53 / 194
第一章
やはり一癖ありました
しおりを挟む
第一王子様、やはり父さんの思っていた通り一癖ありました。
「な…なんですか、その『消えてもらう』って…?」
前世では、テレビや映画でよく見た台詞。悪役なんかの決め台詞の一つだけど……まさか、それか?それなのか!?
「え~?まんま、言葉の意味だけど?君にこのままこの国にいられたら、君もだけど私もちょっと……いや、かなり困る事態になってしまってね」
相変わらず物騒な事言いながら、朗らかなイケメンスマイルをふりまく王子様が恐い……。俺がこの国にいて困る事って一体全体何なんだ!?
「実はね。君が眠っている間に、君の処遇を元老院どもが内々に決めてしまったんだよ。君を私の正妃にしようってね」
「……せい……ひ?」
せいひ……せいひって、あれかな?正否……いや、成否?
「なんか現実逃避しているっぽいから、ちゃんとした意味を教えてあげる。正妃……つまり、私の妻、ワイフ、嫁。分かった?」
……分かりたくなかったけど、分かった。ご説明有難う御座いました!
「さっきも話したけど、私の長年の努力(?)により、時期王太子はほぼローレンスで決まりな雰囲気になっていたんだ。だけど、ほら……ここにきて、ローレンスが色々やらかしてくれただろう?」
ベルによって目を壊された事により、第二王子の立太子は取り消された。そして王太子選びは、再び振り出しに戻ってしまったのだ。
「箝口令が敷かれても、王宮では既に周知の事実となっている為、私を推す派閥が俄然張り切り出してしまってねぇ。更にこれ幸いと君に目を付けたって訳」
「……何でそこで俺に目をつけるんですか!?」
あり得ないだろう!という意味を込めて思わず叫んだ俺を、ランスロットが残念な子を見るような目で見つめる。
「そりゃあ、武力、魔力、家柄、美貌……どれを取っても秀逸だからに決まってるだろう?しかも精霊系にすら喧嘩をふっかけるその度胸。そんな相手を伴侶に据えれば、私が魔力無しでも十分国王としてやっていける……というのが第一王子派の言い分だよ」
……そう言えばこの王子様、官民問わず滅茶苦茶評判の良い人で、魔力無しって事だけが唯一の弱点とされていたんだったっけ。
「元老院は元より、父上も……ひょっとしたら悪魔公を召喚出来るかもしれない者をこちら側に取り込んでおくべき……って考えたんだろうね。そういう訳で、双方の思惑が上手く合致して、君を私の正妃に宛がうって話になった訳」
なんだその勝手な思惑。そんな事を本人達のいない間に決めやがって何様だ!?俺の気持ちや目の前のランスロット王子の気持ちなんて、どーでもいいですって言っているようなもんだろ!失礼にもほどがある!
「そんなの絶対お断りです!」
俺は憤慨しながらキッパリ言い切ったが、王子の返事は実に容赦がなかった。
「断れると本気で思ってるの?大貴族の息子とはいえ、なんの爵位も肩書も持っていない君が、国の決めた決定事項に。ハッキリ言うけど、国の決め事に君が拒否する権利なんてないんだよ」
「そ、それじゃあ、貴方が断れば…」
そもそも彼は王太子候補であり、次期国王候補者だ。その彼が拒否をすれば、いくら元老院とかでも無碍な事は出来まい。
「生憎、いくら私が王族とは言え、国の機関をおいそれと敵には回せないよ。親族間のトラブルもしかり。政治はパワーバランスで成り立つものだからね。それこそ王族の一人として、反発や混乱は避けたい。それに……」
ランスロット王子の顔から笑みが消えた。
「ここで私が君との結婚を拒否すれば、君にとってもっと最悪な事が起こる可能性が高い。例えば、そもそもあの悪魔公を呼び出したのは実は君で、混乱に乗じて第二王子を殺そうとした……とか、罪状をでっち上げて罪人にした挙句、奴隷にするとか。それをネタにアスタール公爵家の取り潰しをちらつかせ、君に何でも言う事を聞かせようとする……とかね」
「そ…そんな…こと…」
まさかそんな。何でそこまでする必要があるって言うんだ。
「むしろ、そっちの方が大多数にとって美味しい事になる。私の父やその兄弟、他の王族関係者達にとって、君の父上はいまだに憧れと欲望の対象だ。その息子……しかも彼と瓜二つの容姿を持つ君を隷属させる事が出来るんだから、それは魅力的だろう」
……つまり、もし俺が国家に隷属されたりなんてしたら、公然と見知らぬ野郎共の慰み者になる……って事か。うわ、全身鳥肌立ってきた。
「君の両親も、そういう事態をちゃんと想定して、君を籠の鳥にしていたんだろう。……だが、君は既に安全な籠から外界へと出てしまった。君は世にも珍しい、美しく希少な金の鳥。ハッキリ言って私との結婚強要なんて、ぬるい方だよ」
「………」
「ショックを受けた?温室育ちの君には、ちょっとキツイ話だったかもしれないね」
いや、確かにこの17年間は温室育ちだったけど、それ以前の16年間は一般庶民やっていた。それで映画やドラマ、アニメや漫画や小説…等を観たり読んだりしていたから、そういうディープで汚い世界の事は知識としては割とよく知っている。
ただ、そういう事態が自分の身に降り掛かってきたという事実にショックを受けただけだ。
「正直、君が私の妃っての自体は悪くないと思う。君は正義感が強くて優しくて、とても魅力的な人だからね。でもだからこそ、君が私の正妃になってしまえば、私が王太子となり次期国王になってしまうだろう。私はそんなの御免だ。だから、君には消えてもらいたいんだ」
「な…なんですか、その『消えてもらう』って…?」
前世では、テレビや映画でよく見た台詞。悪役なんかの決め台詞の一つだけど……まさか、それか?それなのか!?
