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第二章
弟子入り試験
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…話を戻すが、その上ウォレンは、魅了のスキルを完全に使いこなす事の出来る『魅了師』なのだ。いくら規格外とは言え、素人同然のユキヤの魅了に惑わされる事は無い…筈。そう、多分。
いや、正直に言うと実はちょっと不安ではあったのだが、こうしてユキヤを前にしてもウォレンには全く動じる気配が無いので、やはり自分の判断は正解だったようだ。
――問題は、悪魔公に対しても動じていないのは流石と言っていいのかどうか分からないという点なのだが。
完全な『契約』ではなく『仮契約』であるからこそ、『異物』としてこの世界から弾かれないよう大人しくしているだけで、本来悪魔公とは、魔王復活レベルの大災害級とされているのだ。
今だとて、魔力切れを考えずに本気を出せば、大魔法使いのウォレンですら瞬殺…はされずとも、致命傷ぐらい負わせられている筈。だから出来ればあまり煽って欲しくないというのが本音だ。
『…でもこいつ絶対、それ分かってて煽ってるよな…』
一重に悪魔公が大人しいのは、ユキヤに力が必要で、認めたくないだろうがこの男が師としての力を持っているのを感じているからだろう。自分の安全をギリギリの状況で確保しつつ、相手を煽って楽しむ。この男最大の悪い癖だ。
「で、結論はどうなんだ?」
「うん、素質はあるね。磨けばかなり光るんじゃないかな?」
「じゃあ…!」
「だからね、テストを受けさせてあげよう。これに合格したら、君の息子を僕の弟子にしてあげようじゃないか!」
「…テスト…だと?嫌な予感しかせん」
「大丈夫!超簡単なものだから」
そう言うと、ウォレンはうず高く積み上がった本の山の中から、一枚の羊皮紙を摘まみ上げるとそれをユキヤに向かってかざした。
「これ、僕への依頼状なんだ。ユキヤ、君これを持って僕の代わりに依頼こなして来てよ。ああ、サインとか諸々は書き終わってるから」
「え!?お、俺が貴方の代わりに?!…って、それ魅了師としてって事ですか!?」
突然の展開に戸惑うユキヤに対し、ウォレンは爽やかな笑顔を浮かべ、頷いた。
「うん。でも超簡単な依頼だからー、君でも出来るよ」
「い、いやいやいや!無理でしょ!俺、魅了の力を使うのなんてまだよく分からないし、そもそもウォレンさんと見た目全然違うし!!」
「あー、それも大丈夫!僕、身バレするの嫌だから、ここ数百年はこれかぶってんだよね~。はい、どうぞ!」
羊皮紙と共に渡されたのは、白磁に金と黒の模様が入った仮面だった。
仮面舞踏会で着けるものに似ている気がしたが、よく見てみると、普通の仮面と違い、目と鼻と口の部分に穴が空いてない。完璧に顔面を隠す用だ。
でもこれ着けたとしたら、顔は隠せたとしても、呼吸したり周囲を見たりする事が出来ないのではないだろうか。
「大丈夫。着けてみてごらん」
言われた通りに恐る恐る仮面を着けてみる。
「…あれ?」
――俺、仮面着けているんだよな…?
そう思ってしまう程、違和感を感じない。まるで皮膚に吸い付くように、見事にフィットしている。
しかもこの仮面、不思議な事に呼吸も苦しくないし、周囲もバッチリ見える。どうやらこの仮面、しっかりマジックアイテムだったようだ。
「ね?平気だったろ?それ着けてても食べ物も普通に食べられるし、あらゆる攻撃もある程度は防いでくれる。しかも、自分では簡単に外せるけど、他人は中々外せないように造ってある。僕の力作だよ!」
うん、確かに凄い。
いいなー。これをかぶっていれば、自分の顔を気にする事無く、堂々と外を歩ける。普段使い用にもう一つ作ってもらえないだろうか。
『…おいユキヤ。確かにそれかぶってればお前の顔は隠れるが、その代わり不審人物になることは覚悟しとけよ?』
仮面に感動と興奮を覚えていた俺に対し、ベルが冷静なツッコミで鎮火してくる。分かってるよそんな事!夢ぐらい見てもいいじゃないか!
