詩集『刺繡』

詩

プチプラの香水

安いくせに、とてもいい香り
そんな生意気さに遂、嫉妬を禁じ得ない
心を割り切れないままに魅了されて、
安っぽくない美しさに、潔さすら感じ、
虜にされて、悔しいのに骨を抜かれる。

安価というだけで、人は本質を見ない
ただ侮って、知ったかぶりをして、
見下すだけ見下して　何も理解しない。
自分は、お高く留まっているつもりでも
その方が余程、安っぽくて、陳腐だ。

香水は、安いほど好かれやすい。
こんなに不公平なことはないだろうか
香り高くて、それでいて身近で、
手の届きやすい、優れたやつ……
まるでクラスの一寸ポンコツな、
飾り気のない平凡な、だけど特別優しい、
そんなクラスメイトのような魅力。

プチプラ香水の甘酸っぱいトップノート
そこからの、さり気ないミドルノート
儚く散りゆく、ラストノートの花弁……
連想されるのは、青春の一ページのようだ。
苦くて渋いものだって、
甘ったるいだけのものだって、
痛いほどの爽やかさだって、
どれも魅力的な、それぞれの個性で一生だ。

香水のように、真っすぐと
貫かれていく個性のような、
人生を、後悔も悲観もなく満喫する。
それでこそ、香水の似合うひとだと思う。
周りを気にしたっていいじゃない
自分を見つめ直したって良いじゃない
嫌な思いを繰り返したって良いじゃない
安っぽくたっていいじゃない
それこそ自分のオリジナリティな人生だ。
生涯は香水のように、馴染んで散ってゆく。