黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

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第二章

母に相談

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「う~~くそっ!」

覚悟を決めてベッドに腰かけているベルの元へと近寄り、赤く火照った顔を近付けた。

ベルの方はと言えば、余裕の表情を浮かべ、うろたえている俺の様子を面白そうに眺めている。くっそ~!このドS悪魔!

…しかし。昨日ベルにキスされた時も思ったけど、こうして間近で見ると本当に綺麗な顔をしている悪魔だな。

染み一つ無い、白磁のような滑らかな肌。俺と同じぐらいに短めに切っている、鈍色が混じった金髪。少し長めの前髪が、目元にパラリとかかっている。
その間から見える深紅の瞳は、クリムゾンレッドと呼ばれる最高級品のルビーと同じか、それ以上の吸い込まれそうな美しさでもって、深く紅く煌めいていた。

唇を思う様貪られてしまった、あの時。この双眼に色濃く宿っていた『欲』に、意識が絡め取られそうになって…。

「…おい。なにそこで止まってんだ?」

ベルの言葉にハッと我に返った。いつの間にか見惚れていたらしい。動揺した俺は、普段は心で呟いてた言葉をうっかり口にしてしまう。

「あ、いや…。その、綺麗だなって思って」

その瞬間、余裕の笑顔を浮かべていた顔が、思わずといった風にキョトンとした表情に変わった。

あ、美形がそういう顔をすると、なんだか妙に可愛く見える。

それが可笑しくて思わず笑ってしまった俺を、ベルが不機嫌そうな顔でギロリと睨み付けた。あれ?何か気に障ったのかな。

「…普通のキスで勘弁してやろうと思ったが、気が変わった。思いっきりディープなヤツをしてもらおうか!」

「ええええっ!なんでー!?」

どうやら俺が馬鹿にしたと思われたようだ。そんなつもりは無かったと必死に言い募り、拝み倒したが、結局その後ベルの機嫌が直る事は無かった。




◇◇◇




『ユキヤ!ユキヤなのか?!』

「うん、俺だよ母さん。心配させてごめん」

結局あの後。ベルの協力を諦めた俺は、一か八かで直接母さんにコンタクトを取ることにしたのだった。幸い母は今現在、アスタール公爵邸にいないらしい。

『お前が例の悪魔に連れ去られたって聞いてすぐに屋敷を出たんだ。お前を救出するのに、昔馴染みの知恵を借りようと思ってね』

「そっかぁ、良かった!」

王家の監視がつく前に脱出?してて、心底ホッとした。今現在は、首都からかなり離れた町の宿にいるらしい。俺はベルの事も含め、今まで起こったことをかいつまんで説明した。

『…成る程。じゃあ私に張り付いていた虫共は、元老院の手先だったって訳だ。目障りだったから全員ブチのめしたんだけど、正解だったったようだね』

あ、しっかり張り付かれてたんだ。…いや、そんなブチのめす前に、どこの誰かか聞こうよ。え?「俺の事が心配で気が立っていたのに、そんな余裕あるか!」ですか。本当にすみませんでした。

「あのさ、母さん。…父さん達はどう?心配してる…よな?」

『そりゃー、可愛い息子が凶悪な悪魔に連れ去られたんだ。心配しない親はいないだろう。私もさっさと出て行ってしまったから、その後の事は分からんが、お前が城で保護されていた時のウェズレイなんて、もう傍から見ても分かるぐらい、どん底に落ち込んでいたぞ』

うう…やっぱりな。
ウェズレイ父さん、今頃寝込んだりしてないかな。テオも真面目だから、自分を責めてなきゃいいんだけど。

『ま、お前の話しでは、セオドアの奴は色々知ってるみたいだから、監視が外されたらウェズレイやテオに本当の事を話すだろ。…それにしてもまさか、お前が悪魔公デーモンロードを召喚していたとは…。ユキヤ、お前って本当に…。いや、今更だな』

はぁ…と、母さんの深い溜息と共に吐き出された台詞に、申し訳ないと思う反面、含みのある言葉に心中かなり複雑だ。俺ってそんなに問題児なのかな?…まあ、そうじゃないとは言えないけど。

「それでさ、母さん。俺、母さん以外の人に魔法とか武術とか、色々教えてもらいたいんだけど」

『何故だ?そんなもん、私が教えてやれるだろう』

そうだよね。今迄ずっと師匠として色々鍛えてくれていたんだし。

「うん、俺も母さんの方が良いんだけど、それだと母さんが俺の産みの親だって王宮側にバレた時、色々面倒だろ?その事で足がつくかもしれないからさ。むしろ母さんは俺のいない間、アスタール公爵家でテオの傍にいて欲しいんだ」

産みの親である母さんが、俺の探索を打ち切ってアスタール公爵家に戻れば、母さんが俺を匿っているという疑いはある程度晴れる筈。
それに今回の事で一番ショックを受けているのはテオだから、父さん共々支えてあげて欲しい。そしてほとぼりが冷めたら、俺の無事を彼に伝えて欲しいのだ。

そう言うと、母さんは苦笑しながら了解してくれた。

『分かった。お前の言う通りにしよう。…それでだな。お前の師匠候補だが、当てが有るには有るんだが…。』
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