「え~?まんま、言葉の意味だけど?君にこのままこの国にいられたら、君もだけど私もちょっと……いや、かなり困る事態になってしまってね」
相変わらず物騒な事言いながら、朗らかなイケメンスマイルをふりまく王子様が恐い……。俺がこの国にいて困る事って一体全体何なんだ!?
「実はね。君が眠っている間に、君の処遇を元老院どもが内々に決めてしまったんだよ。君を私の正妃にしようってね」
「……せい……ひ?」
せいひ……せいひって、あれかな?正否……いや、成否?
「なんか現実逃避しているっぽいから、ちゃんとした意味を教えてあげる。正妃……つまり、私の妻、ワイフ、嫁。分かった?」
……分かりたくなかったけど、分かった。ご説明有難う御座いました!
「さっきも話したけど、私の長年の努力(?)により、時期王太子はほぼローレンスで決まりな雰囲気になっていたんだ。だけど、ほら……ここにきて、ローレンスが色々やらかしてくれただろう?」
ベルによって目を壊された事により、第二王子の立太子は取り消された。そして王太子選びは、再び振り出しに戻ってしまったのだ。
「箝口令が敷かれても、王宮では既に周知の事実となっている為、私を推す派閥が俄然張り切り出してしまってねぇ。更にこれ幸いと君に目を付けたって訳」
「……何でそこで俺に目をつけるんですか!?」
あり得ないだろう!という意味を込めて思わず叫んだ俺を、ランスロットが残念な子を見るような目で見つめる。
「そりゃあ、武力、魔力、家柄、美貌……どれを取っても秀逸だからに決まってるだろう?しかも精霊系にすら喧嘩をふっかけるその度胸。そんな相手を伴侶に据えれば、私が魔力無しでも十分国王としてやっていける……というのが第一王子派の言い分だよ」
……そう言えばこの王子様、官民問わず滅茶苦茶評判の良い人で、魔力無しって事だけが唯一の弱点とされていたんだったっけ。
「元老院は元より、父上も……ひょっとしたら悪魔公を召喚出来るかもしれない者をこちら側に取り込んでおくべき……って考えたんだろうね。そういう訳で、双方の思惑が上手く合致して、君を私の正妃に宛がうって話になった訳」
なんだその勝手な思惑。そんな事を本人達のいない間に決めやがって何様だ!?俺の気持ちや目の前のランスロット王子の気持ちなんて、どーでもいいですって言っているようなもんだろ!失礼にもほどがある!
「そんなの絶対お断りです!」
俺は憤慨しながらキッパリ言い切ったが、王子の返事は実に容赦がなかった。
「断れると本気で思ってるの?大貴族の息子とはいえ、なんの爵位も肩書も持っていない君が、国の決めた決定事項に。ハッキリ言うけど、国の決め事に君が拒否する権利なんてないんだよ」
「そ、それじゃあ、貴方が断れば…」
そもそも彼は王太子候補であり、次期国王候補者だ。その彼が拒否をすれば、いくら元老院とかでも無碍な事は出来まい。
「生憎、いくら私が王族とは言え、国の機関をおいそれと敵には回せないよ。親族間のトラブルもしかり。政治はパワーバランスで成り立つものだからね。それこそ王族の一人として、反発や混乱は避けたい。それに……」
ランスロット王子の顔から笑みが消えた。
「ここで私が君との結婚を拒否すれば、君にとってもっと最悪な事が起こる可能性が高い。例えば、そもそもあの悪魔公を呼び出したのは実は君で、混乱に乗じて第二王子を殺そうとした……とか、罪状をでっち上げて罪人にした挙句、奴隷にするとか。それをネタにアスタール公爵家の取り潰しをちらつかせ、君に何でも言う事を聞かせようとする……とかね」
「そ…そんな…こと…」
まさかそんな。何でそこまでする必要があるって言うんだ。
「むしろ、そっちの方が大多数にとって美味しい事になる。私の父やその兄弟、他の王族関係者達にとって、君の父上はいまだに憧れと欲望の対象だ。その息子……しかも彼と瓜二つの容姿を持つ君を隷属させる事が出来るんだから、それは魅力的だろう」
……つまり、もし俺が国家に隷属されたりなんてしたら、公然と見知らぬ野郎共の慰み者になる……って事か。うわ、全身鳥肌立ってきた。
「君の両親も、そういう事態をちゃんと想定して、君を籠の鳥にしていたんだろう。……だが、君は既に安全な籠から外界へと出てしまった。君は世にも珍しい、美しく希少な金の鳥。ハッキリ言って私との結婚強要なんて、ぬるい方だよ」
「………」
「ショックを受けた?温室育ちの君には、ちょっとキツイ話だったかもしれないね」
いや、確かにこの17年間は温室育ちだったけど、それ以前の16年間は一般庶民やっていた。それで映画やドラマ、アニメや漫画や小説…等を観たり読んだりしていたから、そういうディープで汚い世界の事は知識としては割とよく知っている。
ただ、そういう事態が自分の身に降り掛かってきたという事実にショックを受けただけだ。
「正直、君が私の妃っての自体は悪くないと思う。君は正義感が強くて優しくて、とても魅力的な人だからね。でもだからこそ、君が私の正妃になってしまえば、私が王太子となり次期国王になってしまうだろう。私はそんなの御免だ。だから、君には消えてもらいたいんだ」
6
お気に入りに追加
935
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

収納大魔導士と呼ばれたい少年
カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。
「収納魔術師だって戦えるんだよ」
戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる