古神偃武

西崎 劉

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第一幕 アンドロギュヌスの鍵

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 道中を楽しみたかったが、時間が無い事が明白だったので、旅支度を整えるとミルの力を使って王都の外れに連れていって貰った。
(《時空を渡る》って、凄い事なんだ……)
 父親に見送られ、ロバに跨がりチヌルヌを出たのは朝一番。
 弟たちは心配そうにスタンを見送った。
 旅をした事もない、それも身を守る術すら持たない娘を送りだすのだから心配するのは当たり前だろう。
 弟の一人が同行しようかと申し出てくれたが、大丈夫だと言って辞退した。
家族の見送っていた姿が見えなくなったのを確認したスタンは、ミルの力を行使する。
 思うだけで良かった。
 脳裏にかなりの上空から見下ろした景色が広がり、見える景色に対する様々な《知識》が当たり前の様に存在し、それに基づいてスタンは王都の手前の村へ行く事を願った。
 願いは実現し、村の手前にある林の中に、瞬きほどで移動している自分を知る。
 直接王都に入っても良かったのだが、スタンは後々困るだろうと想像していた。
 何故なら、王都に入る前に、門前で通行証を見せて許可を取るという作業があるのだ。
 道に迷って林を抜けるのに少々時間を要したが、それでも昼には村に入って昼食を取る事が出来た。
 食堂では、王都での噂が持ちきりで、中には例のお触れに関する事まである。
 肩に留まる小鳥のミルに、サラダのおすそ分けをしながら黙々と食事を進めていると、その食堂の外が急に賑やかになった。
 どうやら、有名人が通るらしい。
「アルザスさまよ! 勇者アルザスさまっ!」
「今回の王子様探しに参加なさるのだわっ」
スタンは窓際に居た事を幸いに、声のする方へ視線を向けた。
 ちょうどスタンの居る食堂から少し離れた道を通っていく姿が見る事が出来た。
 人込みに揉まれながら移動していたのでじっくり観察は出来なかったが、その腰に大きな剣を帯刀している事だけは判った。
(……ふうん……。あれが剣士という人種なのだわ)
 スタンの住んでいる村は、山奥過ぎる上に、魔物の生息地が近かった事もあって、村自体がめったに盗賊とかの襲来に合う事が無かった。
 魔物たちも、他の地域に生息する魔物たちとは違って、自分のテリトリーに入ってこなければ無関心を装っていたし、村人たちも敢えて魔物たちを刺激しようなどという気に成らなかったから、見事な調和を保っていたので争いが起こらなかったのだ。
 盗賊避けにもなっていた魔物たちの存在のおかげで、剣士たちのお世話になった事がいまだかつて無かったのである。
 噂の人物が見えなくなると、食事を再開する。
(……王都には、魔術師とかいう職業の人も居ると聞いたのだけど、どういう人たちなのだろう)
 側を通った店員に声をかけて、テーブルの上に、昼食の代金を置いた。
 店を出て、外の柱に括り付けていた手綱を解くと、ロバを引いて再び歩きだす。
 村を出た前方に、道がうねりながら延びていた。
 先は尻窄みに消えて見えなくなっていたが、遠くに王都が見えていた。
 フロウゼックの話によれば、この村から王都リャーメンまでは、馬車で半刻ほどで到着するらしい。
 歩いても四時間ほどだと言っていた。
 旅らしい旅をこの村までしていなかったスタンは、夕刻の門が閉じるまでに到着すれば良いと気軽に考えて、少しでも旅を満喫しようと道の脇に寄って歩きだした。
(……お城の前の広場に行くのは、明日の昼だったよね?)
 歩きながら、募集要項の紙を覗き込む。
 それには確かに集合場所に城の前の広場と記述されてあった。
 確認を終えて安心すると、それを肩から下げている革製のショルダーバッグに仕舞い込んだ。
(……お城に行く前に、身なりも整えなくちゃ)
 現在は旅装である。
 布製の焦げ茶のマントに麻で出来た上着と下履き。
 長時間歩いても大丈夫な革製の靴。
 どれも通気性は良く、実用性には優れていたが、見目は良くなかった。
(宿を確保して……あっ、その前にるりりんの乳母のスザンナさんに会いに行かなくちゃね! それから、買い物だっ)
 初めは王都に到着してからの計画を楽しく立てながら進んでいたスタンだったが、王都に近づくにしたがって、自分がいかに地味で貧しい姿をしているという事が目についてきた。
 横を勢い良く行き交う馬車の砂ぼこりに辟易しながら、うんざりとした様子で服の裾を摘む。
(……父さんは、道中の心得として《スリ》に注意する様にと言っていたけど……合わなかったのは、それだけ貧乏だと思われているのかなぁ?)
