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第四章
恐慌状態
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『ふ…複雑だけど、取り敢えずドン引きされてないだけマシと思っておこう!』
更なる脱力感に襲われつつ、ユキヤは開き直る覚悟を決めた。
こうなりゃヤケだ。このキャラのまま、突き進んでやる。大切なのは今この国で起こっている問題を無事解決する事だ。俺へのイメージやダメージなんて些細な事だ。
一方、美形兄妹がギャップ萌えに胸をときめかせているのと対照的に、ゲイルガはユキヤ(ベル)の言葉に顔を更に青褪めさせた。
『ち、ちくしょう!何故ここに魅了師なんかが居やがるんだよ!?しかも…しかも、『黒の魅了師』だと!?』
誰から聞いたのかはもう覚えてはいないが、召喚士よりも高位とされる『魅了師』の存在を聞いた事があった。そして『黒の魅了師』の事も。
彼が使う魅了の力はどのような魔獣も魅了し、使役する事が出来ると言われているそうだ。
そして黒の魅了師が何よりも恐ろしいとされる点は、あらゆる魔獣を魅了し、従える事が出来るだけでない。同業の魅了師の使役する従魔すらも魅了し、離反させる事が可能であると言われている点だ。
『なのに、俺はよりにもよって…!』
オーク、オーガ、ラミア…。
自分が引き連れて来た兵の半数は、戦闘種族とされる亜人種達で構成されている。
ただこれらの者達は、亜人種の中でも魔獣に近い。魔獣に近いという事は、魅了師にとって格好の獲物であるという事に他ならない。
このカルカンヌ王国は、上位種の幻獣グリフォンが聖獣として外敵から守護していた為、碌な軍隊がいない。
だがこの国の聖獣は上位の幻獣。死にかけているとはいえ油断は禁物だ。
だからもし、シェンナ姫が輿入れを嫌がった時の為にと『あの方』に願い出て、兵士の半数を亜人にしたのだ。
なのに今回、それが完全に裏目に出た。
もし、今目の前にいる仮面の男が『黒の魅了師』であるならば、部下達や自分が感じている恐怖と奇妙な高揚の説明がつく。
『仮面越しですらこれなら…!』
戦うまでもなくこちらの亜人兵…いや、人族含めた全てを一瞬で魅了し、使役してしまうだろう。そうすれば形勢は一気に逆転してしまう。
ゲイルガは、失敗した時に己に課される処罰よりもなによりも、離反した兵士達に血祭りにあげられるかもしれない恐怖に慄いた。
だがもし、『あのお方』がこの場にいれば、きっと何とかなったに違いない。なにせあの亜人達を従え、統率しているのは『あのお方』なのだから。
『あのお方ならば、魅了師ごとき……。そうだ。たとえ『黒の魅了師』だとしても、あるいは…』
「おい、貴様。ゲイルガ…とか言ったか?」
「ヒッ?!は、はいっ!」
ユキヤ(ベル)に矛先を再び向けられ、ゲイルガがビクリと身体を竦める。
「今現在、俺の契約主はザビア将軍。シェンナ姫の輿入れ、俺も同行させてもらおう。グリフォンにも将軍と共に見届けを頼まれたし、確か供は数人認められている筈だろう?」
有無を言わせぬその口調に、ゲイルガは蒼白な顔色のまま、ゴクリと喉を鳴らした。
更なる脱力感に襲われつつ、ユキヤは開き直る覚悟を決めた。
こうなりゃヤケだ。このキャラのまま、突き進んでやる。大切なのは今この国で起こっている問題を無事解決する事だ。俺へのイメージやダメージなんて些細な事だ。
一方、美形兄妹がギャップ萌えに胸をときめかせているのと対照的に、ゲイルガはユキヤ(ベル)の言葉に顔を更に青褪めさせた。
『ち、ちくしょう!何故ここに魅了師なんかが居やがるんだよ!?しかも…しかも、『黒の魅了師』だと!?』
誰から聞いたのかはもう覚えてはいないが、召喚士よりも高位とされる『魅了師』の存在を聞いた事があった。そして『黒の魅了師』の事も。
彼が使う魅了の力はどのような魔獣も魅了し、使役する事が出来ると言われているそうだ。
そして黒の魅了師が何よりも恐ろしいとされる点は、あらゆる魔獣を魅了し、従える事が出来るだけでない。同業の魅了師の使役する従魔すらも魅了し、離反させる事が可能であると言われている点だ。
『なのに、俺はよりにもよって…!』
オーク、オーガ、ラミア…。
自分が引き連れて来た兵の半数は、戦闘種族とされる亜人種達で構成されている。
ただこれらの者達は、亜人種の中でも魔獣に近い。魔獣に近いという事は、魅了師にとって格好の獲物であるという事に他ならない。
このカルカンヌ王国は、上位種の幻獣グリフォンが聖獣として外敵から守護していた為、碌な軍隊がいない。
だがこの国の聖獣は上位の幻獣。死にかけているとはいえ油断は禁物だ。
だからもし、シェンナ姫が輿入れを嫌がった時の為にと『あの方』に願い出て、兵士の半数を亜人にしたのだ。
なのに今回、それが完全に裏目に出た。
もし、今目の前にいる仮面の男が『黒の魅了師』であるならば、部下達や自分が感じている恐怖と奇妙な高揚の説明がつく。
『仮面越しですらこれなら…!』
戦うまでもなくこちらの亜人兵…いや、人族含めた全てを一瞬で魅了し、使役してしまうだろう。そうすれば形勢は一気に逆転してしまう。
ゲイルガは、失敗した時に己に課される処罰よりもなによりも、離反した兵士達に血祭りにあげられるかもしれない恐怖に慄いた。
だがもし、『あのお方』がこの場にいれば、きっと何とかなったに違いない。なにせあの亜人達を従え、統率しているのは『あのお方』なのだから。
『あのお方ならば、魅了師ごとき……。そうだ。たとえ『黒の魅了師』だとしても、あるいは…』
「おい、貴様。ゲイルガ…とか言ったか?」
「ヒッ?!は、はいっ!」
ユキヤ(ベル)に矛先を再び向けられ、ゲイルガがビクリと身体を竦める。
「今現在、俺の契約主はザビア将軍。シェンナ姫の輿入れ、俺も同行させてもらおう。グリフォンにも将軍と共に見届けを頼まれたし、確か供は数人認められている筈だろう?」
有無を言わせぬその口調に、ゲイルガは蒼白な顔色のまま、ゴクリと喉を鳴らした。
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