詩集『刺繡』

新帯 繭

文字の大きさ
上 下
62 / 92

ブドウの房

しおりを挟む
ブドウが幼い頃から好きだ
嫌いな人を聞いたことがない
特にデラウェアが好きだ
丸ごと一個を頬張って
口の中でプチっと皮をむく
それが何個も口に入って弾ける
甘酸っぱい魅惑の時間だ

グレープジュースは紫の夢味
パープルヘイズを聞きながら
甘くて例えがたい味覚に酔い痴れる
何杯も注いでは飲む
まるで依存性の高い覚せい剤の様に
手と舌が甘美に止まらなくなる

禁断の果実はリンゴではなく
本当は葡萄ではないのかと
勝手に解釈し直すほどに葡萄ラブ
愛しすぎて房が恋の塊に見える
そうだ
私はブドウに恋したのだ

ブドウの房は愛の権化
ブドウの粒は恋の味
ブドウに抱くは夢心地
幸せの一時と抱擁だ
しおりを挟む

処理中です...