 複雑な気分のスタンである。
 と、今までスタンの肩で昼寝を決めていたミルがかわいらしく囀った。
 顔を上げると目の前に大きな影が落ちている。
 スタンは影を作っているものを目で追って……見上げた。
 そこに、先程村で見かけた勇者と呼ばれた剣士が、目を丸くしてこちらを伺っている。
「お嬢さん。一人旅かい?」
 スタンは、しげしげと目の前の剣士を観察する。
 見事な体格だった。
 幅広の剣である。
 精悍だが愛嬌のある顔だちをした青年で、年齢は二十歳後半といった所だろう。
「はい。……えっと、もしかしてパガードさまでいらっしゃいますか?」
 剣士は驚いた様にスタンを見た。
 その表情は《なんで知っているのだろう》というものである。
 それが可笑しくてスタンはクスクスと笑った。
 そして簡単に先程居た村での出来事を話すと、剣士は苦笑した。
「言葉使いからすると、リャーメンの者ではないね?」
 スタンは一つ頷く。
「はい。チヌルヌという村から来ました」
 ぺこりとお辞儀をする。
 男、アルザス・パガードは、不思議そうに首を傾げた。
「……チヌルヌ?」
 スタンは小さく笑う。
「聞き覚えが無くて当たり前なくらい田舎なのです」
 アルザスは苦笑した。
「どの辺りにあるんだ? その村」
「……位置からすると、この国の東の果てでしょうか。国境沿いなのです」
 国境沿いと聞いて、アルザスは驚いた様に目を丸くする。
「東の国境沿いだって? えらく遠い所から来たんだね」
 スタンは「うん」と一つ頷いた。
「それも、女の一人旅? 随分むちゃな事をしたもんだ。お嬢さんは強運だね? 普通旅をするという事は、途中で強盗にあったり、魔物に襲われたりする危険性を考えるもんだよ。命が惜しいなら、無理でも護衛を雇うか、同じ方向に向かう者たちと数人で行動するもんだ」
呆れた様な声音に、スタンは苦笑する。
「でも事情があって。……同行者を連れてこられなかったのです。ギリギリ一人分の旅費しか確保出来なかったし」
 馬を引くアルザスと並んで歩きながら事情を話した。
「弟が一緒に行こうかと申し出てくれたけど、呼ばれたのはあたし一人だし……」
 アルザスは《呼ばれた》と聞いて、目を瞬いた。
 スタンは笑ってショルダーから手紙を取り出すと、アルザスに見せる。
 アルザスはその手紙を受け取ってギョッとした。
「…………」
 スタンは、驚きのあまり言葉を失っているアルザスに気付く事無く、自己紹介がまだだったと、小さく笑った。
「名前、まだ言っていませんでしたよね」
「…………」
 手紙から、視線をアルザスはスタンに向けた。
「あたしは、スタンギール・キリー。みんなはスタンって呼んでいるわ」
 アルザスは、心底困った様子で頭を抱えて座り込んだ。
 スタンは座り込んだアルザスを不思議そうに見下ろす。
「…………あの、パガードさま?」
「……嘘だろう? こんなお嬢さんをアレに参加させるだって?」
 アルザスは呻く様に呟く。
 それを聞いて、アルザスが手紙の内容を知っている事に気付き、顔を不安に曇らせた。
「…………」
「国王は、何を考えているんだっ! こんな足手まとい……」
 アルザスは、そこまで言いかけてハッと我に返り顔を上げた。
 そこに困った様な泣きそうな表情のスタンの顔がある。
「……すまない。言いすぎた」
 アルザスは立ち上がると、スタンに頭を下げた。
「この手紙の詳細は知っている。参加者名簿も渡された。他のメンバーは皆到着している。最後の一人だけ、まだだと聞いていたけど……その最後の一人はきみだったのか。名前を見た時は、女性に対して失礼だと思うが、てっきり男だと思っていた」
「…………」
「……きみは、これが何か判っていて参加するのを決めたのかい?」
 スタンは首を横に振った。
「あたしは……あたしはただ、手紙が間違いであれば良いと思って、ここに来ました。文面を読んだら、どうみても勘違いではないかと思われる記述が多々あったので。それで、この手紙をあたしに届ける様に言ったスザンナさんに事情を聞こう思っていた所だったのです」
 アルザスは、少しホッとした表情をした。
「その方がいい。そのスザンナさんという人が何を考えて貴方にその募集要項を渡したのか知らないが、身を守る術を持たない女性が、どう考えても戦闘に巻き込まれそうな事件に係わるなど無謀に近い」
 話しながら進む内に、王都を守る様に囲む城壁が近づいてきた。
 そびえる様に巨大な城門も見えてくる。
 その城門を潜るために長蛇の列が出来ていた。
 スタンとアルザスは最後部につくと、通行許可証を取り出した。
 いつでも門番に見せられる様に上着のポケットに入れて、スタンは伺う様に辺りを見渡す。
