黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

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第二章

黒の魅了師

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――黒の…魅了師?

この目の前の男を、母はそう言った。
しかし、前世の記憶や知識は勿論、今世でもそういった名前は一切見聞きしなかった。

「ああ、知らないよね。そもそも魅了のスキル自体、持ってる者は稀だから。当然だよ」

ウォレンは戸惑うユキヤに対し、穏やかな笑いを浮かべながら説明を始めた。

「『魅了師』とはね、魅了のスキルをそのまま武器として使用する者の名称さ」

いわく、魅了の力は希少性と有用性はずば抜けているが、殆どの者はそれを完璧に使うことが出来ず、この世界では召喚をする際の補助スキルとして使用されるのが殆どなのだそうだ。
まあ、補助スキルとは言っても、召喚した魔獣達をある程度なら確実に使役出来る能力など、チート以外の何者でもないんだけどね。

たが希に、その力を完璧に使いこなせる者が現れるのだと言う。

単なる補助スキルではなく、そのスキルそのものを 使い、戦う者。

ベルの様な神霊系に匹敵する力を持つ者達はともかく、精霊系でもそこそこの者なら確実に調伏もしくは支配する事が可能であると言うのだから、凄いの一言である。

だがその力を極めた者は、世界にも数える程しか存在せず、現在確認されているのはウォレンを含め、10人にも満たないらしい。

そういえば、第一王子のランスロットがベルを拘束するのに魅了の力をふるっていた気がする。まさか、彼も魅了師なのだろうか?

「勿論、半端な力を持つ「自称」魅了師もいるにはいるけどね。そういう連中は勝手に自滅し、淘汰されていくから、数にカウントされない。だから知る人ぞ知る職業…って感じなんだよ」

確かにそうだろう。自称レベルで言えば、第二王子が正にソレだったから心から納得した。

ってか、前世で色々なRPGをやったけど、そういったスキルを備えていたのは魔王とか神様とかが殆どだったし、その力で自分の信奉者を増やしたりはしていたけど、それ自体を攻撃武器としてはいなかった。

そもそも魅了って、言葉通り相手を骨抜きにして傅かせるスキルだし、どうやって相手を攻撃するんだろう。

「ん~?武器としての魅了の力?え~と、その場で適当な戦力になる従魔を召喚して戦わせるのは当たり前として、広範囲の敵を骨抜きにして戦闘不能にしたり、既に、主人がいる従魔を自分のものにしたり?やっぱたぶらかし系が多いかな?」

ウォレンの説明に、俺はやっぱりねと頷いた。

しかし、たぶらかし系って…。何か如何わしくてネガティブさしか感じないし、誇れる能力かと言われたら首傾げそう。

「でも、例えば自分を守るべき兵士が全員使い物にならなくなれば、平均レベルの武力しかなくとも、対象者を容易く殺したり捕らえたりする事が出来る。それに信頼して使役していた従魔が自分を裏切れば、戦力的にも精神的にも大ダメージを与える事が出来る。それにさっきも言ったけど、召喚士として精霊系はおろか、神霊系すら容易く使役する事が可能だ」

俺の気持ちが思いっきり顔に出てたみたいで、ウォレンが魅了のメリットを的確にプレゼンしてきた。特に最後の精霊系はおろか神霊系すら容易く…には、驚きで目を見開いてしまった。そんな俺に、ウォレンはゆったり口端を上げて目を細める。

「…ね?たかが『たぶらかす』だけのスキルであっても、極めてしまえば物凄く恐ろしい武器になってしまうのさ。だから一時、世界中で魅了師は元より、魅了スキル保有者すらも討伐対象となっていたんだ」

ああ、いわゆる魔女狩りってヤツですね。過ぎたるは猶及ばざるが如し、で母さんも苦労したんだっけ。

「なのにこの馬鹿、よりにもよってそんな時期に魅了師になったと名乗りを上げたんだ。理由を聞いたら「面白いから」って笑いながらそう言ったよ」

「えええー!?」

ウォレンの講義もどきに聞き入っていた俺だったが、ぶった斬るように話に割り込んで来た母さんの言葉に「は?!」と思わず素っ頓狂な声が出てしまった。愕然とする。
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