そんな俺達を見て、ウォルトはクックッと、心から楽しそうに笑った。
「いいよ。僕の試験をパスしたら、君専用の仮面を作ってあげよう」
「え!本当ですか!?じゃ、じゃあ!着けたらそこら辺にゴロゴロいる普通のモブ顔になる仮面とかお願いします!」
「モブ顔…?」と不思議そうに呟き、首を傾げたものの、「あー…つまり、平凡な顔って事か」と理解したウォルトは、俺の希望を了承してくれた。でもその後に「むしろ変化魔法を会得した方がいいんじゃないかな~」とも言われたけど。
でもあれって、人間がやろうとすると物凄く魔力を使う上に、うっかり気を抜くと元に戻ると聞いた事があるから、今の俺の力量では難しい。
その点、仮面だったら着けてるだけで済むし、修行しなくてもいいからお手軽だ。でも変化魔法は使い勝手が良さそうだから、いずれは習得したいものである。
「さて、それじゃあ話は決まった!いや、助かった~。ユキヤ、僕の代わりに頑張ってね?期待は程ほどにしているから!」
いや、正直に言うと実はちょっと不安ではあったのだが、こうしてユキヤを前にしてもウォレンには全く動じる気配が無いので、やはり自分の判断は正解だったようだ。
――問題は、悪魔公に対しても動じていないのは流石と言っていいのかどうか分からないという点なのだが。
完全な『契約』ではなく『仮契約』であるからこそ、『異物』としてこの世界から弾かれないよう大人しくしているだけで、本来悪魔公とは、魔王復活レベルの大災害級とされているのだ。
今だとて、魔力切れを考えずに本気を出せば、大魔法使いのウォレンですら瞬殺…はされずとも、致命傷ぐらい負わせられている筈。だから出来ればあまり煽って欲しくないというのが本音だ。
『…でもこいつ絶対、それ分かってて煽ってるよな…』
一重に悪魔公が大人しいのは、ユキヤに力が必要で、認めたくないだろうがこの男が師としての力を持っているのを感じているからだろう。自分の安全をギリギリの状況で確保しつつ、相手を煽って楽しむ。この男最大の悪い癖だ。
「で、結論はどうなんだ?」
「うん、素質はあるね。磨けばかなり光るんじゃないかな?」
「じゃあ…!」
「だからね、テストを受けさせてあげよう。これに合格したら、君の息子を僕の弟子にしてあげようじゃないか!」
「…テスト…だと?嫌な予感しかせん」
「大丈夫!超簡単なものだから」
そう言うと、ウォレンはうず高く積み上がった本の山の中から、一枚の羊皮紙を摘まみ上げるとそれをユキヤに向かってかざした。
「これ、僕への依頼状なんだ。ユキヤ、君これを持って僕の代わりに依頼こなして来てよ。ああ、サインとか諸々は書き終わってるから」
「え!?お、俺が貴方の代わりに?!…って、それ魅了師としてって事ですか!?」
突然の展開に戸惑うユキヤに対し、ウォレンは爽やかな笑顔を浮かべ、頷いた。
「うん。でも超簡単な依頼だからー、君でも出来るよ」
「い、いやいやいや!無理でしょ!俺、魅了の力を使うのなんてまだよく分からないし、そもそもウォレンさんと見た目全然違うし!!」
「あー、それも大丈夫!僕、身バレするの嫌だから、ここ数百年はこれかぶってんだよね~。はい、どうぞ!」
羊皮紙と共に渡されたのは、白磁に金と黒の模様が入った仮面だった。
仮面舞踏会で着けるものに似ている気がしたが、よく見てみると、普通の仮面と違い、目と鼻と口の部分に穴が空いてない。完璧に顔面を隠す用だ。
でもこれ着けたとしたら、顔は隠せたとしても、呼吸したり周囲を見たりする事が出来ないのではないだろうか。
「大丈夫。着けてみてごらん」
言われた通りに恐る恐る仮面を着けてみる。
「…あれ?」
――俺、仮面着けているんだよな…?
そう思ってしまう程、違和感を感じない。まるで皮膚に吸い付くように、見事にフィットしている。
しかもこの仮面、不思議な事に呼吸も苦しくないし、周囲もバッチリ見える。どうやらこの仮面、しっかりマジックアイテムだったようだ。
「ね?平気だったろ?それ着けてても食べ物も普通に食べられるし、あらゆる攻撃もある程度は防いでくれる。しかも、自分では簡単に外せるけど、他人は中々外せないように造ってある。僕の力作だよ!」
うん、確かに凄い。
いいなー。これをかぶっていれば、自分の顔を気にする事無く、堂々と外を歩ける。普段使い用にもう一つ作ってもらえないだろうか。
『…おいユキヤ。確かにそれかぶってればお前の顔は隠れるが、その代わり不審人物になることは覚悟しとけよ?』
仮面に感動と興奮を覚えていた俺に対し、ベルが冷静なツッコミで鎮火してくる。分かってるよそんな事!夢ぐらい見てもいいじゃないか!
そんな俺達を見て、ウォルトはクックッと、心から楽しそうに笑った。
「いいよ。僕の試験をパスしたら、君専用の仮面を作ってあげよう」
「え!本当ですか!?じゃ、じゃあ!着けたらそこら辺にゴロゴロいる普通のモブ顔になる仮面とかお願いします!」
「モブ顔…?」と不思議そうに呟き、首を傾げたものの、「あー…つまり、平凡な顔って事か」と理解したウォルトは、俺の希望を了承してくれた。でもその後に「むしろ変化魔法を会得した方がいいんじゃないかな~」とも言われたけど。
でもあれって、人間がやろうとすると物凄く魔力を使う上に、うっかり気を抜くと元に戻ると聞いた事があるから、今の俺の力量では難しい。
その点、仮面だったら着けてるだけで済むし、修行しなくてもいいからお手軽だ。でも変化魔法は使い勝手が良さそうだから、いずれは習得したいものである。
「さて、それじゃあ話は決まった!いや、助かった~。ユキヤ、僕の代わりに頑張ってね?期待は程ほどにしているから!」
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