 列の進み具合は遅いのか、荷物の上に座る者、待ちくたびれて退屈した子供が楽しげに歓声を上げながら駆け回ったりする姿がそこここで見る事が出来た。
 中にはちゃっかりした者も居て、行列を作って待っている人達を相手に、ファーストフードの売買をして小銭を稼いでいる。
 スタンは、それが面白くて、回ってきた時に一つ購入した。
 羊肉のソーセージをタマゴ液(ダシ汁にタマゴを割り入れ溶いたもの)と小麦粉を合わせて作ったパンに挟んだシンプルなものであったが、結構美味しい。口に頬張りながら色々観察していたスタンだったが、ふとささめきが辺りを包んでいる事に気付いて、側耳を立てる。良く聞いてみると、殆どがスタンの側に立つアルザスについてだった。中には憧れや羨望を含んだ眼差しもある。スタンは、顔を引きつらせた。
(……こういう場合って、側にいる者が男であれ女であれ勘違いされるのよね……)
 何割かの女性の視線を感じて肩を落とす。
 その視線は予想どおりのものだった。
(……《嫉妬》? 通りすがりなのに……)
深くため息をつく。無用の敵を作りたくない。
知らず、握り拳を作っていた。
(リャーメンの城門を潜ったら、さっさとスザンナおばさんの所へ行こう)
 そう、強く心に誓った時、何処かでスタンを呼ぶ声が聞こえた。
 スタンは驚いた様に顔を上げて辺りを見渡す。アルザスもそれに気付いて、剣の手入れを中断し、顔を上げた。
前方の門の方から馬車が近づいてきた。
かなり豪奢な馬車だ。
 馬車の側面には家紋の浮き彫りが施してある。
 その馬車の窓から、上品な顔だちの初老の貴婦人が覗いていた。
 スタンはしばらく見つめてある事に気付き、目を丸くする。
「……スザンナ、おばさん?」
 おっとりとした口調に、遠い昔に見覚えた青い瞳。
 ただ、過ぎた年月分齢を重ねた事と、貴族の貴婦人らしい服装を纏っている事から、一瞬他人の空似かと思わないでもなかった。
 スザンナは、スタンを覚えていたのだろう。
スタンを見つけると、馬車を止めてニッコリ微笑む。
 アルザスはというと、別の意味で驚いた表情をした。
 敬礼し、軽く頭を下げる。
「コルザーン侯爵夫人。何故この様な場所に?」
 スタンは訳が判らず、スザンナとアルザスを見比べる。
 スザンナは上品に微笑むと、アルザスに「ごきげんよう」と声をかけた。
「こんな所で受け付けを待っていては、日が暮れてしまうわ。わたくしと一緒に貴方もいらっしゃい」
 そういって、馬車を操っていた御者に声をかける。御者台に座って馬を操っていた御者は、「はい、奥様」と答えると、アルザスの馬とスタンのロバの手綱を受け取り、馬車の後ろに繋げた。アルザスは招かれるまま馬車に乗り込む。
「……助かりました。お世話になります」
「何をおっしゃるのですか? これくらいの事で礼は無用ですわ」
アルザスとスザンナがそう言葉を交わしているのが、馬車の内部から聞こえる。
 スタンはおろおろと自分のロバと御者を見比べた。すると、馬車の中からスザンナが、懐かしい微笑みを浮かべてスタンを中へ招く。
「待っていたのよ、スタンギール」
 名前を呼ばれて、スタンはスザンナの方へ顔を向けた。
「何故あなたをここへ呼んだのか、事情をしりたいのでしょう? 一緒にお出でなさい。わたくしの屋敷についたら、話してさしあげるわ」
 スタンは覚悟を決めて、馬車へ乗り込んだ。
 
 
 目を見張るほど豪華で大きな屋敷の門を潜ったのは、半刻ほど前だった。触れるのが戸惑われる装飾品があちこちに飾られた一室にスタンとアルザスは通されると、スザンナ・ド・コルザーン侯爵夫人の最初の第一声がこうだった。
「……スタンギール。あなたの言う《るりりん》はお元気でいらっしゃるかしら」
 スタンは、その言いようにキョトンとした。
意味が判らなかったが、三日ほど前に伝書鳩がスタンの所へ来たばかりだったので、取り敢えず頷く。
「はい。三日ほど前に、手紙が届いたばかりなので、元気でやっているのではと思います。内容はほとんど昔の思い出話ばかりでしたが」
「……そう。取り敢えず今は無事って事ね。あの方は、あなたにだけは連絡を取ると思っていたもの。……やはり、スタンギール。あなたをここへ招いて正解だったわ」
 スザンナは、安堵した様子で胸に手をあてると深くため息をついた。
 その様子に、スタンは何か引っ掛かりを覚える。
「……あの?」
スザンナは答えず、アルザスを見た。
アルザスは話の展開が見えなくて困惑した様子だ。
「……コルザーン侯爵夫人?」
「アルザス殿、スタンギールを道中守ってやって下さいませね?」
「冗談でしょう! 旅慣れてもいない、おまけに身を守る術もない娘を、行方も知れない王子捜索に付き合わせる気ですか? 大体、あの王子の探索に女性を連れていくなんて機嫌を損ねるに決まって……」
