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第六章
貴方に心からの感謝を
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「やれやれ。やっと姫に休息を与えられるね」
「はい、魅了師殿」
それから長旅の疲れと埃を落とす為、侍女達連と浴室へ向かったシェンナ姫を見送り、俺はほっと息を吐いた。
治癒はしょっ中掛けていたけど、初めての長旅で疲弊した心身には休息が一番必要なのだ。ピリついていたザビア将軍も、漸く表情を僅かに緩めて頷く。
実はその前に、侍女ちゃん二人に姫達と同じく『護り』をかけさせて貰った。
結界も張ってあるし、フゥもつけているから大丈夫だとは思うけど、彼女らに万が一精神干渉が為される可能性を考慮してだ。
この旅の間少し気安くなったとはいえ、至近距離で怪しい仮面男にじっと睨まれるのは怖かったのか、気分はどうかと尋ねても「はわわっ…!」「あぁあの、その…っ!」としどろもどろで真っ赤になってたので、一応ごめんねと心で謝っておく。
「女性の身支度は時間がかかるだろうけど、時間が余ったら少しでも姫に仮眠を取らせたいな」
「ええ。まだ幼い身で過酷な旅程をこなしましたから。魅了師殿が治癒魔法を施してくださらなければ、体調を崩していてもおかしくありませんでした」
「本当にね。それも含めて国王達には物申したいな!…あ、将軍もほとんど寝てなくて疲れてるだろうから、少し休んだほうがいいよ」
「いえ。私よりも魅了師殿の方がお疲れでしょう。結界も張って頂いてますし、私も警戒を怠りませぬ故、どうぞ休息を」
頭を振り微笑むザビア将軍だが、顔を見れば明らかに疲労が蓄積している。ほぼ不眠不休で目の下の隈だって濃いし、妹を護る為に道中誰よりも気を張っていたのは彼なのだ。
「魅了師殿?」
俺はザビア将軍の手を取り、治癒魔法を発動させた。これすら俺の負担になるからと断っていた彼に、何も言わせず疲れを取っていく。
「痩せ我慢は駄目だよ。これからが本番なんだから、体調は整えておかなきゃ」
「...魅了師殿」
大分楽になったのか、ザビア将軍の険しかった表情に穏やかさが戻ってきた。
過剰に治癒を掛けたらリバウンドが起きるからと、俺は彼の手を放そうとしたのだが。
「え?ザビアしょ…」
今度はザビア将軍が俺の手を取り、静かに絨毯へ片膝をついた。そして両手で恭しく手の甲を自分の額に押し付ける。
「貴方に心からの感謝を」
万感の思いが篭った声を絞り出すザビア将軍の手は、微かに震えていた。
「出会ってからここまで、貴方は私を助け導いてくれた。尚且つ絶望に塗りつぶされていたシェンナや聖獣様、そしてカルカンヌに希望を与えてくださった。本当に...感謝の念に堪えません」
「……..」
心からの謝意を告げてくれるザビア将軍に、俺は心苦しくなった。
御礼を言われるのはまだ早いし、そもそも俺の独断でバティルと話を進めて敵陣に入り込んでいるのだ。周りは全て敵と言える状況で、姫や将軍を危険に晒している事は間違いない。それに…。
「御礼を言われるのまだ早いし、謝らなきゃならない事がある。バティルと対峙してた時だけど、俺…もう少しで彼奴の挑発に乗って、グリフォンを危険に晒す所だったんだ」
本物の「黒の魅了師」ではなく未熟な俺が、取り返しのつかない悲劇を生んだかもしれない。だから全幅の感謝は心苦しいし、やめて欲しい。そう伝えると、ザビア将軍は顔を上げて微笑んだ。
「私は貴方を信じると誓いました、そして妹も。そもそも貴方は、父との誓約が終われば我らの国に関わる義理も、縁もなかった。なのに…何の見返りも求めず我らに心を砕き、助けようとしてくださっている」
「そんなの…俺の自己満足だよ。カルカンヌとオンタリオを引っ掻き回して、もっと悪い結果になるかもしれない…」
「いいえ!この国に奪われた妹が、そして我が国が…聖獣様が辿るであろう未来は絶望でした。私にとって貴方は救世主であり希望なのです、『黒の魅了師』殿」
微かな不安を宿した俺の言葉を、ザビア将軍は即座に否定する。力強く見つめる黒翡翠の様な双眼は、曇りなくどこまでも澄んでいた。
「この先どんな結果になろうとも、妹や私…きっと父上達も、貴方を恨むなどあり得ません。元より戦う覚悟は出来ております。力及ばずとも、せめて妹と貴方の盾となりましょう」
そう言うと、ザビア将軍は再び額に俺の手の甲を押し付け、そっと唇を落としたのだった。
『えええ!ちょっ…!!』
唇の弾力と温かさを感じながら、俺はピキリと硬直する。
ザビア将軍、ちょっと待ってくれ!美形騎士に跪かれて手の甲にキスって、お姫様に忠誠を誓うアレなシチュエーションだよ?それをなんで俺にするのかなっ!?
