詩集『刺繡』

新帯 繭

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カワ(・∀・)イイ!!

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感情表現というものは曖昧
幾通りか言葉が決まっていて
その中での世界は不定だ
十人十色で指を指し合ったところで
何一つ共有できそうもない
『可愛い』と一言いっても
何も同情ができないのだ

『可愛い』というのは
古語で『可哀相』という意味
私たちは憐みで褒め合うのだ
物の哀れに笑顔で同情して
残酷にも相手のプライドを壊す
言われることに対象は破顔する
破顔の先はまた笑顔でしかない

人間は同情しあうことでしか生きられない
生きる糧も同情の共有と賛成と承認
自己顕示欲を煽ることで優位に立つのだ
そこには本質的に得する者はいない

それでも私たちは『カワイイ』と連呼する
そこまで物の哀れはなく
ただ神に二物を与えられただろう
可憐さと煌びやかさに羨望を抱き
我々は嫉妬心を軽々しく口にする

『可愛い』と言われること
それは発言者の尊厳と現実逃避
相手を褒めることで得る承認欲求
自己防衛と虚栄の余裕の隠蔽しかない
上手く傷つけずに優位を味わう
相手を褒めて自分を好きになる
なんて便利で素敵な言葉だろうか
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