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第三章
第一王子とのお茶会②
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「…セオドア殿。それともう一つ。…私の力が及ばぬばかりに、貴方の最愛の御子息を奪われてしまいました。貴方や貴方の…いや、ユキヤを愛する多くの方達の苦悩と心痛を思い、自身の不甲斐なさを恥じ入るばかりです。本当に、申し訳ありませんでした」
そう言うと、再びランスロットはセオドアへと深々と頭を下げた。隣に立つモリスや、他の近衛達も皆、沈痛な面持ちとなる。
「…殿下…」
それに対し、思う所のあるセオドアは、ランスロットに対して何も声をかける事が出来なかった。ただ、注意深くランスロットの様子を観察する。
『これが演技だったとしたら、大したものだ』
誰がどう見ても……息子を奪われた当事者である自分から見ても、ランスロットの態度に嘘や偽りは見受けられない。自分のせいで息子を奪われた相手に対する謝意と誠意以外、感じ取れなかった。
「…ご安心ください殿下。私の息子は…ユキヤは必ず無事で生きています。少なくとも私はそう信じている。殿下こそ、我が身を顧みず私の息子を守ろうとして下さった。心からの感謝を述べさせて頂きます」
自分の言葉に顔を上げたランスロットに対し、今度は自分の方が頭を下げる。
そんなセオドアを見つめ、ランスロットは少しだけ眉を下げた後、フッと笑った。
「成程。それではこの話はここまでに致しましょう。ええ。私も貴方と同じく、御子息はきっと元気でいると信じています。御子息の捜索には、私も出来る限り協力させて頂きたいと思っていますよ」
「...有難う御座います、殿下」
ここに至って、セオドアは確信した。この王子はユキヤに何かしたのかもしれない。だが、それは悪意からではない。そして言葉通り、ユキヤは確かに無事でいるのだろうという事を。
「では、せっかくのお茶会です。用意した紅茶やお菓子が無駄になってはいけません。まずは紅茶を召し上がって下さい」
言われ、絶妙なタイミングで淹れられた紅茶を口にすると、豊かな茶葉の香りが口腔から鼻腔へと広がった。
「これは…美味しいですね。香りも良いが、飲んだ後に残る味わいが甘く、爽やかだ」
「ええ。これは私が特別に栽培させている自慢の茶葉です。発酵させず、ハーブティーとして飲んでも美味しいのですよ。さ、お菓子もどうぞ。お口に合うか分かりませんが、これも私が監修したものなんです」
「それでは、お言葉に甘えて」
そう言うと、見た目も彩も美味しそうな菓子の中から、小ぶりな一口パイを摘まみ、口に入れる。
途端、広がった瑞々しい果肉と果汁、そしてバターの香りに思わず目を見開いた。てっきり、これでもかとばかりに甘味が押し寄せてくると思っていたのだが…。
「いかがでしょう?お恥ずかしい話ですが、私はあまり甘い物が得意ではないので、お菓子も従来の使用量を大幅に少なくしているのです。お口に合えば宜しいのですが」
「いえ、大変美味しゅうございます。私もこれぐらいの甘さが好みですので」
「それは良かった!前に弟に食べさせた時は、『貧乏舌』などと言って馬鹿にされましたから」
そう言って笑うランスロットを見ながら、それはそうだろうと心の中で呟いた。
この国の権力者達は皆、貴重な砂糖をふんだんに使った菓子を出す事こそが貴族の格に繋がると思っている。その為、上位になればなるほど甘いお菓子を作らせる。
自分は辺境の田舎貴族だったので、割と適量の砂糖を使ったお菓子で育っていた。その為、王都に来た当初は出される菓子を食べては気分が悪くなっていたものだ。
「ユキヤに食べさせたら、喜びそうだな…」
思わずそんな言葉が漏れる。するとそれに反応したランスロットが興味深げに喰い付いてきた。
そう言うと、再びランスロットはセオドアへと深々と頭を下げた。隣に立つモリスや、他の近衛達も皆、沈痛な面持ちとなる。
「…殿下…」
それに対し、思う所のあるセオドアは、ランスロットに対して何も声をかける事が出来なかった。ただ、注意深くランスロットの様子を観察する。
『これが演技だったとしたら、大したものだ』
誰がどう見ても……息子を奪われた当事者である自分から見ても、ランスロットの態度に嘘や偽りは見受けられない。自分のせいで息子を奪われた相手に対する謝意と誠意以外、感じ取れなかった。
「…ご安心ください殿下。私の息子は…ユキヤは必ず無事で生きています。少なくとも私はそう信じている。殿下こそ、我が身を顧みず私の息子を守ろうとして下さった。心からの感謝を述べさせて頂きます」
自分の言葉に顔を上げたランスロットに対し、今度は自分の方が頭を下げる。
そんなセオドアを見つめ、ランスロットは少しだけ眉を下げた後、フッと笑った。
「成程。それではこの話はここまでに致しましょう。ええ。私も貴方と同じく、御子息はきっと元気でいると信じています。御子息の捜索には、私も出来る限り協力させて頂きたいと思っていますよ」
「...有難う御座います、殿下」
ここに至って、セオドアは確信した。この王子はユキヤに何かしたのかもしれない。だが、それは悪意からではない。そして言葉通り、ユキヤは確かに無事でいるのだろうという事を。
「では、せっかくのお茶会です。用意した紅茶やお菓子が無駄になってはいけません。まずは紅茶を召し上がって下さい」
言われ、絶妙なタイミングで淹れられた紅茶を口にすると、豊かな茶葉の香りが口腔から鼻腔へと広がった。
「これは…美味しいですね。香りも良いが、飲んだ後に残る味わいが甘く、爽やかだ」
「ええ。これは私が特別に栽培させている自慢の茶葉です。発酵させず、ハーブティーとして飲んでも美味しいのですよ。さ、お菓子もどうぞ。お口に合うか分かりませんが、これも私が監修したものなんです」
「それでは、お言葉に甘えて」
そう言うと、見た目も彩も美味しそうな菓子の中から、小ぶりな一口パイを摘まみ、口に入れる。
途端、広がった瑞々しい果肉と果汁、そしてバターの香りに思わず目を見開いた。てっきり、これでもかとばかりに甘味が押し寄せてくると思っていたのだが…。
「いかがでしょう?お恥ずかしい話ですが、私はあまり甘い物が得意ではないので、お菓子も従来の使用量を大幅に少なくしているのです。お口に合えば宜しいのですが」
「いえ、大変美味しゅうございます。私もこれぐらいの甘さが好みですので」
「それは良かった!前に弟に食べさせた時は、『貧乏舌』などと言って馬鹿にされましたから」
そう言って笑うランスロットを見ながら、それはそうだろうと心の中で呟いた。
この国の権力者達は皆、貴重な砂糖をふんだんに使った菓子を出す事こそが貴族の格に繋がると思っている。その為、上位になればなるほど甘いお菓子を作らせる。
自分は辺境の田舎貴族だったので、割と適量の砂糖を使ったお菓子で育っていた。その為、王都に来た当初は出される菓子を食べては気分が悪くなっていたものだ。
「ユキヤに食べさせたら、喜びそうだな…」
思わずそんな言葉が漏れる。するとそれに反応したランスロットが興味深げに喰い付いてきた。
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