているのだった。
これじゃお礼にならないと舞子がいうと「それなら今度食事に行こう」と誘われる。少ない預金を思い浮かべながら、「たくさんは出せませんがそれでもよければ」と伝えるが青葉は「女の子に出させる訳ないだろう?」と至極当たり前のように言った。
舞子はお礼にならないと思ったが青葉の「こんな君からしたらオジさんと出かけてくれるだけで有難いよ」という言葉に舞子は二の句が続かなかった。
青葉颯との邂逅は舞子にとってはひとつの起点となった。
大学と自宅、それからアルバイト先だけというまるで花のない生活に、一点落とされた色。歳上の男性と二人きりで出かけるなど彼女の今までの人生ではなかったことだ。
不思議な気持ちで待ち合わせ場所に向かう。こうして会うのも何度目になるだろうか。
あのとき近くのコンビニへ赴いていたという青葉は舞子の近隣に住んでいた。待ち合わせの場所も二人の最寄り駅にある噴水広場だ。
「ごめんね待ったかな?」
白っぽいベージュのジャケットを羽織りブラウンのネクタイを締めて現れた青葉はパッと見、舞子と同世代くらいにしか見えない。
それに加え改札を出てから駅前の噴水広場までの短い距離にも関わらず周囲の女性の目を引く容姿で、舞子はいつも戸惑いを覚える。
舞子の服装といえば所謂ファストファッションと呼ばれる流行りと安さを先行したプチプライスのものばかりだ。より好みできないとはいえ安っぽい格好で隣を歩くのは少々気が引ける。二人の明確な格差が見えるようだった。
「いいえ、今来たところです」
若く見える青葉は、それでも立派な社会人で来ている服もきっとそれなりにするものなのだろう。舞子には良し悪し程度しかわからなかったが、世間一般のサラリーマンが来ているスーツとの違いくらいはわかるつもりだった。この男はおそらく普通の会社員ではない。
「そう、じゃあ行こうか」
人をエスコートし慣れた腕が舞子を案内するように差し出される。それに軽く手を添えると二人は歩き始めた。
これはたぶんデートというやつだ。
舞子は今日行くお店の話をする青葉の整った横顔を見ながら思う。雨の日に窮地を救ってくれた恩人との。何をどう舞子を気に入ったのかは知らないが、青葉はそんなに日を置かずにこうして誘い出しては二人で出かける。
今日のようにご飯へ行くだけのときもあれば、お互いが休みの日に遊園地や水族館にも出かけたことだってある。これはきっとデートなのだ。舞子は自分の中のよくわからない感情を持て余しながら二人の行動にそう名を付けた。
「舞子ちゃん?」
いつしか青葉は舞子をそう呼ぶようになっていた。そんな呼び方にももう慣れた。はじめのころはなんだか妙に緊張して呼ばれるたびにドキドキしていた。ドキドキするのは今でもそう変わらないけれど。少しは慣れたはずだった。
「なんですか?」
「いや、なんだか浮かない顔だから気になって」
自分はそんな顔をしていただろうかと、頬に手をやるがもちろんわかるわけもない。
「……いいえ、なんでもないですよ」
「楽しくない?」
「そういうわけじゃないです」
「でも少しぼーっとしてた」
眉をハの字にして青葉は言う。舞子はときどきその観察眼に舌を巻く。この人はいつもすぐに変化に気づくなと。体調の変化はともかく少し切り過ぎた前髪にまでよく気がつき「可愛いね」と甘やかに褒めそやすのだ。
二人の関係、というものが脳裏をチラつく。
ずっと気になっているのだ。この妙な関係はどういうものでいつまで続くのか。舞子の答えは青葉の気分次第というものだった。青葉が望む限りこの関係は続く。しかしこの男が一度やめると言えばそれまでの関係なのだと。舞子には引き止める権利も理由も……魅力もない、彼女はそう結論付けていた。
駅近くにある大きなホテルに併設された夜景の綺麗なレストランは、眺めがいいのはもちろん食事も大変美味しかった。フレンチなど食べ慣れない舞子は四苦八苦しながらも普段は見ることもない素材を使った未知の料理を堪能したのだった。やはり青葉は只者ではない。だってこんな高級なレストランで小娘とディナーなど、普通はしない。もっとこのレストランに似合いの上品な女性と来る場所だろう。舞子は心中穏やかではなかった。