不覚にもドキッと胸が跳ねて顔が熱くなってしまった俺の動揺は、ピクッと震えた指先で将軍に伝わったに違いない。
『おい小僧!人のモンに何してやがる!!顔を離しやがれ!!』
その時、ベルの怒鳴り声が響いたと思ったら、パニックで固まっていた俺の腕に目にも止まらぬ速さで巻きつき、シャーッ!!と威嚇音を立て牙を剥き出す。
「あ、し、失礼しました!」
黒蛇の怒気に気圧されて、ザビア将軍は俺の手を離すと跪いたまま顔を下げ、自分の非礼を詫びる。
「い、いやっ、気にしないでっ!ほら、立ってたって!」
俺はまだ少し動揺しながら手を左右に振りザビア将軍を促したのだが、彼の頬が少し上気してて何処となく嬉しそうなのは何故だろう。
ベルは腕に巻き付きながら、不機嫌そうに『クソガキがっ!!』とザビア将軍を睨みつけ威嚇をやめない。
あのなぁ…火竜《サラマンダー》の時もだけど、全方面に突っかかるのやめてくれよ大悪魔様。
そして感情に任せて腕をギリギリ締め付けるのやめてくれ、痛いから。
何だかシリアスだった空気がぐだぐだになってしまったけど、結果的に良かったかもしれない。
俺は立ち上がったザビア将軍を見上げ、(見えないだろうけど)にこりと笑った。
「貴方の感謝は素直に受け取るよ。でも俺は、自分がやりたいことをしてるだけなんだ。グリフォンの命を救って、そして姫と王太子が幸せになる未来を見たい。勿論ザビア将軍やカルカンヌの幸せもね。だから、姫の為…ましてや俺の為に命を散らそうなんて考えないで、貴方達の未来を掴む為に頑張ろう?」
「!!…はい…魅了師殿!」
ザビア将軍の双眼が潤み、ぐっと喉を詰まらせながら小さく、でも力強く頷いてくれる。
良かった、これで無謀に命を散らそうとは考えない筈だと俺は胸を撫で下ろした。
『だから、無自覚に誑し込んでんじゃねえってのソロモンもどきが…!』
「ん?何か言ったかベル」
俺の問いかけに全く答えず、ベルは不貞腐れてまたソファーに戻っていった。まあ、どうせ俺への悪態だろうと無視しよう。
「はい、魅了師殿」
それから長旅の疲れと埃を落とす為、侍女達連と浴室へ向かったシェンナ姫を見送り、俺はほっと息を吐いた。
治癒はしょっ中掛けていたけど、初めての長旅で疲弊した心身には休息が一番必要なのだ。ピリついていたザビア将軍も、漸く表情を僅かに緩めて頷く。
実はその前に、侍女ちゃん二人に姫達と同じく『護り』をかけさせて貰った。
結界も張ってあるし、フゥもつけているから大丈夫だとは思うけど、彼女らに万が一精神干渉が為される可能性を考慮してだ。
この旅の間少し気安くなったとはいえ、至近距離で怪しい仮面男にじっと睨まれるのは怖かったのか、気分はどうかと尋ねても「はわわっ…!」「あぁあの、その…っ!」としどろもどろで真っ赤になってたので、一応ごめんねと心で謝っておく。
「女性の身支度は時間がかかるだろうけど、時間が余ったら少しでも姫に仮眠を取らせたいな」
「ええ。まだ幼い身で過酷な旅程をこなしましたから。魅了師殿が治癒魔法を施してくださらなければ、体調を崩していてもおかしくありませんでした」
「本当にね。それも含めて国王達には物申したいな!…あ、将軍もほとんど寝てなくて疲れてるだろうから、少し休んだほうがいいよ」
「いえ。私よりも魅了師殿の方がお疲れでしょう。結界も張って頂いてますし、私も警戒を怠りませぬ故、どうぞ休息を」
頭を振り微笑むザビア将軍だが、顔を見れば明らかに疲労が蓄積している。ほぼ不眠不休で目の下の隈だって濃いし、妹を護る為に道中誰よりも気を張っていたのは彼なのだ。
「魅了師殿?」
俺はザビア将軍の手を取り、治癒魔法を発動させた。これすら俺の負担になるからと断っていた彼に、何も言わせず疲れを取っていく。
「痩せ我慢は駄目だよ。これからが本番なんだから、体調は整えておかなきゃ」
「...魅了師殿」
大分楽になったのか、ザビア将軍の険しかった表情に穏やかさが戻ってきた。
過剰に治癒を掛けたらリバウンドが起きるからと、俺は彼の手を放そうとしたのだが。
「え?ザビアしょ…」
今度はザビア将軍が俺の手を取り、静かに絨毯へ片膝をついた。そして両手で恭しく手の甲を自分の額に押し付ける。
「貴方に心からの感謝を」
