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第四章
不安な対価
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「貴方様は絶望に染まった我々に与えられた一筋の光。本当に、言葉では言い尽くせない程に感謝しているのです」
ザビア将軍の言葉に、俺はふるりとかぶりを振る。
「いや、感謝はまだ早いですよ。本当に色々な事がうまくいったら、そうしたら感謝して下さい」
なんせ本当の俺は、未来の師匠である黒の魅了師のふりをしている、素人同然のガキなのだから。
『安心しろユキヤ。この俺がいる限り、お前に敗北はあり得ん。どうしようもなくなったら、あの決闘の時のように俺を召喚すればいい』
不意に脳内に響くベルの『声』。
将軍達に聞かれたくないのか、わざわざ念話で話しかけてきたが、俺はつい声を出してしまった。
「何言ってんだ!だいたいお前は今、力を封じられて…」
…って、あれ?首周りの輪っか、針金みたいに細くなってる。パンケーキ食べたから…じゃないよな。体も一回り大きくなってるような?
「お前が召喚すれば、この忌々しい縛りは完全に解ける。当然対価は発生するがな』
「対価って…?」
『まけにまけて、濃厚な接吻を召喚時に一回。終わった後にもう一回』
「………」
念話で良かった。対価の内容なんて、将軍や姫に聞かれたくない。そして、ベルのセクハラ要求もとい対価だが、今回は即座に「お断り」する事は出来なかった。
オンタリア王国で何があったのか。敵は一体誰なのか、シェンナ姫を強引に輿入れしようとするのは、どんな目的からなのか。全てが謎なのだ。
そう考えると、キス二つで最強最悪と言われている大悪魔の力が得られるのであれば、安いもの…なのかもしれない。凄く不安だけど…特に二回目が。
『ユキヤ?』
「…考えて、おく」
途端、まるで主人に褒められた犬のごとく、ベルの尻尾が横にブンブンと勢いよく振られる。
…なんか滅茶苦茶喜んでる…。
何故だろう。やっぱり物凄く嫌な予感しかしない。
『マスター、僕が言うのもなんだけど、精霊との交換条件は、よーーく考えて取引しないといけないよー?特に黒の精霊は姑息で腹黒いから!』
『クソ虫!余計な事言うな!』
『きゃっ!!』
言うが早いか、尻尾の先でフウをバシッと吹っ飛ばしたベルに、「やめんか!」と首を鷲掴みして叱る。そんな俺達を見て、ザビア将軍がクスリと笑った。
「えっと、何か?」
「いえ。なんか従魔と主人というよりも、まるで家族のように接せられているので、ついおかしくなってしまって。貴方に使役される従魔は幸せですね」
『俺は従魔じゃねぇ!!』
シャーッとザビア将軍に牙を剥くベルの頭をペシッと叩いた後、俺はさっきから不安そうに顔を曇らせているシェンナ姫に向かって、(見えないだろうけど)優しく微笑んだ。
「シェンナ姫、まだ生地が残っているから今度は貴方が焼いてみませんか?上手く焼けたら聖獣様に食べてもらいましょう。そして全てが終わったら、今度は旦那さんになる人にも食べて貰いましょうね」
ハッとした顔で俺を見た後、シェンナ姫は一瞬だけ俯き、強い決意の込もった顔を上げた。
「はいっ!私、頑張ります!」
――うん、強い子だ。彼女ならきっと、何があっても相手を信じて頑張る事が出来るだろう。
そんなシェンナ姫を応援するように、ポンポンと頭を優しく叩いてやりながら、俺は再びフライパンを火にかけた。
ザビア将軍の言葉に、俺はふるりとかぶりを振る。
「いや、感謝はまだ早いですよ。本当に色々な事がうまくいったら、そうしたら感謝して下さい」
なんせ本当の俺は、未来の師匠である黒の魅了師のふりをしている、素人同然のガキなのだから。
『安心しろユキヤ。この俺がいる限り、お前に敗北はあり得ん。どうしようもなくなったら、あの決闘の時のように俺を召喚すればいい』
不意に脳内に響くベルの『声』。
将軍達に聞かれたくないのか、わざわざ念話で話しかけてきたが、俺はつい声を出してしまった。
「何言ってんだ!だいたいお前は今、力を封じられて…」
…って、あれ?首周りの輪っか、針金みたいに細くなってる。パンケーキ食べたから…じゃないよな。体も一回り大きくなってるような?
「お前が召喚すれば、この忌々しい縛りは完全に解ける。当然対価は発生するがな』
「対価って…?」
『まけにまけて、濃厚な接吻を召喚時に一回。終わった後にもう一回』
「………」
念話で良かった。対価の内容なんて、将軍や姫に聞かれたくない。そして、ベルのセクハラ要求もとい対価だが、今回は即座に「お断り」する事は出来なかった。
オンタリア王国で何があったのか。敵は一体誰なのか、シェンナ姫を強引に輿入れしようとするのは、どんな目的からなのか。全てが謎なのだ。
そう考えると、キス二つで最強最悪と言われている大悪魔の力が得られるのであれば、安いもの…なのかもしれない。凄く不安だけど…特に二回目が。
『ユキヤ?』
「…考えて、おく」
途端、まるで主人に褒められた犬のごとく、ベルの尻尾が横にブンブンと勢いよく振られる。
…なんか滅茶苦茶喜んでる…。
何故だろう。やっぱり物凄く嫌な予感しかしない。
『マスター、僕が言うのもなんだけど、精霊との交換条件は、よーーく考えて取引しないといけないよー?特に黒の精霊は姑息で腹黒いから!』
『クソ虫!余計な事言うな!』
『きゃっ!!』
言うが早いか、尻尾の先でフウをバシッと吹っ飛ばしたベルに、「やめんか!」と首を鷲掴みして叱る。そんな俺達を見て、ザビア将軍がクスリと笑った。
「えっと、何か?」
「いえ。なんか従魔と主人というよりも、まるで家族のように接せられているので、ついおかしくなってしまって。貴方に使役される従魔は幸せですね」
『俺は従魔じゃねぇ!!』
シャーッとザビア将軍に牙を剥くベルの頭をペシッと叩いた後、俺はさっきから不安そうに顔を曇らせているシェンナ姫に向かって、(見えないだろうけど)優しく微笑んだ。
「シェンナ姫、まだ生地が残っているから今度は貴方が焼いてみませんか?上手く焼けたら聖獣様に食べてもらいましょう。そして全てが終わったら、今度は旦那さんになる人にも食べて貰いましょうね」
ハッとした顔で俺を見た後、シェンナ姫は一瞬だけ俯き、強い決意の込もった顔を上げた。
「はいっ!私、頑張ります!」
――うん、強い子だ。彼女ならきっと、何があっても相手を信じて頑張る事が出来るだろう。
そんなシェンナ姫を応援するように、ポンポンと頭を優しく叩いてやりながら、俺は再びフライパンを火にかけた。
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