「美味しい?」
「はい、すごく」
「それなら良かった」
青葉は常に穏やかで紳士で大人だった。舞子を下に見るような振る舞いも言動もなく、一人前の、しかも大切な女性のように扱う。
年端の行かない舞子はそれだけでのぼせ上がりそうだった。そんな自分をいつも必死に諌めていた。こんなのはただの幻想。いつか終わる神の気まぐれなのだと。舞子はプリティーウーマンにはなれないし、青葉は足長おじさんではない。終焉は唐突に訪れるものだ。
「あのさ」
神妙な顔で話し出すその、なんとも言えない空気に舞子の背はピシャリと伸びた。
きた。これが。終わりの始まりだ。
ゴールドのリングにルビーが嵌められた指輪は、舞子の身の丈には到底合わない気がしたが付けていると不思議と馴染むもので。
「またそれを見てるの? そんなに気に入ってくれたなら贈った甲斐があるものだけど」
──今は僕だけを見てほしいな。
高さの上がった視点で夜景が見えるホテルの一室のベットで青葉は情事後の気怠さを残したまま少しふてくされたような顔をしている。
「……あの、ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃないんだ。ただこっちも見てほしいって心の狭い男のやきもちだよ」
おかしなことを言うものだ、舞子は心の中で呟く。まさか自分があげたものにも嫉妬しているのだろうか? そんな馬鹿な。
「私、青葉さんにお返ししたい」
「じゃあ青葉さんじゃなくて颯って呼んでくれる?」
「は、はやて、さん」
「ん。そのうち慣れていこうね」
「……はい」
舞子を見つめるその目は蕩けるように甘く甘く、細められる。舞子はこうしてひとつひとつダメにされていくのだと思う。そうしていつしかきっとこの男無しではいられなくなるのだ。それは遠くない未来に必ずやってくる。そんな気がした。
──舞子の恐れた終わりはやって来なかった。
「あのさ、そろそろ良いと思うんだ」
そう切り出した青葉に舞子は首を傾げる。
「どういう意味ですか?」
お礼から始まった日々を終わりにしようということか。
「もう一歩進んだ関係になりたいってことなんだけど、舞子ちゃんはいや?」
今以上に進むとなるとそれは恩人と恩返しするものを越えて友人になるということか、いやそれならいちいち了承など得たりはしない。……つまり、答えは一つしかない。
「男女のそれ、ってことですか」
「……うん」
なぜか恥ずかしそうにはにかむ男を可愛いと思いながら舞子は急な展開に動揺していた。見た目はあまり変わっていなかったが。
「どうして、私なんですか」
舞子には理由がわからなかった。青葉が望むものなど到底一つも持ち合わせていない女を選ぶ理由なんて。若さだろうか。それなら舞子でなくてもいい。
「もちろん好きだからだよ?」
それ以外に理由なんてあるの?と心底不思議そうな、いかにも自分の方が真っ当であると言いたげな顔で青葉は首を傾げる。
「いや、私なんて何も持ってないし、むしろ青葉さんに貰ってばかりなんですよ。それなのに……」
舞子にとって恋人という関係はそれなりに対等な関係ものだと思っていた。それは家庭環境しかり金銭面しかり年齢しかり。しかし二人の間には対等性と呼べるものは限りなくない。舞子ばかりが青葉に寄りかかった関係である。それは舞子の望んでいるものではなかった。
「もし、舞子ちゃんが嫌ならこのままでもいい。僕は恋人という肩書がほしいわけじゃないんだ。だけど、君がもし僕を好きで、でも立場とか周囲を気にして断るというなら僕は絶対それを認めない」
いつになく強い口調で舞子の考えを諌めるような青葉に舞子はぞくりとしたものを覚えた。
「お願い。逃げないで」