 スザンナは、肩を竦めて「あら」と笑った。
「そんな事絶対《ない》わ。だって彼女、 
《例の噂》のお相手よ? わたくしが何年彼の乳母をやっていると思っているの。普段あの様に振る舞って、回りを貴方の様に騙しているのは、回りが他に女性をあてがうと思っているからよ。……それよりは、誤解された方がいいって、いつもあの方は仰っていたわ」
 アルザスは絶句する。
 スタンはアルザスとスザンナを交互に見比べながら困惑を深くした。
 スザンナは、アルザスを一瞥すると、微笑みながらスタンの方へ振り返る。
「スタンギール、この際だから誤解を解いておこうと思うのだけど、聞いてくれるかしら」
「……はい?」
「あなたがここに出向いたのは、その書状の事もあったけれど、本音はわたくしが乳母をしていた《るりりん》というあだ名を付けた娘の事でしょう?」
スタンはその通りだったので「はい」と答えて頷く。
アルザスは、スザンナの台詞に顔を引きつらせた。先程の繋がりのない様に思える会話の《意味》を悟ったのだ。
スタンはアルザスが顔を引きつらせた意味が判らずに、少々に不吉な予感を抱きながらもスザンナを見つめる。
「スタンギールは、あの娘のフルネームを聞いた?」
スタンは意味が判らなくて、アルザスとスザンナを見比べた。
「……いいえ。名前を聞くと、いつも悲しそうな顔をするので。だから、あの娘の瞳の色からとって《るりりん》とあだ名をつけたのです」
「スタンギール。そこで、一つ訂正をしておきます」
「……えっ?」
「あの方は《娘》ではありません。性別は多分《男》ですよ?」
 《前例が無いのでハッキリ断定出来ないのですが》と付け加える。スタンは、目を点にした。
「…………えっ?」
「名前を《シュレーン・アストリア・ファルグス》。この国の三番目の王子であらせられます」
 スタンはそれを聞いて凍りついた。
「あなたのお父さま、困惑されたでしょうね? スタンギール。あなたの知る、シュレーン王子から知らされた住所に立つのは、この国の中心部にある《王宮》なのですから」
 スタンは、そういえば……と、考え込んだ。
るりりんの事をフロウゼックに話した時、とてつもなく奇妙な顔をしたからだ。
(そりゃあ、混乱するわよね……。だけど……)
「…………あんなに、スカートが似合っていたのに……かわいい妹が出来たと思ったのに……。フワフワで、銀細工のお人形の様で、この娘は絶対守ってやらなくっちゃと思っていたのに……」
 暗雲を背負ってブツブツと呟くスタンの台詞を聞いて、アルザスは頭痛を覚えた。
城でのシュレーンの噂の一つに《女装》があったのだ。
見目が良い分だけ、その仕上がりは《美女》と言っても過言ではないくらい見事なもので、しかもそれを武器に女性を側に寄せつけなかった事から、近隣で有名な《女嫌いの変態王子》というレッテルが貼られていた。
しかもそれを否定しなかった事から、様々な噂が尾鰭をつけて泳ぎまくっている。
(……王子は、この子に真実をばらしたく無かったのだな? 王子という立場では無く、個人として接したかったのだ)
 アルザスは、深く深くため息をついた。
「綺麗な文字で、女言葉で手紙を綴って、あたしを長年騙していたのね」
 スタンは、しばらく俯いていたが、キッと顔を上げると立ち上がった。
「……あたし、帰ります」
 スザンナとアルザスは驚いた様にスタンを見た。
「スタンギール? 帰るって……」
「故郷に帰ります。ふざけるにも程があります! 付き合いきれません」
スタンは懐から、ある物を取り出した。
それを、アルザスに手渡す。
「……スタンギール?」
「王子が誘拐されたそうですね。居場所が判らないって。……それは鳥笛です。それを吹くと、王子の伝書鳩が来ます。それを追って王子を探してください。これで、あたしの役目は終わりですよね?」
 スタンはニコリと笑って、深くお辞儀をした。
「お世話になりました!」
そうして、部屋を出ていこうとした。
スザンナは慌ててそれを止める。
「待ちなさい、今からでは時間も遅い事だし、宿を取ることが叶わないわ。……この屋敷に泊まっていきなさい」
 スタンは扉に手をかけたまま、振り返る。
「あなたの言う通り。そう、王子の居場所を探る為にその伝書鳩を使うことが、今回の捜索隊にあなたを加えようとした理由でした。それをアルザスに託した事で、確かにあなたの役目は終わり。でも、せめて王子がこの国に戻るまで、ここに滞在していかれてはいかがですか? ここまで出向いて、あなたが帰った事を知ったら、随分悲しまれる事でしょう」
スタンは恨めしげにスザンナを見る。
スザンナは苦笑した。
「いいたい事は判っていますとも。少なく見積もっても七年も騙してきたのですからね。でも、察してあげて下さいませね? 
