詩集『刺繡』

新帯 繭

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ヨーグルトと納豆と腐肉

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腐ったっていいじゃない
腐っても味になる
腐り方次第の問題であって
腐ることが悪いわけではない
腐ることを寧ろ発酵という

『腐敗』と『発酵』の違い
雑菌で変質することを腐敗
一種の菌で変質することを発酵
たったそれだけである
他は何も違わないのだ

要は腐り方次第なのだ

一つのことに集中して腐れることは
後に熟成していって味になる
年月が経つごとに洗練されていく
そしてそれが役立つようになって
どんどん丸くなっていく

幾つも中途半端に散漫として腐れば
それは自身を壊していく
年月が経つごとに異臭を放ち
取り返しがつかなくなってしまい
気付けば自分が消えている

ヨーグルトは繊細で
納豆は大雑把だ
ヨーグルトは簡単に腐り
納豆は腐る過程で強くなる
それでも根本は発酵だ

結局ヨーグルトも
納豆も
腐肉も同じ腐ったもの
だけど過程と内容が違ってしまう
まるで人の反面教師のように
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