哀切を訴える目に、舞子は飲み込まれた。目は時に雄弁に語るといったのは誰だったか。青葉の目には舞子への気持ちが溢れ出るように見て取れた。いとしいと、この手をとってほしいと、そう望んでいるのがよくわかった。
それは舞子の願望だったのかもしれない。けれど、その手を取ったとき、青葉がこの世の中で一番しあわせだというような顔をしたのできっとそれが正解だったのだと舞子は思うことにした。
それからあれよあれよという間に、同じホテルに部屋を取っているという青葉に連れて行かれ、舞子は純潔の証を捧げたのだった。この上なく幸せな一夜だったと、記憶に刻まれるような濃密な時間だった。
好きになった理由なんてなかった。気がついたら好きだと、どうしようもなく好きだと思った。どうしても手に入れたい。そばにいて欲しいとただただ思った。
──たとえ、どんな手を使ったとしても。
「ああ、あのときほど君のあとをつけていて良かったと思うときはなかったよ」
安らかな顔で眠る最愛の人の髪を撫でる。じっくりと待ったかいがあった。
ずっと、ずっと欲しかったのだ。
でも出来る限り彼女に受け入れられる方法で近づかなければならなかった。
ストーカーでは恋人にはなれないのだ。
だから彼女が死んだ親の形見だというそれを落としたとき、千載一遇のチャンスだと思ったのだ。いや、彼女が独りになったときもそうは思っていたのだけど。結局彼女はここに至るまで独りでなんとかやってきていたから、男も見守るだけの歯がゆい日々を過ごす羽目になった。
何度強引に手に入れようと思ったことか。
しかしそうはならなくて良かったと改めて思う。一番ベストの状態で彼女のすべてを手に入れられた。これ以上どんな幸福があるだろうか!
男は恍惚とした、いっそ恐ろしいほどの美しい笑みを浮かべる。
「一緒にしあわせになろうね」
ようやく掴んだ宝物を大事に抱え、男はどろりと蜜を垂らしたような甘くて蕩けた瞳で笑った。
彼女にとっての真の幸せがどこにあるかなんて、男にはもはや関係なかった。
ずっと昔に書いて忘れていたのをふと思い出したので載せておきます。
好きになった理由なんてなかった。気がついたら好きだと、どうしようもなく好きだと思った。どうしても手に入れたい。そばにいて欲しいとただただ思った。
──たとえ、どんな手を使ったとしても。
***
今日は神楽坂舞子にとって散々な一日だった。そうと知らずやってきた一限の授業は休校、二限ではせっかくやった課題を忘れ、食べたかったランチは売り切れ、放課後になると雷雨に見舞われた。
教科書や紙類の入ったカバンを濡らさぬように抱え、自分のアパートへ走る。駅から近いことだけが利点のボロアパートは舞子のような貧乏学生が他にも住み着いていてあとはよくわからない人達が住んでいる。
びちゃびちゃの体を三和土にあげ、助からなかったカバンをほぼ地続きの畳に投げる。急いでシャワーを浴びたらバイトへ向かわなくてはならない。玄関すぐ横の洗面所に膝で乗り上げると何枚かタオルを取り紙類の救出に走る。クタッとした紙は力を入れると簡単に破けてしまいそうで、おっかなびっくり舞子は拭いていった。
めぼしいものを拭き終えるとくしゃみが出た。いけない、このままでは風邪を引くと舞子はシャワーを捻る。狭いユニットバスに湯気が立ち込める。そうしている間に着替えを持って来ると舞子はさっと湯を浴びて、いそいそとバイトへ向かう準備をする。
三年前、彼女の両親は飲酒運転の車に激突されそのまま亡くなった。幸い犯人はすぐに捕まりすでに求刑を終えている。周りに親戚はおらず当時高校生だった舞子は十六という若さで天涯孤独の身となった。
進学するつもりがなくなってしまった舞子を説得したのは当時の高校の担任で、厳しい道のりではあるが、勉学を修めておくのはきっと将来役に立つと勧められ奨学金で受験をすることにした。
元々できの良かった舞子は無事に公立の大学に入ることができたが、生活費に学費……その教科書代など馬鹿にならない金額を背負うことになる。それらは奨学金で賄われたが全てそういうわけにもいかないし、奨学金はいわば借金だ。いつかは返さなければならない。