……あなたの前では、対等な立場で居たかったのですよ?《王子》という色眼鏡で見て欲しくなかったと思うのです。……スカートを着用していた事にしても、あれは騙すつもりで着用していたわけではなくて、余りにも当時は身体が弱かったから、王子のお母様であらせられます王妃さまが、宮廷魔術師イグンと相談いたしまして、病魔避けのつもりで性別を偽ったのです」
「…………」
「あの方は、療養を終えて元気になった今でも、ずっとあなたの事を一途に思っていましたよ? 
女装している時にあなたに出会った事、それが原因で隠し事を持ってしまった事、それを未だに後悔している様でした。自分に親愛の情であれ、好意を寄せてくれている者に対して嘘を付き続けること、それはとても辛かったと思います。だから、あの方を許してあげて下さいませね」
 スタンは、苦笑して頷いた。
「…………わかりました。王子が戻るまで、ここに滞在させて貰う事にします」
 スザンナはホッと安心した様子で笑った。
「良かったわ。自分の家だと思って、寛いでちょうだいね」
 
 



 
 次の日の朝、スタンはスザンナと共に剣士アルザスを門まで見送った。
 そしてその日の昼、王子の捜索と救出隊のメンバー、アルザスを筆頭に剣士、魔導士で構成された十八人が、国を上げて盛大に送りだされる。
 スタンはスザンナに連れられて、そのパレードを遠くから見送った。
「……スザンナさん。お聞きしたいことがあります」
 スタンはパレードを見送った帰り道、滞在先であるスザンナの屋敷へ向かう馬車に揺られながら問いかけた。
「スザンナさんは、こんなに立派なお家柄の貴族の方なのに、どうしてあたしに親切なのですか? 貴族の方々はもっと怖い人達だと思っていました」
 だいたい、目上の……それも侯爵婦人をつかまえて《さん》付けで呼ぼうものなら、かなり手ひどい罰を受けるものなのだ。
 プライドや地位の高い人達は体面を重視するから、そういうのに関しては敏感にできているはずである。
 だから、スタンは昔と変わらず接してくれるスザンナに疑問をぶつけて見た。
 すると、スザンナの夫である初老の紳士、フェム・ド・コルザーン侯爵が、可笑しそうにクスクス笑う。
「……きみは、チヌルヌ村出身だそうだね? 僕もなのだよ」
 スタンは驚いた様に目を見開いた。
「スザンナが、何故あの村をシュレーン王子の療養先に選んだと思う? ……あそこに、僕の実家があるのだ。僕の実家は雑貨屋なんだよ。あの村では雑貨屋が一件しか無いように、薬屋もきみの家しかない。だから、あの村に住むだれもが、きみの家が作る薬にお世話になっている。それに僕はきみのお祖父さんに昔、お世話になった事があったのだ。いわば命の恩人なのだよ」
「………でも、侯爵さま。あたしの家はご存じの様に薬屋です。侯爵様の言う《お世話になった》というほどの事が一介の薬屋として出来るはずが……」
「今は村にちゃんとした医者がいるでしょう? 