万感の思いが篭った声を絞り出すザビア将軍の手は、微かに震えていた。
「出会ってからここまで、貴方は私を助け導いてくれた。尚且つ絶望に塗りつぶされていたシェンナや聖獣様、そしてカルカンヌに希望を与えてくださった。本当に...感謝の念に堪えません」
「……..」
心からの謝意を告げてくれるザビア将軍に、俺は心苦しくなった。
御礼を言われるのはまだ早いし、そもそも俺の独断でバティルと話を進めて敵陣に入り込んでいるのだ。周りは全て敵と言える状況で、姫や将軍を危険に晒している事は間違いない。それに…。
「御礼を言われるのまだ早いし、謝らなきゃならない事がある。バティルと対峙してた時だけど、俺…もう少しで彼奴の挑発に乗って、グリフォンを危険に晒す所だったんだ」
本物の「黒の魅了師」ではなく未熟な俺が、取り返しのつかない悲劇を生んだかもしれない。だから全幅の感謝は心苦しいし、やめて欲しい。そう伝えると、ザビア将軍は顔を上げて微笑んだ。
「私は貴方を信じると誓いました、そして妹も。そもそも貴方は、父との誓約が終われば我らの国に関わる義理も、縁もなかった。なのに…何の見返りも求めず我らに心を砕き、助けようとしてくださっている」
「そんなの…俺の自己満足だよ。カルカンヌとオンタリオを引っ掻き回して、もっと悪い結果になるかもしれない…」
「いいえ!この国に奪われた妹が、そして我が国が…聖獣様が辿るであろう未来は絶望でした。私にとって貴方は救世主であり希望なのです、『黒の魅了師』殿」
微かな不安を宿した俺の言葉を、ザビア将軍は即座に否定する。力強く見つめる黒翡翠の様な双眼は、曇りなくどこまでも澄んでいた。
「この先どんな結果になろうとも、妹や私…きっと父上達も、貴方を恨むなどあり得ません。元より戦う覚悟は出来ております。力及ばずとも、せめて妹と貴方の盾となりましょう」
そう言うと、ザビア将軍は再び額に俺の手の甲を押し付け、そっと唇を落としたのだった。
『えええ!ちょっ…!!』
唇の弾力と温かさを感じながら、俺はピキリと硬直する。
ザビア将軍、ちょっと待ってくれ!美形騎士に跪かれて手の甲にキスって、お姫様に忠誠を誓うアレなシチュエーションだよ?それをなんで俺にするのかなっ!?
不覚にもドキッと胸が跳ねて顔が熱くなってしまった俺の動揺は、ピクッと震えた指先で将軍に伝わったに違いない。
『おい小僧!人のモンに何してやがる!!顔を離しやがれ!!』
その時、ベルの怒鳴り声が響いたと思ったら、パニックで固まっていた俺の腕に目にも止まらぬ速さで巻きつき、シャーッ!!と威嚇音を立て牙を剥き出す。
「あ、し、失礼しました!」
黒蛇の怒気に気圧されて、ザビア将軍は俺の手を離すと跪いたまま顔を下げ、自分の非礼を詫びる。
「い、いやっ、気にしないでっ!ほら、立ってたって!」
俺はまだ少し動揺しながら手を左右に振りザビア将軍を促したのだが、彼の頬が少し上気してて何処となく嬉しそうなのは何故だろう。
ベルは腕に巻き付きながら、不機嫌そうに『クソガキがっ!!』とザビア将軍を睨みつけ威嚇をやめない。
あのなぁ…火竜《サラマンダー》の時もだけど、全方面に突っかかるのやめてくれよ大悪魔様。
そして感情に任せて腕をギリギリ締め付けるのやめてくれ、痛いから。
何だかシリアスだった空気がぐだぐだになってしまったけど、結果的に良かったかもしれない。
俺は立ち上がったザビア将軍を見上げ、(見えないだろうけど)にこりと笑った。
「貴方の感謝は素直に受け取るよ。でも俺は、自分がやりたいことをしてるだけなんだ。グリフォンの命を救って、そして姫と王太子が幸せになる未来を見たい。勿論ザビア将軍やカルカンヌの幸せもね。だから、姫の為…ましてや俺の為に命を散らそうなんて考えないで、貴方達の未来を掴む為に頑張ろう?」
「!!…はい…魅了師殿!」
ザビア将軍の双眼が潤み、ぐっと喉を詰まらせながら小さく、でも力強く頷いてくれる。
良かった、これで無謀に命を散らそうとは考えない筈だと俺は胸を撫で下ろした。
『だから、無自覚に誑し込んでんじゃねえってのソロモンもどきが…!』
「ん?何か言ったかベル」
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