そんな事情も合わせて舞子は日夜学業と勤労に従事する苦学生となったのだった。
担任が言っていた厳しさは正直まだ子供だった舞子の想像以上ではあったが、嫌ではなかった。体を酷使している自覚もあったが変に浮ついているよりよほど充実しているとさえ思った。
周りは生ぬるく親の脛を齧れるだけ齧ってやろうという気概のものが多く、バイトをしてまで大学に通う舞子はどうやら「苦労人」らしく同情や憐憫の視線をちょくちょく感じた。
確かに好きな食べ物も洋服も、必要最低限のものしか買えない。勉強をするためにバイトから帰って寝る間を惜しんで教科書を広げている。それの何がいけないというのか。実は心中で馬鹿にしているやつらを舞子は逆に馬鹿にしていた。
不幸は平等に訪れる。
そして自分の努力はいつかきっと報われる。
彼女はそう信じて毎日生きていた。
──ただまあ、心が折れそうな日というものもある。
舞子にとってその日はやはり最後まで厄日と言えた。
時給の上がる深夜の居酒屋は厄介な客も多い。基本は厨房で働いている舞子すらフロアに駆り出されあっちへこっちへのてんてこ舞いだった。そもそも接客を苦手としていた彼女はあまりの忙しさに目を回しいつもなら行さないようなミスをし、大したことではないそのミスに運悪く悪酔いして尊大になった客がひどいクレームをつけてきたのだ。
舞子はひたすら頭を下げたが溜飲の収まらないその客は挙げ句店長を呼び出しことごとく怒鳴り散らしたのだった。
それだけでもほとほと疲れた舞子だったが、それから上がりの時間になっても店長からの説教が続き、気がつけば真夜中。落ち込む暇もなく明日がやってきていた。
肩を落としトボトボと歩いていると舞子は懐にしまい込んでいるはずのものがないことに気がついた。
「あれっ、どうしようっ!」
焦燥とした声が真っ暗な夜道に響く。その慌てようは、見ていたものがいればただ事でないと思うほど逼迫したものだった。
「母さんの指輪……!」
彼女は懐に入っていたはずの母親の形見を探した。それはさして高価なものではない。シンプルなプラチナの台座に透明な石が小さく入った母の結婚指輪。事故で悲惨な死に体となった母親の遺体から見つかったものだ。父親のものはどこに飛んでいったのか、ついぞ見つからなかったそれ。
舞子にとっては両親を思う大事な品物だった。離れていることも辛く、毎日持ち歩いてはもういない両親を思うよすがにしていた。
そんな大事なものを失くすなんて。
舞子は自分がこの世で一番不幸で、一番惨めなんだと、ついに認めてしまいそうになった。
思ったら負けだとずっと強がっていた現実に負けそうになっていた。
いっそ両親のもとへ。ふっとそんな考えがよぎる。もう何も考えず楽になりたい。もういいんじゃないだろうか。ここまで頑張ってきたけれど、不幸は平等に訪れるが幸福は平等ではないのだと、認めてしまってもいいんじゃないだろうか。
再び降り出した雨が舞子を容赦なく濡らしていく。
頬を伝う水滴は空からのものなのかそれ以外か、舞子にはもはや判断できなかった。
「あの。」
心も体もぐちゃぐちゃになっている舞子に一つの声がかかる。真夜中にそれも雨の中突っ立っている女に声をかけてくるなんてと思ったが、口にはしない。ただ黙ったままぬぼっとその声の主の方に向いた。
「大丈夫ですか?」
ビニールの傘を差した二十代くらいの青年は心配そうに舞子を見つめている。ぱっと見はまともそうだった。少なくともよからぬ考えを持った不審者には見えなかった。
「ごめんなさい、大丈夫ではないですよね」
あからさまに尋常ではない様子の舞子に傘を差し出すと男は頭を掻いた。
「僕は青葉颯って言います」
急に自己紹介を始めた男は依然沈黙を続ける舞子の様子を見て困ったように笑う。
「いきなり話しかけてきて、なんだこいつって思われるのも無理ないですけど、ちょっとお尋ねしたいことがあって」
