黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

文字の大きさ
上 下
124 / 194
第四章

とっかかりは掴めたか

しおりを挟む
だけど、俺を襲える直前で強制終了だったもんだからよっぽど悔しかったのだろう。ベル蛇はシャーシャーギャーギャーと喧しく怒鳴り、尻尾をブンブン高速で唸らせ今にも俺を張り倒す勢いだ。

『てめぇユキヤ、さっさとクソエルフの術を解け!そんで続きするぞ!』

「やだよ!誰がするか絶対お断りっ!」

『ふん、よく言うぜ。お前だってノリノリだったくせに』

「う、嘘つくなっ!あれはっ、お前がそー持っていったんだろ?!」

あれだけ淫靡な雰囲気も四散して、ついさっきまでのやり取りが嘘のように消え、ほんの半時間前に戻ってしまった。言い合ってる内に、何だか気が抜けて口が緩んでしまう。

当然そんな俺の態度を気にいるはずもなく、ベルは『笑ってんじゃねぇ!』と牙をシャーッと剥いた。が、悲しいかな。蛇では手も足もないから、噛み付くか威嚇か尻尾打ちしか出来ず。セクハラ行為は不可能と。

結局、どうやって一時的でも術を破れたのか分からないのだから、戻せ解けと喚かれても無理っぽいし。かと言って怒らせたまんまだと、後々不味いよな…。フゥもいるけど、ベルの助力が無くなるのは正直キツイ。

打算計算で「むむむ」と考えて、俺は上半身を起こすとシャーシャー鳴いてるベルを両手で掬い上げる。そして顔を近づけ、唇をコツンとくっつけた。

直ぐに離さず、そのままキスを継続する事15秒ほど。ベルは驚いたように赤い目を見開いたが、噛みつかれもせず動きを止めてじっとしてた。まあ、蛇にとはいえ俺からキスをするのは二回目で、所謂ディープキスだからな。

嗚呼…蛇だけどめっちゃ和む。人型ベルとのディープキスとは全く違って、動悸も息切れもない。

あんだけ俺にセクハラしまくったし、魔力も満タンだろうからこれ以上は要らないだろうけど。これで機嫌直せよって意味も込めたけど、伝わったかな?

『…足りねぇ。元に戻ったら、さっきの続きするからな』

唇を離しても不満たらたらだったが、勢いがトーンダウンしてる。
よし、ベルの機嫌は多少上向いたみたいだ。

「いやだからそれは無理。全力で拒絶するし」

『ふ~ん』

ベルは俺の腕を伝って首に巻きつくと、首筋を鎌首で撫であげるように擦り付ける。さっき手でされたのと同じ動きで。

うっかり声が漏れそうになり、咄嗟に口を噤んだ俺を見上げてベルはふんっと鼻先で笑った。

『よく言う。お前、俺を受け入れかけてたじゃねぇか』

「あ、あれは不可抗力だから!二度目はない!」

考えるに、予想不可な事態に動揺して精神バランスが崩れて誓約が効かなかったんだろう。次から気を引き締めれば…。

あれ?そもそも俺、どうしてベルの顔見たいって思っちゃったんだっけ….?

『この無自覚め…。まぁ、とっかかりは掴めたか….』

考え事をしていると注意散漫になる俺は、ベルが小さく呟いたのに気づかなかった。

兎に角、長い一日だった。濃すぎて疲労を自覚した矢先に今さっきの件だ。流石に疲れたから横にならせろと主張する俺に、ベルは渋々ながら同意した。

『仕方ねぇ、明日ちゃっちゃと解けよ!』と首元で五月蝿いベルをまるっと無視して、俺達は隣部屋の寝室へと移動する。そしてベッドへ到着する直前、不意に聞きたかった事を思い出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

収納大魔導士と呼ばれたい少年

カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。 「収納魔術師だって戦えるんだよ」 戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

処理中です...