黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

文字の大きさ
上 下
71 / 194
第二章

騙された!

しおりを挟む
「え!?本当!」

『ああ。魔術の腕は超一級な上、武術も私と張る腕前だ。…けど、ちょっと…いや、かなり癖のある奴でね。というか、お前を探索するのに頼ろうと思っていた昔馴染みってのが、奴なんだ』

母さんが言うには、遠い遠い昔、母さんが勇者達と共に世界を救った時、一緒のパーティーにいた人物らしい。

…って、その昔馴染み、何歳なんだよ!?まさか母さんと一緒にドラゴンの血を浴びて不老不死に…?!

『いや、奴はエルフだから長命なだけなんだ。…まあ、それにしたって長生きだけどな』

「…ちなみに今、何歳?」

『…長生きとだけ言っておこう』

う~ん。やっぱ教えてくれないか。
そうだよな、教えれば自動的に自分の年もバレるし。

『奴は究極な引きこもりな上、偏屈でね。仕事以外は自分の魔力を張った隠家に住んでいるから、私と一緒じゃないと辿り着く事が出来ないだろう。だからどこかで合流して…』

「必要ない」

ずっと黙っていたベルが一言呟いた。次の瞬間。

「――へ?」

俺の目の前には目を見開き、呆然とした母さんが立っていたのだった。







「こ…ここは…?」

呆然といった様子の母だったが、俺の姿を見るなり目をクワッと見開き俺へと突進し、抱き着いた。

「ぐえっ!」

いや、抱き着いたというよりもサバ折りだ、これ。
俺は抱き締める腕になおもギリギリ力を込めてくる怪力母の背中を必死に叩いた。

「か…母さん。く…るしい…」

俺の声にハッとしたように、母が腕の力を緩めた。
ああ…。やっと息が出来る…。

「す、すまん!お前の姿を見て理性が飛んだ。ああ…それにしても、よくぞ無事で…!…ってか、何で私はここにいるんだろうか?」

そこ、やっと気が付きましたか。遅いですよ母さん。

「これからユキヤの師匠候補とやらの所にいくんだろう?だから手間を省いてやっただけだ」

「貴方がユキヤの従魔…「仮契約者だ!」」

「ベル!今そこは拘る所じゃないから!」

「ベル…。そういえば、ユキヤが貴方に向かってそう言っていたっけな」

壮絶な美貌に魅了されるでもなく、ましてや圧倒的な魔力に畏怖するでもなく。ベハティは、どこからどう見ても上級悪魔だと分かるベルと臆する事無く対峙した。

「召喚に失敗して、うっかり呼び出した下級魔獣というユキヤの言葉を疑いもしなかったが…。ユキヤの魅了スキルの高さを考慮しなかった私の判断ミスだったな…。空間転移をこんな一瞬で…。まさか、このような強大な…」

「俺は魔力を極限まで抑えていたからな。お前らごときに見破れられる事の方が問題だ。よって、そこら辺は消沈する事も恥じる事もないぞ?」

「…それは…。お心遣い痛み入る」

苦笑しながらそう言うと、ベハティは居住まいを正し、ベルに深々と頭を下げた。

「此度、愚息を救って下さった事、深く感謝申し上げます。偉大なる黒の王よ。貴方がおられなければ、私はユキヤとこうして会う事も話す事も出来なかった」

「気にするな。将来の伴侶を守るのは当然の事だ」

「…はい…?」

母さんは一瞬呆けた後、恐る恐るといった様子で俺の方へと顔を向けた。

「ユ…ユキヤ…?お前…まさか…!自分の身を引き換えに契約を…」

「ち、違う!違います!!ベル!何が伴侶だ!勝手な事言うなよ!もう!」

俺は必死に否定すると、契約に至った様子を事細かに説明した。すると何故か、母さんが呆れ顔になった。

「…それは…。最初のハードルを高く設定し過ぎましたね。いや、囚われる前だから強気に出たんでしょうが、見事に自分で言った言葉に足元を掬われておられる。悪魔とは本来、そういった心理戦にはずば抜けて長けた種族と聞き及んでおりましたが?」

囚われる?何にだ?

母さんが、意味不明な台詞をベルに向かって言っている。しかも何となく皮肉気だ。対するベルはそれに対して反論するでもなく、苦虫を噛み潰したような顔になっている。

「あ、そうだベル!お前、身体平気か?母さん呼び出すなんて、物凄い魔力使ったろ?」

「ああ?…いや、そうでもない。お前のそのブレスレットを触媒にしたから、使った魔力は…そうだな。せいぜい今朝喰った朝食程度だ」

「あ、そうか。それは良かっ…た…?」

ホッとしたついでに気が付いた。

あれ?確かブレスレットを触媒に夢に干渉するのに、食事じゃ対価に足りないからって俺、ディープキス強請られたよな?

慌てて母さんに聞いたところによると、精霊系は夢に…というより、精神干渉が最も得意な種族だから、今の状態のベルでも簡単に干渉出来ただろうとの事。

「ましてや、そのブレスレットを触媒にしたのなら、殆ど魔力は要らなかったと思うぞ?」

母の言葉を聞き、俺はブルブルと拳を震わせた。
お…俺のあの羞恥と苦悩と葛藤は一体…!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

花の聖女として異世界に召喚されたオレ

135
BL
オレ、花屋敷コガネ、十八歳。 大学の友だち数人と旅行に行くために家の門を出たらいきなりキラキラした場所に召喚されてしまった。 なんだなんだとビックリしていたら突然、 「君との婚約を破棄させてもらう」 なんて声が聞こえた。 なんだって? ちょっとオバカな主人公が聖女として召喚され、なんだかんだ国を救う話。 ※更新は気紛れです。 ちょこちょこ手直ししながら更新します。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。 R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17) (第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...