舞子は首を傾げた。一体なんだというのか。今の状態なら舞子の方がよっぽど不審者で近寄らない方がいい輩だ。悲観的な気持ちで舞子はそう自分をなじる。
「これ、貴女のではないですか?」
白く綺麗な手のひらに乗っている小さな銀の輪っか。まさか。舞子は目を見張る。慌ててすがりつくようにその手を両手で掴んだ。
「これ……!」
間違いようがなかった。母の指輪だ。舞子は確信を持って見つめる。裏側に刻印された日付もイニシャルも相違ない。冷たい手で男の手を掴んだままその顔を上げる。
男はへらりと笑う。
「さっき曲がり角であなたのコートからこれが落ちるのが見えて」
慌てて走ってきたんです。そしたら貴女が立ち尽くしていらしたので、少し声をかけても良いか戸惑ってしまいました。そんな言葉が舞子の耳を上滑りしていく。彼女の心にはただただ安堵だけが際限なく広がっていた。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ。そんなに大事なものだとは思いませんでしたが、見つけられて良かったです」
「あの、何かお礼を……」
「いえお気になさらず」
「見ての通り大したお礼はできないですが、本当に助かったんです。何かお礼させてくれないと眠れません」
柔和に笑う男の顔を見ながら舞子は縋るように申し出た。できることは少ないが心の底から感謝している気持ちをどうにか表現したいと募る舞子に男は笑い顔をほんの少し困惑しているように歪める。
「んんと、困ったな……。本当にそんなつもりじゃなかったんですけど、貴女がそこまで言うなら、ひとつだけ。良いですか?」
「はい、なんでもします」
──男の願いは舞子にとって意外なものだった。
「年頃の女の子が男に、それも初対面の相手に『なんでもする』なんて言うものじゃないよ」と、前置きとして忠告した男は黒のスマートフォンを懐から取り出す。
そうして舞子のスマホには青葉颯という名前のアドレスが増えているのだった。
これじゃお礼にならないと舞子がいうと「それなら今度食事に行こう」と誘われる。少ない預金を思い浮かべながら、「たくさんは出せませんがそれでもよければ」と伝えるが青葉は「女の子に出させる訳ないだろう?」と至極当たり前のように言った。
舞子はお礼にならないと思ったが青葉の「こんな君からしたらオジさんと出かけてくれるだけで有難いよ」という言葉に舞子は二の句が続かなかった。
青葉颯との邂逅は舞子にとってはひとつの起点となった。
大学と自宅、それからアルバイト先だけというまるで花のない生活に、一点落とされた色。歳上の男性と二人きりで出かけるなど彼女の今までの人生ではなかったことだ。
不思議な気持ちで待ち合わせ場所に向かう。こうして会うのも何度目になるだろうか。
あのとき近くのコンビニへ赴いていたという青葉は舞子の近隣に住んでいた。待ち合わせの場所も二人の最寄り駅にある噴水広場だ。
「ごめんね待ったかな?」
白っぽいベージュのジャケットを羽織りブラウンのネクタイを締めて現れた青葉はパッと見、舞子と同世代くらいにしか見えない。
それに加え改札を出てから駅前の噴水広場までの短い距離にも関わらず周囲の女性の目を引く容姿で、舞子はいつも戸惑いを覚える。
舞子の服装といえば所謂ファストファッションと呼ばれる流行りと安さを先行したプチプライスのものばかりだ。より好みできないとはいえ安っぽい格好で隣を歩くのは少々気が引ける。二人の明確な格差が見えるようだった。
「いいえ、今来たところです」
若く見える青葉は、それでも立派な社会人で来ている服もきっとそれなりにするものなのだろう。舞子には良し悪し程度しかわからなかったが、世間一般のサラリーマンが来ているスーツとの違いくらいはわかるつもりだった。この男はおそらく普通の会社員ではない。
「そう、じゃあ行こうか」
人をエスコートし慣れた腕が舞子を案内するように差し出される。それに軽く手を添えると二人は歩き始めた。
これはたぶんデートというやつだ。