だから、きみの家は薬の調合しかしなくなったけど、昔はあの村の医者も兼ねていたんだよ。僕は患者としてきみのお祖父様にお世話になったのだ。もう四十年以上前の話なのだけどね、とても小さい頃にきみのお祖父さんに命を救われた。きみのお祖父さんがいなかったら、死んでいた。誰も村の名前を言った時、パッとその位置が口に出来ないほどの田舎の村の医者とは思えないほどの名医だったんだよ、きみのお祖父さんは。……僕はきみのお祖父さんに憧れて医者を目指して王都リャーメンへ行き、医者になるための勉強をしていた。折角医者になるなら、色々な事を知っている医者になりたかったからね」
「…………」
「資格を取る試験を受けている時、スザンナに出会った。スザンナの家系は、宮廷医師を代々勤めていてね、スザンナは亡きコルザーン侯爵の助手をしながら勉強をしていた」
 スタンは少し首を傾げた。
「……普通、家を次ぐのは長男ではないのですか?」
「普通はそうだろうね? でも、スザンナは一人娘だったから、父親に言われるまでもなく、後継者になろうと思っていたらしいのだよ。……娘が、そう思えるくらい、前のコルザーン侯爵さまは優秀でいいお医者様だったという事だね。そしていい父親だったという事だよ」
「…………」
「……僕も、驚いたよ。スザンナと知り合って、互いの思いを交わすようになって、侯爵様であるお義父さまに紹介すると告げられて。……僕はスタンギール。きみと同じ様な立場の出身だからね? 貴族の……古い家系の人達がどんなにプライドが高いか知っていたし、その事で随分苦労してきたから実感している。僕の弟子入りしていた医者の推薦で医師の資格を正式に取るために王立大学で勉強していたのだけど、貴族出身の人達が多くてね、嫌がらせも受けたよ。……だから、スザンナが父親に僕を紹介すると言われた時、かなり緊張したし、交際を認めて貰えないだろうと思っていた。だけど、認めて貰えた。家族として扱ってくれて……僕を正式に後継者として自分の持っている知識をたたき込んで下さったのだよ」
 それをスタンの横で聞いていたスザンナはクスクス笑いながら答える。
「お父さまに反対なんて出来るものですか。だって、わたくしのお母様は、元々王都からほぼ近いイリノイ村の宿屋の娘だったのですから。自分が選んだ伴侶がそうだったのだから、娘が選んだ……それも、フェムの様に優秀な医者を拒む事なんて出来ないはずなのよ。……お父さまは随分お母様と結婚するまでに苦労なさったから、娘には自由な恋愛を望んでいらしたわ。だから、貴方を選んで……資質を認めて。お父さま、とても喜んでいましたもの。素晴らしい息子を手に入れたって」
 ほのぼのと会話を交わすスザンナとフェムを、スタンは幸せな気分で聞いていた。
 会話から、彼らが貴族の社会の中では進歩的な考え方の持ち主だということを知る。
 婿養子という立場であり、貧しい家の生まれでも、自身を卑下する事無く貴族社会に実力で立ち向かう事の出来るフェム。
 身分違いという壁にも係わらず円満な家庭を築き、それを見て育った娘であるスザンナの公平さ。
 様々な切っ掛けがあり、現在自分がその屋敷に滞在している。
 ふと、スタンは思った。
(……王子は、何を思ってそこまであたしにこだわったのだろう……)
 自分を取り囲む環境に対して全て偽って。
(もしかしたら、王子の事を大事に思う人もいるかも知れないのに……)
 
 



 
 随分昔から、ソレは少年に話しかけてきた存在だった。
「……何時からだろう。それを拒む様になったのは」
 少年は呟いて、ふと首を傾げる。
 少年には二つ年上の姉と三つ年上の兄が居た。
 彼らはいつも当然といった表情で父と母の側に立ち、楽しそうに笑っていた。
「ああ、そうだ。私に《お姉ちゃん》が出来た時からだった」
 少年の幼少時代は、一時期を除き寝室しか覚えがない。
(……他の全ては、灰色の……)
少年を見舞うために訪れた時に見た顔は、哀れみの視線を向ける両親しか無い。
 生活する上では不自由する事は無かったが、楽しげに笑う兄弟たちを見る事は苦痛でしかなかった。
 覚めない夜の悪夢。
何度、夢だと思っただろう。
 手を傷つけ、目を覚まそうとしただろうか。
 現実は残酷なまでに、目の前の光景を突きつけて、だから人の訪れる事のない夜に泣いた。
 隔離された様に、離れの一室で、揺られるカーテン越しに見える景色が起き上がる事もままならなかった幼少時の全てだった。
 外で日差しを思う存分浴び、図鑑でしか見たことがない植物を直で見たかった。
 だが、兄弟たちは、それを口にすると常識だとでも言わないばかりにこう言ったのだ。
 ――― 駄目よ! シュレーン。だって、あなたは身体が弱いのだから。
 何もさせては貰えなかった。
 願いは叶う事がなかった。
 苛々が募り、癇癪を起こすこともしばしばだ。
 見せつける様に遊ぶ兄弟たちに、両親が隠していた少年、シュレーンの《身体の事情》が知れると、怯えた目で見て叫んだのだ。
 ――― 化け物!
