黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

文字の大きさ
上 下
180 / 194
第六章

まさか…!?

しおりを挟む
 涼は、散々人の体を弄び、雅哉の倍以上のキスマークをつけて満足したようだ。
 ベッドを背にして座り込み、背後から腕を回して俺を抱きこんでスリスリと肩に顔を埋めている。
 もちろんシャワーを浴びて服も着た後だ。

「ハル……」

 何度も名前を呼んではスリスリ……スリスリ……。

「ハルゥ……」

 スリスリ……スリスリ……。

 鬱陶しい。

「ハ……ル……」
「なんだよ!」
「ハル……」

 名前を呼ぶだけの涼に、がっくりと項垂れてから肩に乗せられている涼の頭をそっと撫でてやった。
 そうすると、涼は嬉しそうに肩を震わせた。

「ふふっ。ハル」
「はいはい、涼」

 スリスリ……。なでなで……。

「ハル」
「涼」

 スリスリ……。なでなで……。
 なんだこのやり取り。

「ねぇ、ハル。ハルは、誰のもの?」
「涼」
「ふふっ。ハルは、誰が一番なの?」
「……涼」
「雅哉のことはどう思ってるの?」
「…………」

 なんて言えってんだ……。 
 嫌いだなんて思ってないし、この後に及んでまだ友達に戻れないかと思っている。

「雅哉の事考えたね?」

 なんで不機嫌になるんだ。

「そりゃ、名前が出たら考えるって」
「今のなし。もう考えちゃダメ」

 なんだそりゃ。

「僕の事だけ考えて」
「……いつも考えてるよ」

 いつだって頭の中を涼でいっぱいにされて、涼の事を考えない日なんてない。

「ふふっ。ハル……」
「なんだよ……」

 スリスリ……。なでなで……。

「ハルゥ……」

 スリスリスリスリ……。
 ずっとやり続けそうだ。

「もういい加減にしろって。母さんが帰る前にご飯作るんだろ?」
「そうだね。ハルも手伝ってくれる?」
「手伝ってやるから行くぞ」

 ようやく解放されて、キッチンへ行く。
 エプロンをつけて、ごく普通の対面キッチンで、二人で手を洗う。

 ハンドソープを泡立てていたら、涼が隣に並んで手を重ねてきた。
 指と指の間を指先でなぞられる。
 俺の指先から手の平を涼の指の腹だけを使って上下に巧みに動かして丹念に洗われる。
 最後は恋人繋ぎをするように合わせようとする。
 なんか……エロい。

「やめろ」

 水を出してさっさと泡を流した。

「ちぇっ」

 不満顔の涼なんて無視するに限る。
 冷蔵庫を開けて二人で材料を取り出す。
 材料を見る限りでは、今日はごく一般的なカレーのようだ。

「玉ねぎ剥いて」

 そう言って渡されたのは、頭の部分を切り落とされた玉ねぎ。
 それをシンクの上で剥こうとしたら、背後から手が伸びてきて俺を抱き込むようにしながら玉ねぎに触れた。
 涼の指が玉ねぎの皮を掴んで、頭を切り落とされた部分から根元に向かってゆっくり丁寧に剥いていく。
 玉ねぎを優しく労るように、何度も涼の指が上下に行き来する。
 段々と茶色の皮を剥がされて玉ねぎが白くなっていく。
 その白くなった玉ねぎに指を這わせた。
 なんか……エロい。

「やめろ。涼がやったら俺が手伝う意味がないだろ?」
「ちぇっ」

 背後に立っていた涼を肘で小突けば、すぐに離れた。

「ハルは、炒める係だよ」

 俺は、鍋の前に立って、涼が入れる切り刻まれたカレーの材料を炒めるだけだった。
 全ての材料を入れ終わったらしい涼は、また俺の背後に立って手を伸ばしてきた。
 俺の木ベラを持つ手を包むように握られた。
 俺がガシガシと炒めていた木ベラを、円を描くようにグルーンッ、グルーンッとやさぁしく回す……。
 エロい……。

「だから、やめろって!」

 涼がやると全部エロく見える……。
 エロいカレーとかどんなだよ。

「ちぇっ」
「なんだよ……そのちぇってやつ……」

 材料が炒められれば、水を入れてそのまま煮込む。
 蓋を閉めた瞬間にギューッと背後から強く抱きしめられた。
 首筋にチュッと口付けられてゾクリとした。

「おい!」
「ダメ? 煮込む時間に色々できちゃうよ?」
「ダメに決まってんだろ!」

 何を考えているんだ。
 さっき散々俺を弄んだだろうが。

「キッチンでしようって約束したよね?」
「ざっけんな。」
「じゃあ、我慢するから少しだけ」

 抗議しようと涼の方へ顔を向ければ、キスで口を塞がれた。
 もがいても涼に抱き込まれていると逃げられない。

「んんっ──!ううんっ──はっ、ぷはっ──んんんっ──!」

 呼吸、呼吸をさせてくれ!
 しばらく続けられたディープキスの後に、酸欠で顔を真っ赤にし呼吸を荒くしていると、うっとりと呟かれた。

「可愛い……」

 いつも可愛いなんて言いやがって……。
 羞恥心で更に赤くなった顔を逸らす。

「はぁぁ……ハルゥ、愛してるぅぅぅ……」

 ギューッと抱きしめてきて苦しいぐらいだ。
 どうして恥ずかしくもなく毎回同じことが言えるんだ……。
 言われた方は恥ずかしいというのに。

 涼の手が胸をサワサワと触ってきて、尻に股間を押し付けてくる。
 勃ってやがる……。

「この! 変態!」
「ふふっ。真っ赤な顔でそんな事言うんだから、我慢できなくなりそう」

 罵られて喜ぶなんてやっぱり変態だ。
 カレーの具が煮えるまで、涼のいたずらと格闘していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。 R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17) (第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

収納大魔導士と呼ばれたい少年

カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。 「収納魔術師だって戦えるんだよ」 戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

処理中です...