舞子は今日行くお店の話をする青葉の整った横顔を見ながら思う。雨の日に窮地を救ってくれた恩人との。何をどう舞子を気に入ったのかは知らないが、青葉はそんなに日を置かずにこうして誘い出しては二人で出かける。
今日のようにご飯へ行くだけのときもあれば、お互いが休みの日に遊園地や水族館にも出かけたことだってある。これはきっとデートなのだ。舞子は自分の中のよくわからない感情を持て余しながら二人の行動にそう名を付けた。
「舞子ちゃん?」
いつしか青葉は舞子をそう呼ぶようになっていた。そんな呼び方にももう慣れた。はじめのころはなんだか妙に緊張して呼ばれるたびにドキドキしていた。ドキドキするのは今でもそう変わらないけれど。少しは慣れたはずだった。
「なんですか?」
「いや、なんだか浮かない顔だから気になって」
自分はそんな顔をしていただろうかと、頬に手をやるがもちろんわかるわけもない。
「……いいえ、なんでもないですよ」
「楽しくない?」
「そういうわけじゃないです」
「でも少しぼーっとしてた」
眉をハの字にして青葉は言う。舞子はときどきその観察眼に舌を巻く。この人はいつもすぐに変化に気づくなと。体調の変化はともかく少し切り過ぎた前髪にまでよく気がつき「可愛いね」と甘やかに褒めそやすのだ。
二人の関係、というものが脳裏をチラつく。
ずっと気になっているのだ。この妙な関係はどういうものでいつまで続くのか。舞子の答えは青葉の気分次第というものだった。青葉が望む限りこの関係は続く。しかしこの男が一度やめると言えばそれまでの関係なのだと。舞子には引き止める権利も理由も……魅力もない、彼女はそう結論付けていた。
駅近くにある大きなホテルに併設された夜景の綺麗なレストランは、眺めがいいのはもちろん食事も大変美味しかった。フレンチなど食べ慣れない舞子は四苦八苦しながらも普段は見ることもない素材を使った未知の料理を堪能したのだった。やはり青葉は只者ではない。だってこんな高級なレストランで小娘とディナーなど、普通はしない。もっとこのレストランに似合いの上品な女性と来る場所だろう。舞子は心中穏やかではなかった。
「美味しい?」
「はい、すごく」
「それなら良かった」
青葉は常に穏やかで紳士で大人だった。舞子を下に見るような振る舞いも言動もなく、一人前の、しかも大切な女性のように扱う。
年端の行かない舞子はそれだけでのぼせ上がりそうだった。そんな自分をいつも必死に諌めていた。こんなのはただの幻想。いつか終わる神の気まぐれなのだと。舞子はプリティーウーマンにはなれないし、青葉は足長おじさんではない。終焉は唐突に訪れるものだ。
「あのさ」
神妙な顔で話し出すその、なんとも言えない空気に舞子の背はピシャリと伸びた。
きた。これが。終わりの始まりだ。
ゴールドのリングにルビーが嵌められた指輪は、舞子の身の丈には到底合わない気がしたが付けていると不思議と馴染むもので。
「またそれを見てるの? そんなに気に入ってくれたなら贈った甲斐があるものだけど」
──今は僕だけを見てほしいな。
高さの上がった視点で夜景が見えるホテルの一室のベットで青葉は情事後の気怠さを残したまま少しふてくされたような顔をしている。
「……あの、ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃないんだ。ただこっちも見てほしいって心の狭い男のやきもちだよ」
おかしなことを言うものだ、舞子は心の中で呟く。まさか自分があげたものにも嫉妬しているのだろうか? そんな馬鹿な。
「私、青葉さんにお返ししたい」
「じゃあ青葉さんじゃなくて颯って呼んでくれる?」
「は、はやて、さん」
「ん。そのうち慣れていこうね」
「……はい」
舞子を見つめるその目は蕩けるように甘く甘く、細められる。舞子はこうしてひとつひとつダメにされていくのだと思う。そうしていつしかきっとこの男無しではいられなくなるのだ。それは遠くない未来に必ずやってくる。そんな気がした。
──舞子の恐れた終わりはやって来なかった。
「あのさ、そろそろ良いと思うんだ」
そう切り出した青葉に舞子は首を傾げる。
「どういう意味ですか?」
お礼から始まった日々を終わりにしようということか。
「もう一歩進んだ関係になりたいってことなんだけど、舞子ちゃんはいや?」
今以上に進むとなるとそれは恩人と恩返しするものを越えて友人になるということか、いやそれならいちいち了承など得たりはしない。……つまり、答えは一つしかない。
「男女のそれ、ってことですか」
「……うん」
なぜか恥ずかしそうにはにかむ男を可愛いと思いながら舞子は急な展開に動揺していた。見た目はあまり変わっていなかったが。
「どうして、私なんですか」
舞子には理由がわからなかった。青葉が望むものなど到底一つも持ち合わせていない女を選ぶ理由なんて。若さだろうか。それなら舞子でなくてもいい。
「もちろん好きだからだよ?」
それ以外に理由なんてあるの?と心底不思議そうな、いかにも自分の方が真っ当であると言いたげな顔で青葉は首を傾げる。
「いや、私なんて何も持ってないし、むしろ青葉さんに貰ってばかりなんですよ。それなのに……」
舞子にとって恋人という関係はそれなりに対等な関係ものだと思っていた。それは家庭環境しかり金銭面しかり年齢しかり。しかし二人の間には対等性と呼べるものは限りなくない。舞子ばかりが青葉に寄りかかった関係である。それは舞子の望んでいるものではなかった。
「もし、舞子ちゃんが嫌ならこのままでもいい。僕は恋人という肩書がほしいわけじゃないんだ。だけど、君がもし僕を好きで、でも立場とか周囲を気にして断るというなら僕は絶対それを認めない」
いつになく強い口調で舞子の考えを諌めるような青葉に舞子はぞくりとしたものを覚えた。
「お願い。逃げないで」
哀切を訴える目に、舞子は飲み込まれた。目は時に雄弁に語るといったのは誰だったか。青葉の目には舞子への気持ちが溢れ出るように見て取れた。いとしいと、この手をとってほしいと、そう望んでいるのがよくわかった。
それは舞子の願望だったのかもしれない。けれど、その手を取ったとき、青葉がこの世の中で一番しあわせだというような顔をしたのできっとそれが正解だったのだと舞子は思うことにした。
それからあれよあれよという間に、同じホテルに部屋を取っているという青葉に連れて行かれ、舞子は純潔の証を捧げたのだった。この上なく幸せな一夜だったと、記憶に刻まれるような濃密な時間だった。
好きになった理由なんてなかった。気がついたら好きだと、どうしようもなく好きだと思った。どうしても手に入れたい。そばにいて欲しいとただただ思った。
──たとえ、どんな手を使ったとしても。
「ああ、あのときほど君のあとをつけていて良かったと思うときはなかったよ」
安らかな顔で眠る最愛の人の髪を撫でる。じっくりと待ったかいがあった。
ずっと、ずっと欲しかったのだ。
でも出来る限り彼女に受け入れられる方法で近づかなければならなかった。
ストーカーでは恋人にはなれないのだ。
だから彼女が死んだ親の形見だというそれを落としたとき、千載一遇のチャンスだと思ったのだ。いや、彼女が独りになったときもそうは思っていたのだけど。結局彼女はここに至るまで独りでなんとかやってきていたから、男も見守るだけの歯がゆい日々を過ごす羽目になった。
何度強引に手に入れようと思ったことか。
しかしそうはならなくて良かったと改めて思う。一番ベストの状態で彼女のすべてを手に入れられた。これ以上どんな幸福があるだろうか!
男は恍惚とした、いっそ恐ろしいほどの美しい笑みを浮かべる。
「一緒にしあわせになろうね」
ようやく掴んだ宝物を大事に抱え、男はどろりと蜜を垂らしたような甘くて蕩けた瞳で笑った。
彼女にとっての真の幸せがどこにあるかなんて、男にはもはや関係なかった。
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