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一章「始まり」
百合に睨まれたカエル
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企画のメンバーの選出が終わり、予定より少し早めに退勤することができた。
結局忙しさで、昨晩の告白についての返事をしないで、職場を出てきてしまった。
しかし、今は本当に考えたくもないので、急ぎ足で帰路についている。
私は更に、今朝に同じマンションの女子大生と、近場のカフェで待ち合わせしているのだ。
これについても、少し憂鬱なのである。
普段なら、こういった誘いは、普通の女子会として喜んで受け入れる。
ところが、今回は事情が違う。
なんと、こちらも告白付きなのだ。
それも、相手は『同性愛者』である。
『同性愛者』が嫌な訳ではない。
寧ろ、私自身も近い存在なので、親しみがあるのだ。
だが、相手は私を『女性』として見ていることに、強い困惑があるのだ。
今まで、私のことを『顔立ちの良い男子』として、告白してきた女子は、学生時代に何人かはいた。
それは、素直に嬉しい一方で、割と簡単に断ることもできた。
本当に今回は、どうすればいいか、対応が分からない。
暫く考え事をしながら、歩いていると家に着いた。
目の前には、何故か例の女子大生が、壁に凭れて立っている。
「あ……待ってましたよ!」
「あ……どうしたの?」
「どうせなら、一緒に行こうかなって……。」
「私が、直接行ってたら、どうするつもりだったの?」
「それはないですよ!」
「何故?」
「必ず帰宅してから、用事に出かける癖があるでしょ?」
……最早、ストーカーである。
私の習性を知って、待ち伏せしているとか、本当にプチホラーだ。
それを、ただ可愛らしい見た目で相殺しようとしているので、質が悪すぎる。
そして、自分のことが頭にないという点も、私への執着の強さを示していた。
見ていて、思わず呆れてしまう。
「……それでも、アナタの支度ってものもあるでしょうに……。」
「あ……そう言えば、そうか。」
「全く……身支度があるなら、してきなさい!」
「はーい!」
こちらが敢えて冗談交じりの口調で注意しても、能天気な返事しか返ってこなかった。
当たり前と感じるだろうが、初対面の人間相手なら、空気を読んで軽く受け止めるにしても、多少は気を遣う。
しかし、彼女には、それが無かった。
「は~あ……。」
私は、身支度をするべく、直ぐ様ドアを開けて、玄関に入る。
ドアノブから手を放して、荷物を床に置いて、段差に座りパンプスを脱ごうとする。
すると、外の明かりと、女性の黒いレギンスと膝小僧が目の前にあった。
「……お邪魔しま~す!」
「え?」
途端に、片に強めの衝撃が走った。
そして、反射的に後頭部を打たない様に、クビに力が入った。
そのまま、手を突く暇もなく、軽く丸まった背中がゴロンと床に着き、天井と玄関灯が目の前に来た。
「摩~天さんっ!」
「……は?」
そして、名前を呼ばれたと思いきや、一気に視界が女子大生の顔で埋め尽くされた。
同時に、耳元にドンという鈍い、物を叩く音が響いた。
……その通り、『床ドン』をされたのだ。
しかも、男の端くれかもしれない私が、明らかに華奢な年下の女の子に、男が女にするのと同じく、押し倒されてしまっている。
もう明らかに迫られている。
胸キュンどころではない……明確な恐怖だ。
私は、怖さから体が硬直し、逃げようとして身を捩った。
すると、上から覆いかぶさるように、上半身を寄せてきた。
「逃がしませんよ。」
「……お願い……止めて?」
「可愛いから、ダメです。」
カフェで紅茶と軽食を御馳走になりながらお喋りするはずだったのが、飾り気のない自宅玄関で相手に私が御馳走されるとは、夢にも思わなかった。
甘い息と唾液がかかりそうな距離で、私は全てに対して抵抗する意思を失った。
結局忙しさで、昨晩の告白についての返事をしないで、職場を出てきてしまった。
しかし、今は本当に考えたくもないので、急ぎ足で帰路についている。
私は更に、今朝に同じマンションの女子大生と、近場のカフェで待ち合わせしているのだ。
これについても、少し憂鬱なのである。
普段なら、こういった誘いは、普通の女子会として喜んで受け入れる。
ところが、今回は事情が違う。
なんと、こちらも告白付きなのだ。
それも、相手は『同性愛者』である。
『同性愛者』が嫌な訳ではない。
寧ろ、私自身も近い存在なので、親しみがあるのだ。
だが、相手は私を『女性』として見ていることに、強い困惑があるのだ。
今まで、私のことを『顔立ちの良い男子』として、告白してきた女子は、学生時代に何人かはいた。
それは、素直に嬉しい一方で、割と簡単に断ることもできた。
本当に今回は、どうすればいいか、対応が分からない。
暫く考え事をしながら、歩いていると家に着いた。
目の前には、何故か例の女子大生が、壁に凭れて立っている。
「あ……待ってましたよ!」
「あ……どうしたの?」
「どうせなら、一緒に行こうかなって……。」
「私が、直接行ってたら、どうするつもりだったの?」
「それはないですよ!」
「何故?」
「必ず帰宅してから、用事に出かける癖があるでしょ?」
……最早、ストーカーである。
私の習性を知って、待ち伏せしているとか、本当にプチホラーだ。
それを、ただ可愛らしい見た目で相殺しようとしているので、質が悪すぎる。
そして、自分のことが頭にないという点も、私への執着の強さを示していた。
見ていて、思わず呆れてしまう。
「……それでも、アナタの支度ってものもあるでしょうに……。」
「あ……そう言えば、そうか。」
「全く……身支度があるなら、してきなさい!」
「はーい!」
こちらが敢えて冗談交じりの口調で注意しても、能天気な返事しか返ってこなかった。
当たり前と感じるだろうが、初対面の人間相手なら、空気を読んで軽く受け止めるにしても、多少は気を遣う。
しかし、彼女には、それが無かった。
「は~あ……。」
私は、身支度をするべく、直ぐ様ドアを開けて、玄関に入る。
ドアノブから手を放して、荷物を床に置いて、段差に座りパンプスを脱ごうとする。
すると、外の明かりと、女性の黒いレギンスと膝小僧が目の前にあった。
「……お邪魔しま~す!」
「え?」
途端に、片に強めの衝撃が走った。
そして、反射的に後頭部を打たない様に、クビに力が入った。
そのまま、手を突く暇もなく、軽く丸まった背中がゴロンと床に着き、天井と玄関灯が目の前に来た。
「摩~天さんっ!」
「……は?」
そして、名前を呼ばれたと思いきや、一気に視界が女子大生の顔で埋め尽くされた。
同時に、耳元にドンという鈍い、物を叩く音が響いた。
……その通り、『床ドン』をされたのだ。
しかも、男の端くれかもしれない私が、明らかに華奢な年下の女の子に、男が女にするのと同じく、押し倒されてしまっている。
もう明らかに迫られている。
胸キュンどころではない……明確な恐怖だ。
私は、怖さから体が硬直し、逃げようとして身を捩った。
すると、上から覆いかぶさるように、上半身を寄せてきた。
「逃がしませんよ。」
「……お願い……止めて?」
「可愛いから、ダメです。」
カフェで紅茶と軽食を御馳走になりながらお喋りするはずだったのが、飾り気のない自宅玄関で相手に私が御馳走されるとは、夢にも思わなかった。
甘い息と唾液がかかりそうな距離で、私は全てに対して抵抗する意思を失った。
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