35 / 194
第一章
下位悪魔の消滅
しおりを挟む
バサリと広がる、ぬばたまの黒い羽根。
初めて見た時と同じ、優美極まる蠱惑的な美貌。そう、俺が呼びだした悪魔とは、魔界を統べる7柱の魔王の一柱、その筆頭とも言える大悪魔。別名“無価値の王”ベリアルだったのだ。
ベリアルは俺を庇う様に前に立つと、下位悪魔に向き合った。
下位悪魔はと言えば、明らかに怯えた様子。それはそうだ。下位悪魔にしてみれば、悪魔公など、神にも等しい存在。それが今、突如として自分の目の前に現れたのだから。
ベリアルは冷たい眼差しを下位悪魔に向け、口角をあげた。
「貴様ごとき雑兵が。よくぞ俺のモノに傷をつけてくれたもんだ。しかもあわよくば…とばかりに、鼻の下伸ばしやがって。身の程知らずのクズが…!」
最後、吐き捨てるように呟かれた言葉に、内心で首を捻る。
何だ鼻の下伸ばすって?ってか、伸びてたか?悪魔の表情って、よく分からん。
次の瞬間、なんと下位悪魔はあまりの恐怖に恐慌状態になったのか、よりにもよってベルに襲い掛かってくる。だが、当然というかベルは全く動ぜず、人差し指を横に一閃させた。
「まずは目だ。その汚らわしいガラス玉に俺のモノを映す事を止めろ」
下位悪魔の目から黒い血液のようなものが噴き出した。
「次に…。俺のモノを貫いたその手…そして足…」
そうベリアルが口にするたび、下位悪魔の身体の一部が吹き飛び、塵と化す。そうしてジワジワと少しずつ身体を削っていく、まさに一方的な拷問とも言える攻撃に、思わず下位悪魔への同情が沸き上がってきてしまう程だ。
「…ッ…」
流石にもう立っていられず、ガックリと地面に膝をつく。
そんな俺に気付いたベルは、目の前でもがき苦しんでいる下位悪魔に手をかざした。
「時間切れだ。本当ならもっと遊んでやるつもりだったのだがな。慈悲をくれてやる。…消えろ」
そう言い放った言葉通り、下位悪魔の身体は黒い粒子と化し、霧散して消えた。
あ…駄目だ。もう目まで霞んできた。
グラリと傾いだ身体は、いつの間にかベルの腕に抱き抱えられていた。
ベルは俺の身体を一瞥すると、貫かれた部分の服を乱暴に引き千切る。…おい、もうちょっと紳士的にできねえのかよ!
俺の不満をよそに、ベルは未だに血を流し続けている傷口に唇を近づけると、そのまま吸い付いた。
「ッ…!」
鋭い痛みに身体がビクリと跳ねる。
だがすぐにその痛みはどんどんと小さくなっていき、やがて完全に消え失せた。どうやらベルが傷口を塞いでくれたようだ。
苦痛から解放され、ホッと安堵の吐息が漏れる。
と同時に、緊張で張り詰めていた身体が弛緩した。貧血と疲労のせいか、目眩を伴う眠気が一気に襲いかかってきて目を開けていられない。
「…べ…ル…」
瞼が下りる直前、俺は無意識に彼の名を呼んでしまった。
そんな俺を、ベルは優しい手付きで床に横たわらせる。そして静かに立ち上がり、指をパチリと鳴らした。
パンと、俺達を包んでいた防御結界が霧散し、消える。
途端、遮断されていた音が一気に耳に届いた。
初めて見た時と同じ、優美極まる蠱惑的な美貌。そう、俺が呼びだした悪魔とは、魔界を統べる7柱の魔王の一柱、その筆頭とも言える大悪魔。別名“無価値の王”ベリアルだったのだ。
ベリアルは俺を庇う様に前に立つと、下位悪魔に向き合った。
下位悪魔はと言えば、明らかに怯えた様子。それはそうだ。下位悪魔にしてみれば、悪魔公など、神にも等しい存在。それが今、突如として自分の目の前に現れたのだから。
ベリアルは冷たい眼差しを下位悪魔に向け、口角をあげた。
「貴様ごとき雑兵が。よくぞ俺のモノに傷をつけてくれたもんだ。しかもあわよくば…とばかりに、鼻の下伸ばしやがって。身の程知らずのクズが…!」
最後、吐き捨てるように呟かれた言葉に、内心で首を捻る。
何だ鼻の下伸ばすって?ってか、伸びてたか?悪魔の表情って、よく分からん。
次の瞬間、なんと下位悪魔はあまりの恐怖に恐慌状態になったのか、よりにもよってベルに襲い掛かってくる。だが、当然というかベルは全く動ぜず、人差し指を横に一閃させた。
「まずは目だ。その汚らわしいガラス玉に俺のモノを映す事を止めろ」
下位悪魔の目から黒い血液のようなものが噴き出した。
「次に…。俺のモノを貫いたその手…そして足…」
そうベリアルが口にするたび、下位悪魔の身体の一部が吹き飛び、塵と化す。そうしてジワジワと少しずつ身体を削っていく、まさに一方的な拷問とも言える攻撃に、思わず下位悪魔への同情が沸き上がってきてしまう程だ。
「…ッ…」
流石にもう立っていられず、ガックリと地面に膝をつく。
そんな俺に気付いたベルは、目の前でもがき苦しんでいる下位悪魔に手をかざした。
「時間切れだ。本当ならもっと遊んでやるつもりだったのだがな。慈悲をくれてやる。…消えろ」
そう言い放った言葉通り、下位悪魔の身体は黒い粒子と化し、霧散して消えた。
あ…駄目だ。もう目まで霞んできた。
グラリと傾いだ身体は、いつの間にかベルの腕に抱き抱えられていた。
ベルは俺の身体を一瞥すると、貫かれた部分の服を乱暴に引き千切る。…おい、もうちょっと紳士的にできねえのかよ!
俺の不満をよそに、ベルは未だに血を流し続けている傷口に唇を近づけると、そのまま吸い付いた。
「ッ…!」
鋭い痛みに身体がビクリと跳ねる。
だがすぐにその痛みはどんどんと小さくなっていき、やがて完全に消え失せた。どうやらベルが傷口を塞いでくれたようだ。
苦痛から解放され、ホッと安堵の吐息が漏れる。
と同時に、緊張で張り詰めていた身体が弛緩した。貧血と疲労のせいか、目眩を伴う眠気が一気に襲いかかってきて目を開けていられない。
「…べ…ル…」
瞼が下りる直前、俺は無意識に彼の名を呼んでしまった。
そんな俺を、ベルは優しい手付きで床に横たわらせる。そして静かに立ち上がり、指をパチリと鳴らした。
パンと、俺達を包んでいた防御結界が霧散し、消える。
途端、遮断されていた音が一気に耳に届いた。
7
お気に入りに追加
935
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる