黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

文字の大きさ
上 下
23 / 194
第一章

本当に守ってくれるのか?

しおりを挟む
ちなみにベルはと言うと、今現在は俺の服の中にてぬくぬくしている状態だ。流石に礼服の腕に巻き付けとく訳にもいかないからな。

しかし、こいつ本当にいざって時、俺を守ってくれるのだろうか。

ベルの気が向いた時には、しっかり負けてました…なんて事になったらシャレにならない。

実はベルの正体は、非常に高名で物凄く強い悪魔なのだ。が...小蛇の姿でいると、とてもそう見えない。セクハラチックなただの喋る蛇って感じだ。(ただの蛇が喋るかどうかはおいといて)

まあ、それでもベルが俺の駄々洩れていたスキルを調節してくれたお陰で魔力コントロールが安定している。ベルにしてみれば、俺が無自覚タラシ込みスキル魅了で周囲を無差別にタラシ込むのが気に喰わないだけらしいが、結果的にはとても助かってる。

それに一週間、なんだかんだと一緒にいるので情が湧いてしまった。本人には言わないが、今では可愛いペット程度には愛着を持っている。

しかし、事あるごとに俺の唇にコツンコツンと口をつけるの止めてくんないかな。

蛇の姿だからただのペットとの戯れに見えるけど、これ元の姿で考えたらかなりのセクハラだぞ。

そんな事を考えていたら、上着のボタンの間からベルがニュッと顔を出した。そして当然のように、俺の唇にコツンと口をくっつける。考えてたそばから。このセクハラ野郎めが。

そう思った一瞬後、元の姿に戻ったベルが俺の目の前に腰かけていた。

足を組み、偉そうにふんぞり返ったその姿は相も変わらず美しかった。最も、しなやかな毛並みをもつ肉食獣のような、野性味溢れる危険な美しさであるが。

「ふ~ん….よく似合っているな。流石は俺の嫁だ」

じっくり、上から下まで舐めるように俺を見てご満悦な様子に、目が半閉じになる。嫁じゃねえし。

「ベル。お前、本当に俺が危なくなったら助けてくれるんだよな?」

「あぁ?なんだお前、今から敗北宣言か?決闘が怖いってんなら、俺が連れて逃げてやるぞ?最も、行き先は魔界限定だがな」

「いらんわ!だいたいなー、お前がいるせいで一匹も召喚獣を獲得できなかったんだぞ!ちょっとはその責任取れって言ってんだよ!」

「それは諦めろ。俺が傍にいる限り、他のヤツが従魔になるのを許す気は無い。そもそも俺がいるせいでって言うがな、元はと言えばお前が不用意に召喚術を発動させて俺を召喚しちまったのが原因だろうが」

突き放すように正論を言われてしまえば、こちとらぐうの音も出ない。無知は罪って言葉があるけど今現在、その意味が身に染みて分かる。

「ま、安心しろ。俺だとて死体を抱く趣味はない。死ぬ前には必ず助けてやるさ」

…瀕死状態になんなきゃ助けてくれないって宣言され、どこをどう安心できると言うのか。

まあ、これから戦うであろう、あのバカ王子も、俺を殺そうとまでは考えてないだろう。そうだ、もしもの時の事は考えず自分自身の力で勝つこと。これだけを考えていよう。

他人をあてにするなんて、男としてみっともないもんな。知らず握りしめた拳の余波で、右手首につけたブレスレットがシャラリと揺れた。

そうこうしているあいだに、夕闇に浮かび上がる巨大な要塞のような建物が見えてきた。





多分、魔力でライトアップされているのだろう。その存在を誇示するように、堂々とそびえ立っている。
そしてその先には、某テーマパークのようにライトアップされた白亜の城も小さく見える。周囲には無数の小さな明かりが見えるから、城下町が広がっているのだろう。


でもあるアスタール公爵家からあまり出たことがなかったから、このゴタゴタを無事切り抜けたら城下町を見学するってのもありだな。

そう、全ては今夜の戦いを乗り越えてからだ。

「ベル、もうすぐ学院に着くから、蛇に戻れ」

「ああ。ま、せいぜい俺の手を煩わせんように頑張れよ」

激励なのか忠告なのか。

そう言い放つと、ベルは再び蛇の姿に戻るなり俺の唇をコツンと突っついた後、服の中に潜り込んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

収納大魔導士と呼ばれたい少年

カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。 「収納魔術師だって戦えるんだよ」 戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

処理中です...