黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

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第一章

天使レリエル

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「…やはりてめぇだったか、レリエル」

苦々しそうにベルが呟く。

そして現れたのは、虹色に光る髪と金色の目を持つ、絶世の美女…と言っても過言では無い麗人だった。
ベルとは違い、その身には白い生地をベースにした服に身を包んでいる。そしてその背中には、光る純白の羽……。間違いない、天使だ。

「うわ…。まんまイメージ通り……」

思わず見惚れてしまった俺の頭上にベルの鉄拳が炸裂する。虹色の天使は涙目で頭を摩る俺を上から下までじっくり見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「やだ!生でちゃんと見てみたら、本当に綺麗!外見も魂も、すごーく私好みだわ!ねぇ貴方、こんな横暴で俺様悪魔なんて捨てちゃって、私に乗り換えない?」

「おい、貴様!なにサラッと勧誘してやがる!しかも俺は無視か!?」

「やっだ!そんな事ないわよぉ!お久し振りねぇ~ベリアル?百年に一度の恒例行事、第2010回天魔大戦以来かしらね?」

「……あん時はよくも、美人局なんて汚ねぇ技で工作員バラまいてくれたな……!」

「それ言うんだったら、あんただってうちの若いの、どんだけタラシ込んで骨抜きにしてくれたのよ!?ハッキリ言って一個師団、丸々使い物になんなかったわよ!」

「知るか!たまたま遊びたそうにしてたから、遊んでやっただけだ」

「それにしちゃあ、有望株ばっかりチョイスしてくれたわよね。まったくもう……。欲求不満だったんなら、言ってくれれば私が相手をしてあげたのに……」

「死んでも、てめぇの相手なんぞ御免だ!」

「やぁね、つれないったら!……でもそうね、こんな可愛い子がいるんじゃ、他に目が向かないかもね。ああ……でも本当、食べちゃいたいぐらい綺麗……!」

……え~と……。

俺はベルとレリエルという名の天使の言い争いを呆然と見ながら、汗を流した。確か悪魔と天使って天敵同士で、会えば即、問答無用の殺し合いをする程仲悪い……と前世の知識にあったのだが。

いや、今見ているだけでも仲が良いとは言えないけど。

でも一触即発って雰囲気じゃないし、割と気心知れている風なんだよね。

それにしても……。

見た目の印象を裏切り、キャーキャーちょっと低めのやや甲高い声で騒いだり、涎を垂らさんばかりにうっとりとした顔でこっちを見ているその天使は、頭の軽いどっかの芸能人のようで、見た目とのギャップが半端ない。

なんていうか……とても残念な感じがする。そんな彼女を、ベルが牙を剥きながら威嚇する。

「寄るんじゃねぇ!この色情狂のカマ天使が!見るな!寄るな!こいつが穢れる!!」

――はい?カマ天使……?

……え?ちょっと待って。って事は、この人……いや、この天使……まさか。

「彼女…いや、彼は懐妊を司る、妊婦の守護天使なんだよ。だからちょーっとばかし女性的というか……。こう見えて、割と脱げば凄いよ?」

ランスロット王子が苦笑交じりにそう説明してくれるけど、あれ……ちょっとばかしって言うか?女性的と言うより、完全に女性だろ!

「やだー!ランちゃん!脱ぐだなんて、ふ・し・だ・ら!清らかな乙女にセクハラ発言しないでくれる?!」

体をくねくねさせ、褒められちゃったどーしよう、みたいに両手を顔に当て頬を染める彼女……いやオカマ天使様。

俺の中で、天使に対し抱いていた幻想が打ち砕かれる音が聞こえた気がした。

……そうか……。脱ぐと凄いんだ……。ひょっとして、ベルと同じく腹筋6つに割れてんのかな……。いや、全然見たくないけど……。

俺は現実逃避をしつつ、自分で清らかな乙女だなどと言い放つ残念カマ天使を放置して、ランスロット王子に疑問をぶつけた。

「殿下。貴方は一体なんなんですか?」

魔力無しと言って魔力があったり、天使を従えていたり。本当に、一体この王子は何者なんだろう。

そんな俺に、ランスロット王子は事もなげにサラリと告げた。

「君と同じく召喚士さ。で、このレリエルは私の守護天使だ」
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