 と。
 ――― 気持ちが悪いっ!
と、叫んで暴れたのだ。
その日から更なる悪夢が始まった。
ひそひそと囁きほくそ笑む、兄。嘲笑露に噂を流す姉。
何も彼も信じられなくなる様な態度を取る母……。
度々襲う熱によって助けを求めて彷徨う手を振り払った父。
自分の行動に驚いた様子もあったが、あきらかに疎ましげな光がその瞳に宿っていた。
 《身体の特異さが、王子の寿命を縮めているのです。手の施しようがありません》小康状態と危篤を繰り返した時期もあり、せっつく両親に対してそう診断の結果を医者は出した。
 そして、こうも言った。
 ……このままでは、もって数年だとも。
(好きでこの様に生まれた訳ではない)
 幼少の時から比べると今は健康体ともなったわけだが、それでも身体の特異性を隠し通さなければ成らず、人の目を常に気にしていた。
 子供だった当時は男女の区別がつかなかったが、成長した今では胸に手をやると、宮廷の女性が羨むほどの豊満で形良い乳房が柔らかく誇張して触れる。
 プロポーションも抜群で、しかも医者の診断では未成熟ながら女性生殖器も持ち合わせているという事だった。それだけなら、いい。
《女性》であるのなら《普通》備えているものなのだから。
 だが、問題は男性生殖器も備えている事である。
そして、厄介な事に生物的《欲》が常に身体を焦がした。
今までどうにか己で解消してきたが限度がある。
だが、必死の思いで抑えてきた。
この身体を見て、化け物と呼ばれる事が容易に想像できるのだ。
 一つの身体に二つの思いが交差する。
(……守りたい)
 ――― 守られたい。
(……抱きたい)
 ――― 抱いてほしい……。
暴走した《欲》に振り回されるのを回避するため、孤独を選んだ。
触れる空気や気配に、身体が顕著に反応する呪わしいだけの身体。
男でもあり、女でもある存在。
 その為に隔離され、侮蔑の対象に晒された。
怯えた心が己をよろい、そういう気持ちを抱かせた周囲に対して嫌悪と憎悪を抱く。
負の感情が、身体を更に弱らせ、何日も熱が下がらない日が続いた。そんなある日、昏い闇の底から《声》を聞いた。
 ――― 恨みを晴らさせてやる。それは、お前の身体と引換えだ。
 化け物の様なこの身体に何の価値があるか不明だったが、周囲の者たちに八つ当たりしたかったのは確かだ。
 だからあの時、頷いた。
 数日後、シュレーンを汚いものでも触る様な態度で接していた宮廷医師の一人が、奇声を発しながら王宮の外れに立つ塔から飛び下りて死んだ。
 その後、シュレーンが悪感情を抱いた者たちが次々と様々な事情で死んだのだ。
 それを自覚した時、急に怖くなった。
(私は、身体以上に《化け物》になってしまったのだろうか?)
 眠れない日々が続き、恐怖が更に身体を弱らせる。
(ここにいては、いつか父上や母上、姉上や兄上も《殺してしまう》)
 自覚があるのだ。思い出が鮮明に蘇って……だから、幼いあの日、願い出た。
「……私は長く生きられないのだろう? なら、一つでいい。たった一つ、他はいらない。望みをかなえておくれ」
 自分に接する医師たちの中で、唯一好感を持った者に訴えたのである。
「……父上も母上も姉上も兄上も居ない場所に行きたいのだ。もう、何も考えたくないのだよ」
 彼は承諾し、国王と王妃を説得して、彼の故郷へ連れていってくれた。
 普通なら、身体の弱った者を二ヵ月もかかる長旅に送りだそうなどとは考えないものだ。
 だが、それを承知したのは、命が短いだろうと思われる息子の願いを叶えるためというより、厄介払いしたかっただけに違いない。
 その医師は不憫に思ったのだろう。
 長年少年の乳母をしてきた彼の妻を主治医兼世話係として付き添わせて、療養先へ送りだした。
「……あの頃の私は、自分自身に絶望していた。死に場所を探していたのかも知れない」
道中に聞いた伝承の禁断の山に、足を踏み入れてみようと思いついたのは、魔がさしたとも言えよう。
乳母の目を盗み、夜中に部屋を抜け出すと、獣の遠吠えに身を竦ませながらも山の中に分け入って……。
「《お姉ちゃん》……」
 シュレーンはそこで、想像出来ないくらい大きな狼に遭遇した。
 恐怖のあまり気絶して、次に目を覚ますと、知らない少女が泣きそうな目で自分を見下ろしていた。
 歳は自分の姉と同じくらいだろうか。
 ……特別かわいいというわけではない。
 本当にどこにでもいそうな少女だった。
 だが、シュレーンの事情を知っている訳では無かったからとも言えるが、彼女はシュレーンの為に泣いてくれた。
 《スタンがこの子のお姉ちゃんになるんだから食べないで!》狼から庇うように抱きしめてそう訴えている所だった。その後だ。
 多くの声を聞いた。
 取り引きを持ちかけるような声である。
 その声は、自分が国を出てきた時に聞いた 《声》と同種の様な気がした。
同種の様で、圧倒的に何かが《違う》気もする。
 もっとも彼女には聞こえている様子では無かったが。
(……みんながみんな、この《身体》を欲しがる)
 疎ましい身体だったが、自分を抱きしめて泣いてくれたこの少女の役立つならと、ここでも《頷いてしまった》。
 頷いた後、身体に変化が起きる。
 だるさが消え、羽の様に軽く感じられた。
少女、当時やっと九歳になったばかりのスタンギールに連れられ、当時七歳だったシュレーンは、村に戻った後に身体の変化を訴え、乳母に診断を受けた。
すると、驚いた事に健康体と変わらなくなっていたという。
「私は代価が同じの二つの契約を交わした。契約の結果が現在の様な状況を作ったわけだ」
契約は、強い方が勝つ。最初に契約を結んだ方が契約の履行を求めた時、自分では判断つかない状態だと答えて拒絶した。
ソレ……海の闇に住む魔物を使役して、様々な魔法を編み出し、闇の部分で暗躍する魔導士バイアンは怒ってシュレーンを殺そうとしたが、皮肉にも、もう一つの契約がシュレーンを守った。
 ――― 貴様を殺してその身体を媒体に、魔物の高位である妖魔を召還しようと思ったのに!
 歯ぎしりして悔しがったが、思いなおしたかの様にその魔導士はちょっと笑った。
 ――― まあ、いい。では、ここで賭をしよう。もし、この場所から貴様を見つけ出して連れ帰る事が出来る者が居たら、貴様を開放してやる。
シュレーンは、目を細めた。
魔導士のいいたい事が判ったのである。
(……お前は、そうやって集まってくる者たちの死体が欲しいだけなんだろう? そのために、わざわざ王宮に手紙を送ったのだろうが)
 ――― 儂に同意し、若干四才で闇に手を染めただけあるな。良く判っているじゃないか。そうだ、次に行う儀式に対する生贄が必要でね……。
(……そうだろうと思ったよ。どうせ、体面を取り繕うために、父上は捜索隊を繰り出してくるだろうさ。お前の望む様にな! 
お前の事だ、自分は手を汚さず、使役した魔物で彼らを襲わせ、この大地を魔物と人間の血で染めるのだろう? 
……何を召還する気だ。それ程大がかりな仕掛けで。……まあ、せいぜいそこまでお膳立てして、お前自身が食われない事を祈っておいてやるさ!)
 シュレーンの言いようにバイアンは持っていた杖で強かに殴りつけて、こう言い返してきた。
 ――― 可愛げのかけらも無い! まあ、そんな性格では、貴様の様な人間に好意を寄せる奴なんて、一人もいないだろうよ。……そこが、鍵だ。鍵が無ければ、扉は開かぬ。開かぬ扉の外で、奴らは無駄足を踏んだと、後悔するだろうさ。
 シュレーンは軽く肩をすくめた。
「今更私に可愛げなど求めても仕方がない事だ」
怒りながらその場を去った魔導士の背にそう呟く。
素直に笑う事が出来るのも、泣くことが出来るのも、手を更なる闇に染める事になろうとも、あの日決めた。
 自分を対等に扱って笑いかけてくれた、あの少女のためだけ。
 ふと、思いついたように再び手紙を書いた。
 遠い過去、元気良く笑いながら遊んだ自分。
 様々な動物に囲まれて笑いながら、小さな手をシュレーンに差し延べた、褐色の髪と金茶の瞳の少女。
 年齢に似つかわしくないほど酷く幼い顔で、シュレーンはぽつりと呟く。
「《お姉ちゃん》、会いたいよ……」
脳裏に浮かぶのは、幼い頃のスタンの姿だった。
白い頬に涙が一つ伝う。
「なんで私はこんな所にいるんだろう……」
 滴り落ちた涙が、書いた手紙を濡らし、文字を滲ませた。
「なんで生きてなくちゃ成らないのだろう」
 




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